コロナにより閉店措置がとられる飲食店、デリバリー対応に追われ、慣れないオペレーションで忙しいと聞きます。そんな中、開発期間3日間で日系飲食店に特化したデリバリー注文サービスが誕生。なんと手数料なし、その理由は?運営会社のCapichi、代表の森大樹さんに話をうかがいました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/04/13
コロナにより閉店措置がとられる飲食店、デリバリー対応に追われ、慣れないオペレーションで忙しいと聞きます。そんな中、開発期間3日間で日系飲食店に特化したデリバリー注文サービスが誕生。なんと手数料なし、その理由は?運営会社のCapichi、代表の森大樹さんに話をうかがいました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/04/13
ベトナムは、世界的に見て、コロナ感染抑止がうまくいっている部類という話を聞きます。
しかし、世界各地にベトナム系移民や、その親戚筋は多く、彼らが母国に戻ってくるという動きもあってか収まりきらず。どこの国でも似た話は聞きますね。完全終息まで余談を許さない状況です。
そんな中でダメージを受けている業界のひとつが、飲食店。ベトナムでは都市部を中心に営業停止措置、できてもテイクアウトやデリバリーのみ。そんな中、たった3日間で日系飲食店のデリバリー注文サービスを立ち上げた人物がいる!と教えてもらいました。最大の特徴は「手数料なし」。
なぜ手数料なしに踏み切れた?立ち上げた経緯や目的、また利用ユーザーの反応、そしてどんな人物?
いろいろとお聞かせいただきました!
取材はもちろんオンライン。下に映っている方が主役の森大樹さん、上右は私。上左は紹介してくれた和島さんです。最後の最後に撮ったのでみんな表情が和やかすぎるけど、話の内容はまじめです。
目次
まずはそのデリバリー注文サービスの紹介から。
この通り、見た目はシンプル。ハノイ、ホーチミン、ハイフォンの3エリアに別れている。ダナンはないの?というと、現在デリバリーもふくめて営業停止状態なのです(在住者にはお察しだけど)。
お店をクリックすると、取り扱いメニューの写真と価格が掲載されている(上には店舗詳細も)。「+」と「-」をクリックしてそれぞれ注文するメニューの数量を指定して確定。
あとは、注文者情報(名前、電話番号、住所、メールアドレス)、リクエストを記入して、注文。ちなみに記入されている住所はCapichiのオフィスです。
このサービスが既存(FoodyやGrabFoodなど)と大きく違う点は、「手数料なし」。
なぜそこに踏み切ったのか?森さんに話を伺ったところ、ボランティア精神ばかりでは続かないからこそ、長期戦を見据えた上での「お互いにメリットのある助け合い」というものが見えてきました。
▲森大樹(たいき)さん。こちらはいただいた写真です(オンライン取材だよ)。
私ことネルソン水嶋⇒ネ
森さん⇒森
ネ「まず聞きたいのが、なぜはじめたのか?です」
森「はい。私が運営している事業は本来、Food Vlog(飲食店でのビデオログ)のプラットフォームなんです。そこでユーザーと飲食店に接点をつくり、店舗の集客・ファン作りを支援しています」
ネ「ほう」
▲森さんの事業の名前は、Capichi。画像はスクリーンショットを並べたもの。
飲食店を利用したユーザーが短い(10秒ほどの)動画を投稿。そのほか、店個別のクーポンやポイントカード機能があり、お客がお得になり、お店は集客になり、双方にとってメリットを生むプラットフォームを提供。今回のデリバリー注文機能はサービス内のいち機能として構築されている。
森「Capichiの登録店はベトナム人経営のお店が中心ですが、個人的に日本人経営者の知り合いも多く、みなさんコロナによる閉店措置の中で少しでも売上を立てようとデリバリーをはじめていました。ただ、慣れない作業で、(日本人からの電話注文にベトナム人スタッフが対応するため)オーダーミスや住所の聞き間違いもあり、『オペレーションが回らない』という問題もあったんです」
ネ「なるほど。ウェブでならテキストだし、ほぼ確実に注文できますもんね。ほかに案はありました?」
森「日本でも注目されている前払いサービスも考えましたが、今お金が入るだけであとあと苦しくなるともいえるし、送金システム面でベトナムではハードルも高くて。その点でデリバリーなら仕様としてはシンプルなのでやることにしました」
ネ「それにしても、開発チームを持っていたとはいえ3日でつくったってのがすごいな」
先週金曜からハノイ市内の全飲食店舗が強制営業停止になって困ってる日系店舗と在住日本人を救うために、弊開発チームが3日でWebデリバリーのシステムを作ってくれました! 現地の有名日系フリーペーパーのVetterさんと組んで一気に展開していきます! https://t.co/ziIIlTSNGl pic.twitter.com/m5Tpw71QIF
— 森 大樹 🇻🇳ベトナム起業 (@mrtai114) March 31, 2020
▲スタッフたちと、チームパーティ後のヒマワリの種をかじる二次会。
ネ「サービスの提供をはじめてみて、感触はどうですか?」
森「意外に多くて驚いたのが、利用ユーザー(注文するお客さん側)から『簡単に注文できて助かる』という声ですね」
ネ「今までもFoodyやGrabFoodといった既存のサービスはあった訳じゃないですか。なのに、なぜ?」
森「日本食を中心に、日本人に人気のお店のデリバリーがまとまっている点が使い勝手がよかったようです」
ネ「なるほど!日本食以外食べないという人もいますからね。それも既存サービスで頼めるけど、ITツール、さらに日本語以外が苦手という理由もありそう。その点で、日系情報誌が持つタウン誌的な機能も担ってる。需要はあるけど牌は小さい、こうした状況でもない限り誰もあえてやらなかったのかも」
森「さっきお話した通り、Capichiはベトナム市場向けなんです。日系飲食店はいずれ考えていたのですが、つながりをつくるなら今だなと。もちろん根本には飲食店を応援したいという思いがありますが」
ネ「そういうのってすごく大事だなと思います。『助けたい』って気持ちだけじゃ、要するにボランティアじゃ長く続かないと思うんですよね。それに、うまい話はちょっとこわい。その点で、『Capichiは長期的にメリットがあるから助けます』という方が言われる側だって安心する」
森「はい。飲食店の方にお話しすると『本当に手数料なしなの?』と言われることも多いので、『うちにはこういうメリットがあるからやっている』ということは伝えています。提供にあたってVetterさんと協力させてもらっているのですが、実際にCapichi(本来のサービス)の参加店数にもつながりました」
ネ「なんだか、ビジネスの根っこを見た気がします。お店は今デリバリーの効率を高めたい、Capichiは中長期的に店舗を増やしたい。お互いの商売のゴール(キャッシュポイント)が違うからこそ、お互いが助け合える。『助ける』じゃなくて、『助け合える』というのが理想の形だなと思いました」
▲リリース直後にハノイ大学で紹介、数多くの学生がアプリをダウンロードしてくれた。
ネ「さきほど利用客の声は聞きましたが、お店はどうですか?」
森「やはり、オーダーミスがなくなったことで喜んでもらっています。ただ、一方で、機能の要望があったり、運用に慣れていない方もいるので、そこにどこまで対応するかという問題はありますね」
ネ「今そこにリソースを割けているのは、本来の事業が動いていないからですよね?」
森「そうです。なので、コロナ拡大が終息して閉店措置も終わり、本来の事業が再開できるようになったとき、デリバリーサービスも絡めたマネタイズを考えなければなりません」
ネ「ですよね」
森「飲食店の方にも、『コロナ感染(閉店措置)期間は無料』というお約束をしています」
ネ「そこで手数料を取るとなるとFoodyやGrabFoodと同じだし、閉じたら閉じたで困る人が出るだろうし、そういう後々の諸問題をひっくるめた上でサービス展開した森さんは立派だなと私思います」
森「ありがとうございます」
ネ「そういえば、森さんの個人的な部分について知らないや。ベトナムにはいつ来られたんですか?」
森「2年半前です」
ネ「思っていたより最近ですね、どういうきっかけで?」
森「インターンとして来ました。ベトナム人社長のITオフショア開発会社で働いていて、そこでは日系企業向けの営業を。といっても社内に日本人は私ひとりだったので、契約書の作成や締結、お金の請求なども、ぜんぶ自分でやらないといけなかったですね」
ネ「インターンの仕事量じゃない!(笑)」
森「大変でしたが、お客さんの案件を見させていただくので、どういう流れでどういうサービスを開発するのかすごく勉強になりました。それがそのあとの起業にもつながっています」
ネ「!それ確かにいいですね。おっしゃる通り、決して楽ではないけれど」
▲インドネシアでバックパッカー旅行中、山村にて。後に海外に住むきっかけのひとつに。
ネ「ん?2年半前にインターン??森さん今おいくつですか?」
森「23です」
ネ「私とひと回り以上違うのか…成長速度すごくて笑っちゃう」
森「まだ学生なんです、世代でいえば6回生になりますが」
ネ「卒業されてないんですね」
森「もともとはインターンを1年間終えたら日本に帰るつもりだったんですが、『ベトナムの市場は今がチャンスだ』と思っていたことと、ちょうどインターン先の社長に相談したら支援するよと言ってもらったので残ることにしたんです。それから半年くらいは会社で働きながら準備を進めて、そのあと独立してCapichiを立ち上げました」
ネ「そんな『チャンスの時期』にベトナムを離れたのが私です…いやでも、よく分かります」
▲直近(2020年3月頃)の写真、時間が経ったとはいえ、バックパッカーから激変…!
ネ「野暮な質問かもしれませんが、大学は卒業しないんですか?」
森「しないですね、会社を伸ばしてから大学はやめようかと思っています」
ネ「離れたら事業も止まりますもんね」
森「親の気持ちとしてはやっぱり卒業してほしいようなのですが、ちゃんと事業で結果を出して『大学に行かなくてももう大丈夫』と安心してもらってから、今年度末くらいにやめようと考えています」
森大樹さんと、Capichiデリバリー注文サービスについてのインタビューでした。
Vetterさんと飲食店情報を共有されているということですがハノイ発なので、とくに利用ユーザー(お客さん側)においては、ホーチミンでの認知はまだ伸びしろがあるのではと勝手ながら思っています。
今だけかもしれませんが、既存サービスと違って、お店の登録から注文時の手数料も無料です。現在、たとえば日本人経営者やマネージャークラスの方が直接電話で受けているお店も、最初の参加時こそ手間はあるかもしれませんが、以降の負担がグッと下げられそう。やらない手はないのでは、と思います。
最後にちょっと自分の話。このコロナショックという状況に対してなんとかしたいと思いつつも、やはり今ベトナムを離れてしまっているので(現在日本)、突っ込んだお手伝いができないことを歯がゆく思っておりました。まぁ、要らん、お前に何ができる、と言われたらそれまでなんですが。
その点で、ベトナムにつながり、話を聞き文章を書ける人間として、森さんとCapichiの活動を掘り下げて紹介することが今自分にできる最大限の「なんとかする」なのだと感じております。できることを再認識した。この機会をいただいた森さんと、そして紹介してくれたわじーこと和島氏に感謝を申し上げます。
Capichiのデリバリー注文サービスに登録を希望する飲食店さんは、
https://forms.gle/nQKXba9GGJpPKVMC9
上記フォームから登録か、
0969219493(ベトナム国内)
に電話か、
contact@capichiapp.com
までお問い合わせください。