LINEやYouTuberは当たり前!?タイのお坊さんに密着したらキャラがスゴかった

LINEやYouTuberは当たり前!?タイのお坊さんに密着したらキャラがスゴかった

本記事は、2016年7月28日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。

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ネタりかをご覧のみなさま、こんにちは! ネルソン水嶋です!

ただいま早朝の5時……超眠い!!

 

きっとこの背景から「一体どこにいるんだよ?」と思ったかもしれません。普段はホームグラウンドであるベトナムからレポートをお送りしておりますが、今回は違います。

 

ここは、タイ・バンコクの中心部にあるお寺。

 

「なぜ、そんな早朝にそんなところにいるの?」と思った方、ご説明します!

 

托鉢(たくはつ)って知ってますか?

「大辞林」によると、托鉢とは「修行僧が鉢を持って市中を歩き、他人の家の前に立って施しの米や金銭を受けて回る」こと。タイやラオスを旅行された経験のある方なら見たことがあるかもしれません。

 

撮影:Darren Donahue

こちらはラオスでの托鉢の様子。日本では笠帽子を被るなど僧侶の服装は違いますが、同じものがありますよね。

世界有数の仏教国であるタイでは、そんな托鉢が全国のお寺周辺で毎朝行われます。しかし最近は、供えられる食べ物が現代食に移り変わって高カロリーとなっており、お坊さんが続々とメタボ体型になってしまっているというのです。

 

でも、それって拒否できないの?

そもそも托鉢のお供え物ってどんなものなの?

まず根本的にタイのお坊さんってどんな修行をしているの?

 

そんな疑問を解消するべく、現地へ飛びました。

それがまさか、あんなお坊さんに会えるとは……。お楽しみくださいませ。

 

お寺で出待ちするも、なかなか同行を許してもらえず

そして再び、現場から。

このお寺は私が泊まっているホテルから歩いて5分ちょっと。このように、バンコク市内だとどこからでも徒歩圏内にあることが多く、信者の生活と非常に近い存在だということがうかがえます。

取材前から気になっていた撮影許可は、掃除をしていた格の高そうなお坊さんに聞くと、「これから托鉢でひとりずつ出てくるから、ついて行って撮ってもいいよ!」と一発OK。

 

ちなみに今回は、現地に住む高塚くんという青年に通訳として手伝ってもらっています。

お坊さんを出待ちしながら、同じく出待ち中の信者の方にお供え物について聞いてみました。

 

おじさん「米だよ。米なら間違いないから」

お姉さん「私は水とかお菓子とか、あとお米におかずね」

そうこうしてたら、ついにお坊さんが出てこられた!

裸足で!

 

高塚くん「托鉢は素足で外を周るんですよ。これも修行です」

 

さきほどのお姉さんが礼拝している。こうして食べ物などをお供えすることで、徳を積めるとのこと。

 

私「お供え物は、もちろんお坊さんが食べるんだよね?」

高塚くん「はい、午前中に一度。仏教の戒律で、正午以降に水以外の飲食をしてはいけないんですよ」

私「まさに修行だ……」

 

そうして、さきほどのお坊さんは外へ托鉢に……。背中のたくましさに壮大な冒険の幕開け感がある。

と、見とれている場合じゃない。同行OKのお坊さんを探さねば。

 

しかしそのあと、続々とお坊さんが出てくるも同行NGの連続。

 

なんで……!? さっき、格の高そうなお坊さんは同行OKって言ったのに……!

 

という心の声を聴かれたかどうかは定かではありませんが、当のお坊さんに「さっき出ていったやつについて行っていいよ、俺が許可したって言えば大丈夫だから」という鶴ならぬ僧の一声をいただいた。

 

お坊さんを小走りで追いかける状況は、人生でも最初で最後だろう。

 

元ミュージシャンのお坊さん、その名は「ミラクル」

黙ったままのお坊さんについて行く我々。偉い人に言われたとはいえ、渋々なのかな……?

高塚くん「すごいところに入っていく!」

失礼千万を承知で言わせていただきますが、

まるで猫のあとをついて行っているようだ。

 

それはそうとして、依然として沈黙が続いています。気まずい。何か、何か言わねば……。

そう思案しているとお坊さんが、ポツリ。

 

お坊さん「(英語で)あなた、英語は話せるの?」

高塚くん「(タイ語で)あ、タイ語でいいですよ」

お坊さん「んっ……!?」

 

お坊さん「なんだよ~!

お坊さん「おめっ、タイ語話せんのかよ~! はよ言えよ~!!

 

ここから急激に仲良くなる2人。実は高塚くん、タイ仏教の短期の出家プログラムで1週間ほど修行したことがあり、「身内かよ!」という勢いでお坊さんの態度が瞬く間に軟化。いろいろと自身のことを教えてくれました。

お坊さんの名前は「プラパティハーン」。意味は「奇跡」。というわけで、これ以降はお坊さんのことをミラクルさんと呼びます。僧名は「ジッタスコー」で、意味は「崇高な心」。出家して7年目の44歳。以前はレストランでギターの弾き語りをしていたらしい。

 

私「出家した理由は?」

ミラクル「毎日酒を浴びるように飲んでいた時期があってね。これは自分のためにならないなぁと」

私「そこで仏教を選んだ理由は?」

ミラクル「みんな信仰してるから

 

意外に理由が軽い!

 

タイのお坊さんという存在に謎めいたものを感じていたけど、こうして話してみると親近感に満ちあふれている。

タイにおいて僧侶の経験は厳しい戒律を守り抜いた一人前の男性の証だそうで、期間はともかく出家は一般的なものらしい。敬いこそすれ、近づきがたいといったものはなく、日本よりも暮らしの中での接点は多いようだ。

 

道路を渡るときも、心なしか車はよく停まってくれる気がする。

 

持ち切れなくなったお供え物は、バイクで回収!?

それからも、ところどころで、

信者からお供え物を受けては、

お経を唱えて回るミラクルさん。

 

それぞれのお坊さんには決まったルートがあり、そこで鉢合うように信者がお供え物を持ち、屋台やベンチなどで待ち構えている。たまたま通りすがった人も立ち止まって両手を合わせる。お坊さんは敬うものだという教えが根付いているのだとよく分かります。

 

私「どれくらい歩くんだろ」

高塚くん「1時間くらいみたいですね」

私「いい運動になるなぁ」

高塚くん「そういえば、僧侶は戒律で、運動をしてはいけないんですよ」

私「えっ! じゃあ結果的に、今が唯一の運動時間ともいえるのか」

 

それにしても、ミラクルさんがお供え物を入れている鉄製のお椀「鉄鉢(てっぱつ)」はそろそろ満杯じゃないか? まだ20分も経っていないけど、これからどうするの!?

 

ブロロロ……

キッ!

 

男性「サワディカップ(こんにちは)!」

私「……誰?」

あ! さてはこの男性が回収するのか!!

 

お供がつくお坊さんは位が高い人のみ。とはいえ、すべてのお供え物を抱えながら歩き続けるのは困難。そのため、こうした「回収係」がバイクでやって来て受け取るらしい。やべぇ、思った以上に合理化しているぞ、托鉢は!

 

サッ!

こんな感じで、

シュッ!

お供え物のノールックパスを見せてくれます。

ハンバーガーのお供え物も。こりゃメタボになるよ!

 

托鉢をやってみよう!

どうやらここにしばらく留まって托鉢を行うらしい。この時間帯にやって来れば、必ず徳が積めますよ、ということか。

待たせちゃ悪いから、といってお坊さんからコーヒーをおごってもらう。なんだか飲むだけで徳が積めそうだ。絶対に錯覚だけど。

我々も、托鉢をやってみることにした。

簡易式のテーブルには、

ご飯、惣菜、甘味、蓮の花、そしてお金を入れるための封筒が一式で売られている。お寺に供えられる物をお寺が販売しているという構図は一見不思議だが、タイでは当たり前のことらしい。

隣の人をよく見た上で、

鉄鉢にお供え物を入れて、

水を注いでいる間にお経を唱えてもらい、

礼拝して終わり!

我が人生で一番ぎこちないであろう表情です。

お経が染みこんだ(?)水は、近くの植木鉢の土に注ぎます。この習慣は、釈迦が悟りを開いたときに地面の土が乾いていたという言い伝えに由来するそうです。

 

ミラクルさんはYouTuberだった

ミラクル「LINEのID、何?」

 

なんとミラクルさん、LINEをやっていた。「LINEやってる?」ではなく、やってる前提で「IDが何?」とは、完全に同世代の会話だ。

 

ミラクル「YouTubeのチャンネルも持ってる

 

なんとミラクルさん、YouTuberだった。

 

そのミラクルさんの動画。商品レビュー、とかではなく寄付活動の様子を投稿しています。

ミラクルさんが特殊なケースかもしれないが、高塚くんによると知り合いのお坊さんからもLINEでしょっちゅう写真が送られてくるとのこと。厳格な戒律を守る一方で使うツールは意外にかなり世俗的、タイ仏教は柔軟だ……。

 

その後も托鉢をつづけるミラクルさん。

高塚くん「あれっ? ミラクルさんからLINEで写真が送られてきた」

私「……このタイミングで!?」

 

実際は歩きながら送っていたんだろうけど、臆せず言わせていただく。それ托鉢中にやること!?

段々と、タイのお坊さんというか、ミラクルさんの性格が分かってきた。僧侶として戒律を守る一方で、LINEで写真を送ったりYouTuberをやったりとなみなみと溢れ返る自己顕示欲。もともとギターの弾き語りをやっていたというのだから、それが自然体なのかもしれない。

修行の身と言いながらも、大らかに生きている印象がすごく強い。戒律こそ厳しいが、それ以外のことはかなり自由な、タイ仏教の厳しさとゆるさを垣間見た気がします。

 

托鉢とお寺は、タイ社会のセーフティネット?

1時間ほどの托鉢を終えて、お寺に帰ります。

あれ、何か違和感が……。

ここでサンダルを履くのか……。裸足で出掛けて家で履くって、おもしろいな。

お寺の敷地内に建てられた、建設途中のビルのような場所に進むと、

托鉢によるお供え物がすでに集められていました。

屋台の惣菜、伝統的な甘味、マックポテト、といった完全にカオスなラインナップ。お坊さんはここから自分の分だけ取って自室に持ち帰るそうですが、確かにこれらを常食としつつ1日1時間しか歩かない生活では、メタボ体型になってしまうこともやむなしです。

また、お供え物はお坊さんによる独占はせず、生活に困っている人はお寺に来れば食べられるし、なんだったら寝泊まりもできるとのこと。もしかしたら、タイにおけるお寺と托鉢は、信者が徳を積む方法である一方で、仏教を軸とした社会のセーフティネットなのかもしれませんね。

 

最後に3人で記念写真。

ミラクル「あ、お供え物だけど、一度開けたら全部食べてね」

私「マジですか……(めっちゃ辛い)」

 

托鉢とお坊さんについて書き切れなかったこと

・タイ仏教には227の戒律がある

・お金や女性に触れてはいけない、鼻歌を歌ってはいけない、音楽を聴くのも禁止

・トイレは座って行う

・高くて柔らかい場所で寝てはいけない

・托鉢は飲食物中心だが、ナマモノはダメ

・お供え物は観光客が渡しても問題なし、場所が分かっていればやってみよう

・お供え物には現金もあり、僧侶は触れられないのでお供や回収役の方が預かる

 

後日談

高塚くんが出家しました。

 

以前から出家を考えていたとのこと。3ヶ月経ったら俗世に戻ってくるそうです。

いつかまた、彼の出家体験レポートを書けたらいいなと思っています。

 

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編集:ノオト

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高塚くんの出家レポートはこちら!

タイのお寺で壮絶な修行!異国でお坊さんになった日本人青年の話

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