ホイアンで障がい者と健常者がともに働く・ダックカフェ(Duck Cafe)マネージャー・野口かな子さん:後編

ホイアンで障がい者と健常者がともに働く・ダックカフェ(Duck Cafe)マネージャー・野口かな子さん:後編

ランタンっていいですよね!

ホイアンを象徴するものにランタンがありますが、日本の提灯とよく似ています。
これは、実はホイアンのランタンが輸入されたことが背景にあるそうです嘘です。

 

前回に引き続き、Duck Cafeマネージャー、野口さんへのインタビュー(後半)です。

Duck Cafeはホイアンにある障がい者雇用を進めるカフェ。
前半を読んでいないよ!という方は詳しく書いてあるのでお読みください。

ホイアン発、障がい者と健常者が切り盛りするカフェ/Duck Cafe マネージャー・野口かな子さんインタビュー(前編)

 

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京都宇治の農家から仕入れた、抹茶を使用してつくったラテを飲む子どもたち。
コンビニなどで買える抹茶は加工用抹茶と呼ばれ、本来の製法とは異なるとのこと。

 

雇用したスタッフの家族から喜ばれ、障がいを持つ人が働く難しさを知った。

ネルソン「オープンからほぼ一年間Duck Cafeを経営し、よかったことやわるかったことはありますか?」

野口さん「よかったことといえば、雇用したスタッフの家族からすごく喜ばれたということです

ネルソン「その背景には、やはり障がいを持つ方の就職は難しいと?」

野口さん「はい。希望の村(※)を手伝い続ける子もいますし、働かないまま家で二年間暮らしていた子もいます。仕事をやっていない人がいない訳ではないですが、やはり少ないということが実情です。スタッフの一人はもともとIT系の会社で働いていたのですが、バイク事故がきっかけで障がいが残りました

※希望の村→ダナンにある「生活困難な子どもたち」の養育施設。孤児や、聴覚障がいを持つ高校生までの子どもが支援を受けながら生活している。URL

ネルソン「もともとIT系…!?」

野口さん「はい」

ネルソン「なんとなく、驚きました。知的障がいと聞くと先天性のものだと思い込んでいたのですが、完全に私の先入観でした」

野口さん「日本は医療先進国ですから、実際にそういった事例が少ないのだと思います」

ネルソン「それでは、わるかったことはどうですか?」

野口さん「うーん…お店を経営する上では特に無いですね。しいて言えば、空き巣に入られてパソコンを盗まれたことがあったんですが、警察が動いてくれないとかでしょうか」

ネルソン「あぁ、残念ながら、あるあるですねそれは…笑」

 

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野口さんと、元はIT系企業に勤めていたという、知的障がいを持つVyさん。

 

郷に入りては郷に従え、だけど譲らないところは譲らない。

ネルソン「Duck Cafeで働く上で、何か得られたことや発見はありましたか?」

野口さん「最初は、舐められてはいけない、日本人としてシッカリとやろうと思っていました

ネルソン「そういう考え方は、現地で働く日本人の中では少なからずありますよね」

野口さん「だけど一ヶ月経って、スタッフから言われたんです。「プレッシャーを与えないでくれ」と」

ネルソン「おぉ」

野口さん「ここは日本ではなく、自分が当たり前にやっていたことは彼らにとってプレッシャーになるんだと気付かされました。それからはみんなと仲良くすることが一番だと意識して、そのやり方に切り替えたら自然とみんなも頑張るようになりました。そうすると、無意識に与えていた自分に対してのプレッシャーも段々と無くなっていったんです」

ネ ルソン「日本と違うからより絞ろうとするのではなく、日本と違うから寄り添おうとする。業界や地域によって違いはあるのでしょうが、その方法にかなり重大 なヒントが隠されている気がします。特にベトナムでは、パフォーマンスを発揮してもらうには、まずは家族のようになってもらうことだと聞きますね」

野口さん「はい。ただ、譲らないところは譲らないようにしています」

ネルソン「それはたとえば、どういうところですか?」

野口さん「飲食店ですから、特に衛生面。そこを適当にすると、飲食店として本末転倒です。学習能力は高いので、一度覚えたことは、私自身「そこまで!?」と思うくらいに徹底して清潔に保ってくれます」

ネルソン「ベトナムの人達は、決められた仕事は120%こなすと聞きますよね。逆に、臨機応変でないとも聞きますが」

 

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地元の子どもたちを呼んで和菓子教室を開催している様子。
甘い豆を食べる食文化は日越共通らしく、材料もベトナムのものを使用している。

 

どんな子どもで、どんな成績だった?

ネルソン「ちょっと話が逸れますが、野口さんはどんな子どもだったんですか?」

野口さん「私ですか?…大人しかったです、今もですけど」

ネルソン「変なことを聞きますけど、成績は?」

野口さん「全体的に勉強は出来る方で、中学までは地域のトップ校にはいけるレベルでした」

ネルソン「中学までは?」

野口さん「高校で吹奏楽部に入って熱中するようになり、あまり勉強はやらなくなりました。もともと努力した分だけ成績が上がっていったタイプだったので、当然ですね。あ、ただ、料理や科学的なことは好きだったので、理科だけは学年でも上位でした」

ネ ルソン「そうなんだ…。ちなみにこの質問の意図は最近、子どもの頃の成績を聞くと、その人物像が見えてくるんじゃないかと思いまして。ちなみに私は図画工 作はいつも5段階で5、国語もそこそこ良かったです。それ以外は至って普通。一応言っておくと、これが言いたかったから聞いた訳ではないですよ笑」

野口さん「はい笑」

 

その土地の障がいを持つ人は、その土地の人たちで支えていく形が理想。

ネルソン「今後、Duck Cafeをどうしていきたいという展望はありますか?」

野口さん「はい。ホイアンには障がい者雇用を進めているお店がいくつかありますが、そのどれも外国人観光客がターゲットとなっています」

ネルソン「リーチングアウト(※)というお店でしたか、有名ですよね」

※リーチングアウト→ホイアンにある、障がい者の人たちによる手工芸品を扱う有名店。URL

野口さん「欧米圏の方は障がい者雇用に対して関心が高いので、ビジネスとしてはとても大切な要素だと思いますが、本来であれば地元の人が地元の障がい者を支えていく形が理想だと私は考えています」

ネルソン「なるほど」

野口さん「Duck Cafeのお客様は現状、日本人や欧米人の方が全体の9割を占めていますが、今後はワークショップの開催を通してベトナム人のお客様も増やしたいと考えています。食を通して日本文化を楽しむとともに、その行為が障がい者の方々の生活を支えているということを意識してもらえると嬉しいです

ネルソン「まずは意識してもらうってとても重要ですよね。人の意識を変えるというのは、大変ですがやり甲斐もありそうです」

 

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和菓子教室でつくったねりきり。情報のやりとりのみではなく、こうして手を動かす日越交流は私も見習いたい。

 

野口さんの夢、障がい者と健常者が共に生きる世界を目指す。

ネルソン「Duck Cafeだけでない、野口さん自身の夢はありますか?」

野口さん「大きく三段階で考えていて、「自分の店を持つ」→「聴覚障がい者の魅力を伝えるカフェを展開する」→「障がい者と健常者が共に生きる環境を実現する」です」

ネルソン「その一つ目はもう叶った?」

野口さん「はい。小学校の頃からホイアンに来るまでは一つ目でしたが、こちらに来てしばらく経ってから二つ目を考えるようになり、最近になって三つ目を自分のビジョンにしようと決意しました」

ネルソン「二つ目に、具体的な構想はありますか?」

野口さん「聴覚障がい者×茶道、というコンセプトのカフェを日本で開こうと考えています」

ネルソン「おぉ…中学から茶道を学んでいたという話でしたね、具体的に言うと?」

野口さん「聴覚障がいを持つ方が、お客様の前で丁寧に静かに美しくお茶を点てて、召し上がってもらえればより一層美味しく感じていただけると思っています」

ネルソン「確かに、茶道は侘び寂びの世界と言いますし、静寂というイメージがあります。その舞台では、障がい者と健常者の垣根はあまり無いように思えますね。しかし、そこに考えが至ったきっかけでもあるのでしょうか」

野 口さん「はい。以前にホイアンにある、聴覚障がい者の女性だけで運営しているカフェに行ったのですが、その時に見た手話での綺麗な手の動きにとても感動 し、彼女らが茶道をやったらとても私は敵わないと思ったんです。私は長年茶道を習っていたため人に教える資格も持っていますが、手の表現により意思疎通する彼女たちには持って生まれた魅力があると感じました

ネルソン「うーむ…正しく、「何かが足りなければ、何かが足りる」という良い実例」

野口さん「手の動きの美しさを活かせる仕事を生み出せれば、その人たちにとっての憧れの仕事になるかもしれないし、またお客様にも楽しんでいただけるのではないかと思います」

ネルソン「その活動を通して、「障がい者と健常者が共に生きる環境を実現する」と」

野口さん「はい」

 

野口さんが考える、障がい者雇用についての考え方。

ネルソン「日本でお店を展開するということは、Duck Cafeの経営からはいずれ離れるということですか?」

野口さん「いえ、自分自身が携わったお店なので、これからも関わっていきたいと思っています」

ネルソン「両国でということ?なかなかハードな選択を選びますね。いや、私も今似たような計画を持っていますけど」

野 口さん「そうですね。違う国でそれぞれのお店を経営することはとても大変でしょうが、既に信頼できるスタッフもいますし、彼らが主体となって経営できる組 織づくりに励んでいるところです。来年以降は、時々ベトナムに渡りつつも、基本は遠隔で、それぞれの国で共にお店を経営できる状態を目指します」

ネルソン「ご活躍を期待しております。最後に、野口さんの、障がい者雇用についての考え方を教えてください」

野口さん「障がい者雇用を生み出すということは、単に職場を提供するだけではなく、彼らの生きがいをつくることでもあります。ま た、ちょっとしたことでも問題が起こり易いので、仕事のみならず彼らの生活にも踏み込んでいかなければなりません。ただ、そこまでやるからこそ、人と人と のつながりを感じるのでやり甲斐があります。「苦労を背負わなければならない人たちが、私の仕事をきっかけにこれからより楽しい生活を送れるようになるか もしれない」、ということに私はとてもやり甲斐を感じています。そうしたきっかけを今後もたくさんつくれるよう、頑張りたいと思います」

ネルソン「長時間に渡って、有難うございました!」

野口さん「こちらこそ有難うございました!」

 

***

 

経緯を紐解いてみれば、野口さんはもともと障がい者雇用との接点は無かったはずです。それが、「日本文化」と「飲食店」という接点があったためベトナムへ渡り、そこで「障がい者雇用」との接点を持った。

人はどこでどうなるか、分かりませんね。
私自身、ベトナムに来た経緯はたまたまだったし…。

余談ですが、このインタビューの後日に一時帰国する予定がありました。
赤坂で人と会う予定があり、少し時間があったので何気なく入ったお店が…なんとスワンベーカリー。

それまでただの一度も行ったことが無かったんですけどね。
しかも、その会う相手はGET関係者で、あとから野口さんに話したところそこで研修をしていたという。

 

最後に。ちょっと今回のテーマからは逸れますが。

自分の経験に基づいて夢を語る人は、本当に実現するんだろうなという迫力を感じます。
「やりたい」よりも「なんとかしたい」という出発点の方が、自分の欲求だけで収まらない大義がある。
異なる課題を、同じく「なんとかしたい」と考える人間として、野口さんの活動を心より応援しております。

 

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店名: Duck Cafe

営業時間: 9:00~22:00(ラストオーダー)/定休日なし

住所: 59 Nguyen Phuc Chu, Hoi An

電話: +84 5103919229

コンセプト: Friendly to people and the society ~人と社会に優しく~

 

Duck Cafeのイイところ

・Special Duck Food(あひる料理)

・Coffee and Matcha Latte from farmers(農家直送のこだわりのコーヒーと抹茶)

・Support people with disabilities(障がい者支援)

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