ベトナム在住日本人なら知らない人はいないのでは。ベトナムのニュースを日本語で配信しつづけるニュースサイト「ベトジョー」の編集長、伊藤淳一さんにお話を伺いました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/11/27
ベトナム在住日本人なら知らない人はいないのでは。ベトナムのニュースを日本語で配信しつづけるニュースサイト「ベトジョー」の編集長、伊藤淳一さんにお話を伺いました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/11/27
三面記事っていいですよね!
三面記事は政治と経済の次に来るということが由来でしたが、明治の始め頃の新聞は3ページしかなく、残りの1ページは全て広告として使われていたそうです嘘です。
ただ、ほとんど4ページだったことは確からしいよ。
前回に引き続き、ベトジョー編集長・伊藤さんへのインタビューです。
その前回を読んでいない人は、まぁ読んでねって話なんですけど、簡単に前回までのあらすじ。
日 本語教師としてベトナムにやってきた伊藤さん、教師を1年半、アルバイト、中華料理店のマネージャーとしてさらに2年を過ごし、それから2年に渡る無職& ベトナム語修行、出稼ぎ生活で、ベトナム語を大学と独学の両方で習得しながら、ベトジョーの前身の更に前身となる「ベト君ナム君の一口ベトナムニュース」 を開始、その後ニュースを毎日更新をしながら2回の日本への出稼ぎ生活へ。それから再びベトナムに拠点を戻し、サイト名も「ベトナム情報市場」と改めた時 に「サイトを売らないか」と今の会社のオーナーから売却を持ち掛けられます。しかしそれを断わりながらも、協力してベトジョーの更新を続けながら、持ち前 の情報収集・分析能力を活かし、その後の事業拡大に繋げていきます。
意外に書けるもんですね…べとまるって長過ぎ……!?
さて、ちょっと本編に戻る前に、アイスブレイク的な話からインタビューを再開致します。
***
ネルソン「そういえば、以前に『中洲に住んでいた』とおっしゃっていたことがありましたね。」
伊 藤さん「えぇ、実は私はベトナムで10回以上引越しているんですが、2004年の結婚を機に家を書いました。その家は12区の中洲というか半島にあって、 人とバイクで500ドン、人一人だと200ドンを渡し船に払って川を渡るんです。中洲の中は当然行き止まりだから車は無く空気が綺麗で、家のベランダから は180度視界を遮るものはありませんでした。鶏も放し飼い、魚もよく釣れました。メインストリートを一本入るとうっそうと木々が生えているものだから、 人を連れて行くと『ここ、ジャングルじゃないですか!』ってよく言われましたねぇ。たまに大雨が降ると洪水になり、妻に朝起こされると一階へ下る階段の途 中まで水が迫って来ていて、居間で魚が泳いでいるという状況も起こる家でした笑。」
ネルソン「ギャグ漫画のような家ですね…。」
伊藤さん「子供も生まれて手狭になったのと、丁度不動産バブルで高く売れたので、それで今の家に引っ越しました。」
今、どのような思いでベトジョーを運営しているのか。
ネルソン「さて、本編に戻りますが、今どのような思いでベトジョーを運営しているか教えてください。」
伊藤さん「そうですね…私はずっと移民について調べていたので特にそう思うのですが、外国でも自分の国のアイデンティティを保つためには、文化を維持しなければならないと 思っています。しかし、その文化と言語は密接に結びついていて、外国現地で生活をしようとすれば現地の言語を覚えたり、子供の世代(2世)に至ればその国 の言語が最も身近な言葉になります。海外生活の中で自分や親の生まれた国の言語・文化にどれだけ触れられたかは、アイディンティーの保持に大きく影響しま す。なるべく日本人としてのアイデンティティを保ちつつもベトナムについて理解し、異国において安心して過ごせるようにしたい。また、ベトナムに住む予定の人にウェブを通して事前に現地の事情を知ってもらうことで、不安を取り除きたいという思いもあります。」
ネルソン「なるほど。」
伊藤さん「また、毎日更新している理由は、その積み重ねでベトナムが見えてくるからで す。ベトナムの個々のニュースでは何も気付かないかもしれないですが、経済や社会や三面といった分野で多角的にニュースを知ることによって見えてくるベト ナムがあります。たとえば、ベトナムだと交通事故が起こると大抵の運転手は現場から逃げます。その1件だけ見ていては『ただの卑怯者だ』となりますが、実 はベトナムでは市民による制裁が頻繁に行われており、人を傷つけるような事故を起こした運転手が現場で暴行に遭うことも珍しくないんです。だから逃げる。 これは、何度も何度も『交通事故→運転手逃げる』という記事を読んで疑問に感じて初めて発見出来るところです。こうした背景を知ることによって『ベトナム人は〜』という誤解を少しでも減らすことが出来ます。また、ベトナム人が接するものと同じ記事に触れれば、なんでもない情報の中に「ハッ」とするメッセージが隠されていることに気づくでしょう。」
ネルソン「ニュースは点で、その点と点をつないでベトナムの姿形を浮き彫りにしていく。」
伊 藤さん「正にそういうことだと思います。たまに『ベトジョーは取材せず、翻訳記事だから』と言われることもあるのですが、取材となるとどうしても我々日本 人の主観が入るというか、日本人受けするように書いてしまうのです。そうすると「ハッ」とする機会を奪ってしまうことになるんですね。そのまま出すことに よって初めてベトナムという国が立体的に見えてくることが多いんです。」
ネルソン「ニュースサイトであると同時にベトナム研究サイトのような。」
伊藤さん「はい。それに、(VERACとして)株式情報サイトをやってみて分かったことが、日本人投資家は世界の投資家からババを掴まされていると いう点です。日本の大手新聞が報道する情報はリスクを避けてより確実性を求めますから、報道される頃には既にブームが過ぎようとしてしまっています。だか らこそ我々は、ベトナム現地の株式情報を迅速に配信し、日本の投資家に対して現地や世界の投資家と同じくらいのリアルタイム性を確保しています。ベトナム の株式市場は始まってから13年経ちますが、歴史の長い周辺諸国の株式情報と比べても、日本語でここまでの株情報を配信しているサービスはベトナムくらい でしょう。今起こっていることを、日本語で知ってもらう。これは今後も日本人コミュニティが大きくなっていく上で、非常に大きなメリットです。」
ベトジョーをはじめてよかったこと・辛かったこと
ネルソン「ベトジョーをはじめてから、よかったことや辛かったことはありますか?」
伊藤さん「やはり、『いつも見ている・役に立っている』と言ってもらえることですね。それこそが目的のひとつですから。あと、よく毎日大変じゃないですか。とも言われますが、たぶん私はこういう情報を集めてきて、整理して、という作業が好きなんでしょうね。情報が増えるとワクワクしますね。収集オタクみたいものなのかもしれません笑。」
ネルソン「収集オタク笑…反対に辛かったことは?」
伊 藤さん「一人でやっていた頃ですかねぇ、お金になる可能性も低かったですし。毎日見てくれる人がいるから、と思ってやっていましたが、ニュースサイトだか ら途中で途切れさせられないという理由もありました。あとは、面白いネタが無い時でしょうか、一年を通して3回くらいはそういう日もあるんですよ。」
ネルソン「他人事じゃないですね…笑」
今後、どういうサイトにしたいか、どういう展開を考えているか。
ネルソン「今後、ベトジョーはどのようなサイトにしていきたいと考えていますか?」
伊藤さん「かつての日系移民はその貧しさゆえに出て行かざるを得ませんでしたが、今は少し違います。交通手段、通信手段一つとっても格段に進歩し、一度海外に出たら、二度と戻れないという時代ではないですし、毎日世界のどこにいても顔を見て話せる環境にあります。故に今や日本人はドンドンと外へ出られる時代だと思っています。そんな中でベトジョーは、ベトナムにおいて日本語で現地情報を伝え、在住者に不安を無くしてもらい、また日本から見てもベトナムが安心出来たり住めそうだと思えるようなサイトにしたいです。ベトナムは本当に住みやすいので、もっと来て欲しいですよね。」
ネルソン「住みやすいですよね。また、何か、新しい展開を考えていたりはしますか?」
伊藤さん「ベトジョーには2万件を超える記事があるのですが、これを活用していきたいと思っています。」
ネルソン「2万以上…どのようなものでしょう?」
伊藤さん「たとえば、この数の記事をカテゴライズしてベトナムの百科辞典的コンテンツをつくる。 特定の業界や分野、または生活情報に絞ったニュースを抽出して特集ページを作り、それを記事とリンクし、分かりやすく説明するというもので、これは日々更 新されるニュース記事により古くなることはありません。あとは、ベトジョーの一つのカテゴリだった『株式』からベトナム株情報専門サイト、そこから企業信 用調査事業と派生するように、これからもベトジョーのDNAは広がっていくと思います。今は毎日数十本、毎月600~800本という記事を配信しています が、これにより最新性が強みのコンテンツになっていると思いますので、これからも多くの人々に頼りにしてもらえればいいなと思っています。」
ネルソン「確かに、それは面白そうですね!ベトジョーが11年に渡って積み上げたものをフルに活かせる時が来れば、非常に面白いものが生み出せそうです。応援しております。」
伊藤さん「有難うございます。」
***
いかがでしたでしょうか。
伊藤さんの、ベトジョーにかける熱い思いと、その先に実現させたい世界が伝わったかと思います。
百科事典、面白そうですね。
記事数が膨大なためそのカテゴライズは生半可な作業じゃ済まないでしょうけど、それゆえにその膨大な量が武器になった時には素晴らしい価値あるものが生み出せそうです。継続は協力なり、ですから。
俺も頑張ろうーっと!