ベトナム、特にハノイでは、花を愛でる傾向が強いように思います。朝もやが掛かる頃、自転車のカゴいっぱいに花を載せた花売りは、絵画のようにすら思える。そんなベトナム人の友人に生け花を体験してもらうとどうなるか。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/05/10
ベトナム、特にハノイでは、花を愛でる傾向が強いように思います。朝もやが掛かる頃、自転車のカゴいっぱいに花を載せた花売りは、絵画のようにすら思える。そんなベトナム人の友人に生け花を体験してもらうとどうなるか。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/05/10
華道っていいですよね!
花には花言葉というものがありますが、二つ以上の花を組み合わせることによってまた違う花言葉が存在するそうです嘘です。
サイゴンの日本人社会には、何故か一芸を持った人が数多くいます。
その中で、現在某レストランのメニューを開発している女性がいるのですが、なんと彼女は池坊流華道の先生でもあり、かれこれ23年もお花と向い合ってきたらしい。
それを知るやいなや「ベトナムの花で生け花してください!(アオザイを着て!)」とお願いしたところ、「ベトナムの花で生け花しますよ(アオザイを着なければ!)」と有難いお返事を頂いていざやることに。
ネルソン「おはようございます!」
則本先生「おはようございます~」
こちらの女性が、池坊流華道・池坊正教授一級取得者という経歴の則本先生。本日は宜しくお願い致します。
さて、花も大切ですが、まずはなんといっても舞台となる花瓶が無くてはいけません。
売っているお店を知っているというベトナム人の友人と合流するべく集合場所へバイクを走らせます。
ベトナムは今の季節が最も暑い!
ギラギラと照りつける日差しを浴びながら30分もの時間を掛けて向かいました。
花瓶屋。ちなみに左にいる女性が、友人のDuyenさんです。
最初は花瓶屋なるものがあるかどうか不安だったけど、ベトナムは花を生ける文化があるようなので心配することも無かったかもしれません。
実に色々な花瓶があります。
中には変わり種も。
もはや花瓶ではないですね。
ちなみに三枚目の様な、神様が飾られているものはしょっちゅう見ます。
ベトナムの仏壇も「ノリ」が同じです。これはベトナムらしさが凝縮されているデザインかもしれません。
則本先生「私はこれにします」
Duyenさん「私はこの円いもので」
則本先生「ネルソンさんは?」
ネルソン「生けてからのお楽しみじゃ~!」
Duyenさん「次は花屋ですね。」
花屋へ…お、おおぉぉぉ。
自分、舐めてましたが、ベトナムも探せば何でも揃うよね。
その情報を何処で手に入れるかってのが一番の問題なんだけど。
花以外に草木も豊富にあるようで、生け花を行う上でも作風の幅が広がります。
この時、既に華道は始まっていると言えるかもしれません。
Duyenさんも、則本先生と相談しながら慎重に草花を選びます。
則本先生「決めました!」
Duyenさんもー、
Duyen「わ、私は撮らなくていいです…!」
え、いや、何でや、花瓶屋で撮ってたやないか。一体突然、何処から来る心境の変化や。この花屋ではオアシス(生け花の土台となるスポンジ)も手に入ったので、我が家にある畳部屋に戻って早速実践です。
則本先生「生け花はですね、まずメインがあるんですよ」
則本先生「そのメインを際立たせるために草や葉などを生けていきます」
則本先生「初心者の方にありがちなのが、絵のように平面的になっていること。生け花は、縦、横、奥、三つの軸、空間全体で魅せる作品なんです。」
興味深そうに眺めるDuyenさん。
そして、ものの10分もしない内に完成!
おぉ…
正直、これまで華道に触れたことなどほぼ無かったのですが、
美しい…素直にそう思いますね。
ひとつの絵画を描く作業と大きく違いは無いのかもしれません。筆と絵の具がそのまま花に置き換わっただけのように感じます。
作品と則本先生をパチリ。
さぁ、お次はDuyenさんです。
慎重に、慎重に生けていきます。
綺麗な薔薇が咲きました。
この傾きも意図的なのでしょうか。
ここで、則本先生の手直しが入ります。
大胆にセロテープを使い、葉に丸みを帯びさせます。華道は型にはまったお堅いものだと思っていたんですが、想像以上に、美を追求する上では「ルール無用」のようです。
で、完成!
うーん、美しか…。
自然物でこんなに美しいものが出来るのかと感心します。
則本先生の手直しも利いていますが、Duyenさんも初めてで、しかも華道にほとんど触れたことが無いにも関わらず結構なお手前です。
作品とDuyenさんをパチリ。
則本先生「次はネルソンさんの番ですね」
おっしゃ…おっしゃーーー!!
この時を待っていたぜ!!!
二人が生ける姿を見ていて創作意欲はもう十分、小学校の頃は図画工作の成績がずっと5だった俺の才能を見せつけてやるわー!!
(ちなみに中学に上がってからはみるみる内に下がっていきました。色塗りとか、苦手!)
基本的に、ものづくりに対しては誠実な男です。
全神経を集中させて己のクリエイティビティを生け花という形で具現化させます。
…
………
………………よし!
則本はーん!!ワイも出来たでー!!!
名付けて「李白 in the 腐海」や!!!
則本先生「………………………………………重症ですね」
ネルソン「えっ?」
則本先生「そもそもこれ、生けるスペース無いですよね」
ネルソン「はい」
則本先生「やけに大きい花瓶を買うなと思ったら、これいくらしたんですか?」
ネルソン「60万ドン(3000円)…あ、でも、80万ドンを値下げしたんですよ!(Duyenさんが)」
則本先生「いずれにせよ、手直しします」
ネルソン「はい…………」
李白 「ふははは小娘!貴様にワシが手直し出来ると思うてか!!」
則本先生「ネルソンさん、黙っててください」
ネルソン「ふは…はい」
則本先生「はい、できました」
李白 「ぐぬぅ…やるではないか!李白チョー感激!!」
則本先生「ネルソンさん」
ネルソン「チョーすみません」
という訳で、ベトナムの生け花はこれにて終了。
生け花というと日本のイメージばかりが先行しますが、そんな場面でしか使わないようなオアシスがベトナムにもあることには驚きです。
材料や道具もホーチミンで買い揃えられるといえば買い揃えられるけど、実際はバイクで2時間くらい走り回っているのでそれなりに疲れました。
今回は、華道を教えてくれた則本先生、そして買い物の通訳を任されてくれたDuyenさんに心から感謝致します。
李白「お~い」
李白「ちょっとちょっと~」
李白「誰か忘れておまへんか~」
李白「生けるだけ生けてなにそれ~」
この李白の花瓶、50万ドンで買い取って下さる方は私にまでご連絡ください。近々引っ越す時に邪魔になりそうなので、割とガチで。 あと、例によって会話のやり取りの一部はフィクションです。