海外移住の魅力って、社会習慣がリセットされることだと思います。道の歩き方から、買い物の仕方、人との挨拶まで日本と違う。来たばかりの人は、それこそ子供と同じ。子供?…はじめてのおつかい、やろう!
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2015/03/17
海外移住の魅力って、社会習慣がリセットされることだと思います。道の歩き方から、買い物の仕方、人との挨拶まで日本と違う。来たばかりの人は、それこそ子供と同じ。子供?…はじめてのおつかい、やろう!
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2015/03/17
おつかいっていいですよね!
おつかいという言葉は本来、平安時代に神器を違う社へ移す行為を意味したそうです嘘です。
目次
「はじめてのおつかい」という、人気番組があります。
タイトル通り、初めておつかいに出掛ける子どもを追いかけて撮影するというドキュメントタッチの番組。
今でも不定期に放映されますが、主役となる子どもの奮闘ぶりには笑いもありつつ時には涙を誘います。
あれを、ベトナムでやったらおもしろいんじゃないか?
といってもベトナムの子どもにお願いするのもハードルが高そうだ。
現地に住んでいる日本人の子どもは、交通の安全面でヤバイだろう。俺が親ならまず断るわ。
しかーし!
外国に来ると、交通手段やマナーなどの生活習慣がガラリと変わる。
そういう意味では、外国に来たばかりの日本人は、いくつであってもそこでは赤ん坊と同じなのです。
未知の社会に対する適応力が高いほど、成長速度が早いといえます。
という訳で今回はー、
ベトナムに来て一ヶ月半のまつださんにご協力いただきました。
本人の希望により、これからニックネームのくんたろーで進めます。
ネルソン 「よろしくお願いします!」
くんたろー「はい、よろしくお願いします!」
ネルソン 「なんかこう、頑張るぞーみたいなジェスチャーをお願いできますか?(説明下手)」
くんたろー「あ、はい」
くんたろー「頑張るぞー」
ネルソン 「!?」
ネルソン 「なんか…ジェスチャー大きいっすね」
くんたろー「え、だって…」
江戸前寿司の原点回帰!?ベトナムで路上寿司屋が流行っているので、実際に回ってみた。前編 | トジョウエンジン
くんたろー「これ見てたらみんなそうだったから…べとまるってそういうサイトじゃないんですか?」
ネルソン 「そのサイトはべとまるじゃないんだけど、貴重な客観的ご意見をありがとうございます」
ともかくも!
ネルソン 「今日、くんたろーにはおつかいをしてもらいます」
くんたろー「はい」
買ってもらうものは…
ネルソン 「こちらです!」
くんたろー「イスですか?」
ネルソン 「はい、ベトナムの至るところで見かけるプラスチック製のイスです。デザインは不問ね」
ネルソン 「何処で買えばいいか想像つきます?」
くんたろー「うーん、全く分かりません」
ネルソン 「はい、そうじゃないと困るんです」
おつかいスタート!
…するやいなや、バサッと地図を広げるくんたろー。
その光景がなんだか個人的にはいろいろと懐かしく、目を細めてしまいます。
でも間違いなく観光客狙いのバイクタクシーに声を掛けられるので、このあとで下げてもらった。
くんたろー 「これ、何処で買えるか知ってます?」
勉強中の女性「知らん」
いきなり身も蓋もない返事。
この企画、精神強度が試されるのかもしれない。
ネルソン 「いきなり知らないって言われたけど…大丈夫?」
くんたろー「そうですねぇ、次はあの人に聞いてみようかな」
くんたろー、結構タフネスだ。
くんたろー「何処で買えるの?」
お姉さん 「うーん、あの人なら知ってるかな」
おっちゃん「おう!これならな!ベンタイン市場に行けばあるんじゃないか!」
あっ。…。
ちなみにこのおっちゃんのTシャツ、完全に、マクドナルドがクォーターパウンダーを販売した際に配っていたものだった。実はこれを目撃したことは今回が初めてではなく、街中ではちょくちょく見掛けている。
間違いなく、何処かで大量にこのシリーズのTシャツが出回っているのだ。
お前はベトナムを元気にしろ。
と言いたくなるけどしょうがないのである。
いつか供給元を暴くという企画をやってみたい。
という訳で、ベンタイン市場に移動。
西側の入り口は簡素なので、一見してベンタイン市場だと分からんなぁ。
中に入ればこの通り、休日なので賑わっています。
プラスチック製のイスは…
ある…!
大量にある…!!
が、そのどれもこれも売り物ではない。
あのおっちゃん、単純に「ある」という意味では言ったのではないだろうな。
くんたろー「何処で買えるの?」
おばちゃん「あっち」
相変わらず迷路のようなベンタイン市場を、言われたがままに進む。
くんたろー「ネルソンさん!あれじゃないですか!」
ネルソン 「せ、せやな…でもボッタクリ価格だと…ダメだから…」
おばちゃん「イスかい?2ドルだよ!」
くんたろー「ネルソンさん、どうですか!」
ネルソン 「(安い…)」
ネルソン 「(確かに安いが…!)」
ネルソン 「(見つかんの早い…!!)」
くんたろー「どうですか!」
ネルソン 「う、う~ん…」
ネルソン 「ダメ」
くんたろー「高すぎですか!」
ネルソン 「そうじゃないけど…」
くんたろー「じゃあどうしてですか!」
ネルソン 「とにかくダメ」
くんたろー「なんでなんですか!」
こんなに早く見つかると思ってなかったから、と正直に告白して二店舗目を探すことに。
ロケハンという言葉でしか知らなかった業界用語の重要性を身を持って思い知る。
※ロケハンとは、テレビ番組などで取材先を下見することです。
ここにも相変わらず、大量のプラスチック製イスとテーブルが並んでいた。
くんたろー「知ってる?」
青年 「ベンタイン市場にあるよ」
くんたろー「知ってる?」
女性 「ベンタイン市場にあるよ」
くんたろー「知ってる?」
女性 「ベンタイン市場にあるよ」
違う違う、そうじゃ、そうじゃない。
しかし、「ベンタイン市場以外で!」と伝えても理解されない。
そりゃそうだ、向こうにとっては、ベンタイン市場で買わない理由が何処にもない。
このままでは埒が明かない、というかロケハンをしなかった責任をヒシヒシと感じる…よし!
ネルソン 「ネルソンズヒント~!」
くんたろー「うわっ、いきなり何ですか!?」
ネルソン 「今からイスを売っている場所の方向を指さします」
くんたろー「あ、そういうことか」
ネルソン 「せい!」
くんたろー「振り下ろしただけじゃないですか!」
ネルソン 「あるんだよ!この先に!」
方向が分かれば楽勝じゃないですか?と再び足取りが軽くなるくんたろー。しかし、この先でイスを売っていたことは確かだが、もし今では無くなってたり店が閉まってたらどう謝り倒そうと考えだす私。
くんたろー「知ってる?」
おっちゃん「ベンタイン市場にあるよ」
くんたろー「知ってる?」
おっちゃん「ベンタイン市場にあるよ」
くんたろー「知ってる?」
おばちゃん「ベンタイン市場にあるよ」
いい加減にしろ(←それを言える立場じゃない)。
おっちゃん「おー、あっちや!あっちにある!」
くんたろー「あっちね!」
あっちへ向かうくんたろー。
ここでこの企画の狙いがやっと浮かび上がってきた。
ベンタイン市場はともかく、ローカルに入っていくと英語を話せる人も多くはない。
となると、細かい行き方は伝えられず、方角を指で差すだけになるのだ。
これなら、すぐに見つからないが、着実に目的地へ近づくことが出来る。
くんたろー「知ってる?」
おっちゃん「あー」
おっちゃん「あっちやな…」
くんたろー「あっちね!」
道中で、
何かの冠婚葬祭に遭遇。
セーラー服姿ということは海軍関係だろうか。
くんたろー「あれなんですかね?」
ネルソン 「頭に白いハチマキを巻いてるから、葬式っぽい」
くんたろー「へ~、そうなんだ」
ネルソン 「そうなんです」
ここで障害発生!
くんたろー「知ってる?」
青年 「あっち」
ダメだ…!
その方向は…ベンタイン市場!
一言だけでもベンタイン市場と言えば伝わるのに、こいつ横着しやがった!(何度も言うが、それを言える立場じゃない)
いや、でも、もしかしたらあるのかもしれない。その可能性は捨て切れない。
で、5分後…。
くんたろー「もしかして…これってベンタイン市場へ向かってますかね?」
ネルソン 「はい、そうですね。そうでした」
再び、軌道修正。
どうやらこの周辺は、目的地であるイス売り場とベンタイン市場の引力が拮抗している場所らしい。
サイゴン川に沿って歩く。
おばちゃん 「あー、これは近くにあるよ」
おばちゃん 「えっとね…」
おばあちゃん「嬢ちゃん!そんなことより茶しばいて行きな、嬢ちゃん!」
くんたろー 「いや、ごめん、そうじゃない、そうじゃないんだってば!」
おばちゃん「あそこ」
くんたろー「すみませーん!」
くんたろー「イス、売ってます?」
おっちゃん「え、欲しいの…?」
くんたろー「あ、はい」
おっちゃん「じゃ、35,000ドン(200円)ね…」
プラスチック製イス、ゲット!!
くんたろー「本当に売り物だったんですかね?」
ネルソン 「まぁ、買えたことには違いないからいいんじゃない」
*
ネルソン 「終わったところで、はじめてのおつかいはどうだった?」
くんたろー「暑かったですね」
ネルソン 「そ、そうですね」
くんたろー「でも、普段の生活ではまず行かない場所だったのでおもしろかったです!」
ネルソン 「そう言ってくれて良かったわー」
ネルソン 「しかし、あんなに早く見つかるとは思ってなかったよ…」
くんたろー「そうですね…私もどうしようと思いました」
ネルソン 「次回はベンタイン市場に無いものにしよう…いやでもそれって難しいな」
くんたろー「3つくらいにすればいいんじゃないですか?」
ネルソン 「それはいいね、いやでも経費が掛かるなぁ」
くんたろー「それは知らないですけど」
くんたろーにとっての「はじめてのおつかい」っていうより、私にとっての「はじめてのはじめてのおつかい」という感じでした。探し当てるまでに一時間くらい掛かりそうなモノの情報、お待ちしております。