ベトナムでは「会計のお釣りを飴玉で返す」ということが起こるらしい…。それは嘘か真か!?真実を突き止めよう。というか、ぶっちゃけ事実なんですけどね。でも最近は減りました。なくなりつつある習慣なのかも。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/12/05
ベトナムでは「会計のお釣りを飴玉で返す」ということが起こるらしい…。それは嘘か真か!?真実を突き止めよう。というか、ぶっちゃけ事実なんですけどね。でも最近は減りました。なくなりつつある習慣なのかも。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/12/05
本記事は、2016年6月30日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。
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皆さんこんにちは、ネルソン水嶋です。
私が手に持っているもの、分かります? 見たまんま、アメ玉ですね!
実は、ベトナムではこのアメ玉が……
「お金」として使えるというのです……!!
よく原始時代のアニメなどで穴の空いた大きな石盤がお金として登場しますが、アメ玉がお金代わりになるとは……。聞くところによると、お買い物の際のお釣りとして使われることが多いようです。その真偽を確かめるべく、街へ向かいました。
目次
ベトナムのスーパーマーケットへ。
アメ玉の「お釣り」が出てくるかという検証なので、なるべく半端な価格のものを探しましょう。
このお菓子とか良さそうです! 価格は5,500ドン。
桁数を一見すると「たっか!」と日本のみなさんは思われるかもしれませんが、1,000ドンは日本円でおよそ5円。つまりこれで25円ちょっとくらい。駄菓子屋によくある「5円チョコ」(正式名は「ごえんがあるよ」)は、ベトナムだと「1,000ドンチョコ」になるわけです。
それではお会計。
5,500ドンのお菓子を買うために、10,000ドンを出しました。
さて、お釣りは……!?
んっ?
アメ玉じゃ……ない! これは500ドン札だ!
私「アメ玉、ないの?」
店員「ここにはないよ。ほかの店舗ならあるけど」
私「詳しく聞かせてください!」
店員さんに聞いて分かったことは、次の通り。
【調査結果】
・500ドン(2~3円)の代わりとして2個分のアメ玉を渡すことがある
・この店舗では、500ドン札が十分にあるからアメ玉を用意していない
私「なんでここはアメ玉を用意してないの?」
店員「街の中心地で観光客や外国人のお客さんが多いから、アメ玉なんて渡したら戸惑うでしょ」
戸惑うだろう、という認識はあるようだ……。
いずれにせよ、お釣りとしてアメ玉を渡すことは真実なんだな……。まだ現物は確認できず。引き続き、新たな場所へ向かいます。
現地のコンビニチェーンへ。
これまた半端な価格の商品をレジへ持って行きます。
くださいな!(アメ玉を)
あっ……つ、ついに!
アメ玉だーっ!!
実はこれ、いきなり出てきたわけではなく、最初に500ドンを出されて「本当は持ってんでしょ?」と薬物中毒者を攻め立てる捜査官のごとく聞いたら見せてくれました。
私「価値が同じなら、お釣りの500ドンとアメ玉を交換してよ!」
店員「いや、500ドンを優先して渡さないと」
私「アメ玉のほうが大事なのかよ……じゃあ、逆にお客さんがアメ玉で支払うのはアリ?」
店員「いや、ありえないでしょ」
私「どういう根拠なんだよ」
店側がアメ玉をお釣りとして返すことはまかり通っても、客側がアメ玉を現金として渡すことはまずありえないとのこと。となると、アメ玉はさしずめ準500ドン札といったところか……。
ちなみに、レジを覗いたらバッチリと個包装のアメ玉が収まっておりました。
【調査結果】
・500ドンがあるときは500ドンを渡す
・1,500ドンとしてチュッパチャップスを渡すこともあるらしい
ちなみにお釣り代わりのアメ玉はちゃんと商品としても売られていた。お釣りを店舗の商品でまかなっているってことだよね?
最後に、市場へ行ってみました。
雨季のため突然のスコール。
時折、天幕に溜まった雨水がトラップのように落ちてきます。
アメ玉あった! といってもこれは商品か。
私「1個いくらなの?」
店員「量り売りだよ」
私「豪快だな」
親切なおばちゃんがいろいろと話してくれました。
私「このアメ玉、お釣りに使ったりするの?」
おば「あはは! そりゃスーパーとかでの話だよ!」
私「あれ、ここではそういうお釣りの渡し方はない?」
おば「あるわけないよ! アメ玉のひとつふたつタダであげるって!」
おぉ、懐が深い……。
【調査結果】
・500ドンくらいのお釣りなら、まけてやる
・というか、アメ玉がほしけりゃくれてやる
あとから本当にいろいろとタダで食べさせてもらいました。
今回、ベトナムでアメ玉は「お金」として使えるかという検証を行いました。結果は、「お釣りに限定して使われることがある」でした。実はこれ、れっきとした事情があります。
ベトナムにおけるコカコーラは現在、1缶だいたい1万ドン(およそ50円)で売られていますが、10年前だと3,000ドン(およそ15円)で購入できたという話を聞いたことがあります。
つまり10年以上に渡って急激なインフレ(物価の上昇)を起こしており、多くの商品の価格が1000ドン単位になったことで、500ドン札をはじめとした少額紙幣たちは使いどころを失ってしまったのです。なお、500ドン未満の紙幣は200ドン紙幣のみ。こちらはほぼ確実に受け取りを拒否されます、お金なのに。
こちらは以前、銀行で約8,000円を500ドンに換金したときのもの。なんと札束が3本もあるのに1万円以下! 使い勝手が悪すぎる!
500ドン札は先述した経緯から、受け取りを嫌がられる、言わば「ババ抜きにおけるジョーカー」と化し、貨幣としての流通も鈍りました。
市場や個人商店など、店主に裁量権のある場合は渡さない自由も受け取らない自由もある。しかし、スーパーやコンビニなどのチェーン店においては、個人商店と比べて店主に裁量権が与えられていないため、500ドンが嫌だからといって安易に使用を避けるわけにはいかない。
そのための代替品として登場したものが、アメ玉という“ちょうどいい”現物だったわけなのです。ちなみに、アメ玉ではなく「封筒」の場合もあるとのこと。
皆さんがベトナムへ観光などに来られたときに、500ドン札をお目に掛かる機会はまずないと思います。見かけたらむしろラッキーかもしれません!
この撮影の翌日に友人から教えてもらったのですが、同じようなことを考える人はいるもので、「お釣りでアメ玉が許されるなら支払いにもアメ玉が許されるはずだ!」と、ゴリ押しでお店に受け取らせた人が現れたそうです(リンク先はベトナム語)。強い。
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編集:ノオト