スッカリとひとつのカテゴリーとして定着した日本のパクチー嗜好。中にはほぼパクチーを食べているというくらいに使ったりするけれど、ベトナムはアクセントとしてちょっとだけ。いったい日本のパクチー熱にどう思う?聞いてみました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/19
スッカリとひとつのカテゴリーとして定着した日本のパクチー嗜好。中にはほぼパクチーを食べているというくらいに使ったりするけれど、ベトナムはアクセントとしてちょっとだけ。いったい日本のパクチー熱にどう思う?聞いてみました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/19
本記事は、2018年1月25日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。
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こんにちは! ベトナム在住ライターのネルソン水嶋です。
私が左手に持っているものは現地のバゲットサンドウィッチ、バインミー。100円以下で食べられる、朝食の定番です。パリパリッとした薄皮とモチモチ~とした生地が特徴で、マジでウマイ。最近は、日本でも専門店が増えていると聞いています。
ところで……みなさん、パクチーはお好きですか?
日本でも3年ほど前から人気に火が付いたパクチー。もともとパクチーをメインとした飲食店は少なからず存在していましたが、最近はそれらに限らず東南アジアの料理を扱うお店を中心に、パクチーを大量に盛り付けた料理が増えているとのこと。
日本の東南アジア料理店などで見られる光景。ただ、こちらはベトナムの丸亀製麺での写真です。パクチーのトッピングが無料なのでこんなこともできますが、日系のお店ということもあって、完全に日本のパクチー・ブームの煽りを受けた結果でしょう。
そこで、パクチーが食べられる場所といえば東南アジアを想像する人も多いかと思います。タイやベトナムなどがそうですね。うん、食べる、確かに食べますよ。
でも……
ベトナム料理のパクチーはッ!
ほんのちょっとだけーッ!!
麺料理にもこの程度。
そうなんです。ベトナムだからといって、大量に使うわけじゃないんです。これはタイだって同じ。
それでは、日本のこのパクチー・ブームを、当のベトナム人のみなさんはどう思っているのか? 街に飛び出して聞いてみました。
ちなみに、パクチーはタイ語です。ベトナムではザウムイと呼ばれます(呼称や発音に地域差あり)。
目次
ホーチミン市にあるブオンチュオイ市場へ。
ベトナムの市場は、日本の商店街のようなもの。肉や野菜などの生鮮食品もあれば、服や貴金属、日用雑貨など、あらゆるものが集中しています。
日本のパクチー・バブルぶりがわかる画像。パクチーの天ぷら、パクチーが盛られたピザ、パクチーのパスタソース、パクチーが練り込まれたインスタント麺、さらにパクチーの入浴剤……などなど。
これをベトナム人のみなさんに見てもらいながら、日本のパクチー・ブームの感想を聞いてみます。
昼下がりのためか、昼寝中の人も多かった。
▲左に見切れている人物は通訳をしてくれた友人
私「すみませーん、パクチー好きですか?」
女性「えぇ、あぁ、そりゃ好きっていうか、ふつうに食べるよ!」
香草がたくさんあるな~と思ったら青汁屋だそうです。なるほど。
私「日本でこういったものが流行っていて……(写真を見せる)」
女性「……」
私「どう思いますか?」
女性「ありなんじゃない?」
私「えっ?」
女性「私もたまにこれくらい盛っちゃうことがあるよ!」
正直、意外……!
ベトナムでのパクチーの使い方は基本的に「少し」なので、驚きの反応を予想していたものの、個人的な使い方としてはそれほど違和感がないようだ。
私「ちなみに青汁にパクチーは入れてるの?」
女性「入ってるよ。そこにあるでしょ? ほら、ちょうど花が咲いてるよ」
私「そんな『風流だね』みたいに言われても。っていうか、パクチーって花咲くんだ!」
青汁購入。砂糖がたっぷり入っているためか青臭さは感じない、「南天のど飴」のような味でした。
私「日本でパクチーが流行っているのですが、どう思います?」
女性「うわー、ダメ! ダメダメ!」
私「あっ、やっぱり使いすぎ……?」
女性「違う違う! 私、パクチーダメなの!」
私「えぇ!?」
ベトナム人でも嫌いな人がいたのか……! いや、海苔が嫌いな日本人もいると考えれば理解はできる。
パクチーではないが、ベトナムにも健康ブームが来ており、インスタント麺にも野菜を多く使ったものが増えている。パッケージが全体的に緑色。
こちらのインスタント麺のパッケージには香草が描かれていますが、成分表にはパクチーが入っていませんでした。
「なんで入ってないの?」と聞いてみたら、「それだと『香草』というよりも、『パクチー味』になっちゃうからじゃない?」というご意見。パクチー味にしたくてパクチーを入れる日本人とは、真逆の意見だ。
私「どれくらい嫌いなの?」
女性「入っていたら全部よけるくらい」
私「めっちゃ嫌いやん」
女性「あ、でも、このパクチーの天ぷらは食べられるかも」
私「おー、なんで?」
女性「パクチーの味がしないと思うから」
私「本末転倒じゃねぇか」
パクチーの天ぷら(かき揚げ)は、ずっと前に私も食べて「春菊みたいでおいしい!」と思ったことがあるのですが、思い返せばパクチーの味そのものはあまりしなかった。それだけに、パクチーが苦手な人には食べやすいということで初心者向けと言えるのかもしれません。
老若男女いろいろな方に聞いてみて、このような意見が集まりました。
・基本的には少量だが、たくさん盛ることを歓迎する人もいる
・ベトナム人でもパクチー嫌いな人はいる
・風邪のときはたくさん食べると治りが早いよ
・熱を加えたらパクチーらしさが損なわれるんじゃないか
・爽やかな味が特徴なのでパスタソースなどの油が多い料理に合うと思う
・入浴剤は想像がつきません
正直、パクチーを盛りまくる日本人がキワモノ扱いされるのを予想しての取材だったのですが(入浴剤は別……)、意外にも肯定的な意見が多くありました。
ベトナムのお店では香り付けとして少ししか入っていないことが多いパクチーですが、好きな人になると家では盛りだくさんにするという事実が判明。ただし、それは香りが好きだという前提なので、天ぷらなどの熱を加える調理に対しては否定的でした(ただし苦手な人には好まれた)。
ベトナムやほかのアジア諸国でパクチーと同じくらいの時期にブームになっているものが「抹茶」。ドリンクやデザートなどに使われており、今のところ日本のパクチー・ブームのように、抹茶の粉を山盛りにするようなことはありませんが、いつかはそんな時代も来るかもしれません。
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編集:ノオト