以前から思っていました、ベトナムってドラクエじゃないか?と。山もあれば、洞窟もあるし、奇妙なダンジョンもあれば、ラスボスっぽい建造物もある。そこでドラクエ的プロットに沿って、ベトナムのいろいろなスポットを紹介します。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2018/09/28
以前から思っていました、ベトナムってドラクエじゃないか?と。山もあれば、洞窟もあるし、奇妙なダンジョンもあれば、ラスボスっぽい建造物もある。そこでドラクエ的プロットに沿って、ベトナムのいろいろなスポットを紹介します。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2018/09/28
ベトナムとのお付き合いもそろそろ7年になろうとしている私ですが、最近、「あること」に気づいたんです。ハイ、みなさん、深呼吸!心を落ち着けて…驚かないで聞いてくださいよ…。
ベトナムって…
ベトナムってさ、
ベトナムってね!
ドラクエじゃないですか?
目次
いやいや、「何言ってんだ」って顔してんじゃねぇよ。聞け聞け、聞けってば!寝静まれーい!!あ、違った、静まるだけ!寝ないで!聞いて!
この「事実」に気づいたのは、それはとあるベトナムのニュースが世界中を駆け巡ったことがきっかけでした。端的に言えば、「ベトナムがやべぇもんつくったぞ!」というもの。
それがこれ。なんだこれ。なんか良くわかんないけど、確かにやべぇな。
この橋(橋?)は、2018年6月に完成したばかりの「ゴールデンブリッジ」というもの。中部にある都市・ダナンにあるバナヒルズ、そこには世界二位を誇る全長6km弱と標高差1.3kmというぶっ飛んだケーブルカーがありまして(二位、というよりそれをあとから抜いた一位もまたベトナム国内なんだけど)、その乗った先にある「フランス村」というヨーロッパ風テーマパーク、そこに新しくできたのです。
詳しくは実際に行ったレポート記事を見ていただくとして、このヴィジュアルがすごすぎると世界中のネットユーザーが騒然。欧米では「ロード・オブ・ザ・リングだ!」だの、「ゲーム・オブ・スローンズだ!」だの、日本では「ドラクエだ!」だの、「ファイナルファンタジーだ!」だの、まーとにかくもファンタジーっぽいねと話題になったのでした。このへん、各国の傾向が見えてきておもしろいよね。
そこで我、思いました。
あれ、もしかして、これに限らずよ…。
そもそもベトナムってドラクエっぽくね?と。
これまで定番観光地には行ったのですが、この国って意外と(?)、山あり海あり谷あり砂丘あり洞窟ありジャングルあり…と、自然のバリエーションがすごいんですよ。そしてちょこちょこ、中二病とも言える伝説や史実もある。その点では各地に神話のある日本もぜんぜん負けちゃいないとは思っているんですが(中二的にも)、そこはやっぱり外国だからこそ感じるロマンってものがあるじゃないですか。
そこで今回はね、勝手にプロットをつくって、ドラクエ視点でベトナムを紹介しようと思った。
それでは、いきましょう!
あ、断っておきますが、プロットは中二病感全開です。
ドラクエってそういうもんだろ!(誰もキレてないのに逆ギレ)
北部の山岳地帯の街、サパ。
山間の村で平和に暮らしていた青年、「べとくす」。ある満月の晩、突如として、濃い霧が村全体を包み込み村人たちはバタバタッとその場に眠り臥せてしまう。なぜかひとりだけ助かったべとくす。そこで急いだ様子の妖精「ほりい」と邂逅。なぜあなたは平気なの?もしかして…選ばれし者…!?これは人類絶滅を企む「霧の魔術師」の仕業だと知らされるべとくす。「しかし、あなたは彼の唯一にして最大の天敵だった、勇者ロイの子孫」と説かれ、共に魔術師を打ち倒す旅に出たのだった。
繰り返しますが、プロットは中二病感全開です。
サパは北部の中国国境に近い山岳地帯にある街。勇者の旅立ちの地にふさわしい。
この撮影時期(11月中旬)はタッチの差で刈り取られたばかりでしたが、
ハイシーズンには棚田に稲穂がたわわに実り、ベトナムを代表する景勝地としても知られています。
バス到着後、「出待ち」する少数民族。
観光客に話しかけて、
いつの間にやら、しれっと旅の仲間のひとりに。クエスト終了まで付いてくるパターンですな。
サパ周辺には少数民族の集落も多く、観光客で賑わうため彼ら目当てに商売に来る人も多い。
しかし、このサパ…
6,7月頃に行けば(ほかの時期もかも)、霧まみれ。
エアコン(霧ヶ峰)みたいな語呂で言いましたが、こちらは快適どころか全身ビチョビチョで息もし辛くなるのでかなり大変。サパのすぐそばには、インドシナ半島でもっとも標高の高い「ファンシーパン」という、名前だけはなんとも可愛らしい山がありまして、そこでせき止められた雲がときおり一気に押し流されてくるのがこの霧になっている…と、想像しています(信用はしないでください)。
この霧っぷりがなかなか驚くほどで、このように3メートル先もよく見えない状態になるのですね(車やバイクの往来は相変わらずあるので危ない)。これがいかにも「幻術士に襲われた」という感じが出ていて、以前から「サパってドラクエじゃないか」という記事を書こう書こうとは思っていたのです。その意味では、ゴールデンブリッジを知るさらにもっと前からあった、今回の企画の元ネタとも言えます。とはいえサパは単体で見てもやはりドラクエっぽいので、いつかじっくり書きたいと思ってる。
霧の魔術師による攻撃が…!
中部の世界遺産の街、ホイアン。
眠りについた村人たちをそれぞれの家で寝かせ、妖精「ほりい」をお供に世界を救うべく故郷を旅立ったべとくす。まずは山を下り、旅人が集うことで知られる街・ホイアンへと向かいます。ここは、400年前には世界中から長い船旅を経て商人や旅人たちが訪れた街で、そのときほどの往来はなくなったものの、今でも旅の道具を揃えたい旅人たちが立ち寄る街として知られているのです。当時、世界を股にかけたという伝説的な旅人・タニヤジロベイの墓前で旅の安全を祈り、次の地へ。
ダナンと併せて人気のある中部の観光地、ホイアン。サパから行くといきなりベトナム全長の半分を踏破してしまっていることになるのですが、そこは無視してください。フィクションなので順路と実際の位置関係は関係ナシです。で、ホイアンは、実際に400年前に貿易港があったことから当時は各国の商人たちが暮らしていました。その中には日本もあり、最盛期には1000人の日本人が住んでいたとも言われており、あらゆる国の文化が入り混じった独特な街並みは今も残され守られつづけています。
旧市街は1999年に世界遺産に登録されたこともあり、それからはさらに保全も強化。その修繕などには日本人も大きく貢献したとのこと。クリーム色に塗られた壁や、たびたび襲われる洪水のためある、緊急時の出入り口を兼ねた二階の出窓が、特徴的です。
ホイアンの魅力はやはり夜。街中に飾り付けられたランタンが色とりどりに灯り、幻想的な雰囲気を味わうことができます。出店はないものの、天秤棒を抱えた行商や、路端で七輪を使って焼き鳥などを焼いている光景は、日本の縁日の雰囲気と近い。ファンタジー世界では夜のバザーといったところ。
川面に映るランタンの灯りがロマンチック。
灯籠売りのおばあちゃん。
そしてタニヤジロベイは、実在した商人の名前であり、また彼のお墓も実在します。
プロットには書きませんでしたが、彼の名前は悲哀の物語とともに語られます。
幕府の鎖国政策によって当時のホイアンから日本に戻ることを強いられた商人・谷。しかし、現地で別れた恋人が忘れられず、帰路の引き返そうとしたところ、病に倒れてそのまま亡くなってしまったのだそうです。聞く者を神妙な顔つきにさせるこの話。ここでこんなことを言うと、方方から水を差すなと怒られる気しかしないのですが、私は正直「うまく出来すぎじゃない?」と思うところ…。
その逸話が、日越英仏の四カ国後で刻まれた石碑。
とはいえ、ディティールはともかく、日本人の墓をその土地の人が400年に渡って守りつづけていることは事実であり、そっちを思えば素直に涙が浮かんでくるようなお話です。その墓守の家系が「実はホイアンに残した恋人の子孫でした」とかだったら、それはもう人類全員涙腺崩壊じゃないでしょうか。いや、さすがにないだろうけど。お墓はホイアン市街地から郊外にあり、初見だと分かりづらい場所にあるため、事前に正確な場所を把握しておかないと行くことは難しいでしょう。
砂丘で有名な、ムイネー。
ホイアンにて旅の準備を整えたべとくす。しかし今はまだ、霧の魔術師の居所も分からない状況。そこで街の酒場で仕入れた、「ダラットという街である魔術師が奇妙な迷宮を生み出し、棲んでいる」という情報。もしかするとヤツかもしれない…!ということで、いざダラットへ。しかしその前に、これまでにも数多くの旅人を飲み込んできたといわれる、広大なムイネー砂漠を渡らねばならなかった。
ムイネーは、ホーチミン市からバスで4時間ほど走った先にある海沿いの街です。
この街は、「黄色の砂丘」と「白の砂丘」と呼ばれる砂丘があることで有名。
前者は比較的市街地寄りにあり、中心地からバイクでも15分ほどで行けるものの、後者は3倍ほどの距離があります(ちゃんと見てない、感覚で書いてます)。しかし、離れているだけに広いというべきか、広いからこそ近くに街ができなかったからなのか、背景は分かりませんが、白の砂丘の迫力はそれはものすごく一見の価値あり。砂漠を生で見たことがある人にはインパクトが薄めかもしれませんが、それを差し引いてもやはりあれはベトナム、とくにサイゴン在住ならバスで4時間ちょいなのでぜひ行ってください。
現地の旅行会社であれば、日の出前にジープで白の砂丘に向かうツアーが必ずあるので、そこで申し込んでも良いでしょう。私は自由に撮影したかったのでバイクで行きましたが、ただ「砂丘を見てみたい」という場合は確実にジープツアーを選んだ方が吉です。いくらなんでも初めての場所では遠すぎました。
もちろん砂漠ではなく砂丘ですので、プロットに書いたように旅人を飲み込むようなことはありません。が、日の出のあとは観光客がサーッと引き揚げ、丘の向こうにいると誰からも見えず、そしてやはり南国の暑さは変わらないので、ひっそりと熱射病で倒れようものなら気づかれずふつうに死ねます。
黄色の砂丘で見かけたドローンカメラマン、彼の配役は「魔術師の手先のメカドラキー使い」で。
白の砂丘は本当にダイナミックで、とくに砂漠に行ったことがない人ほど琴線に触れるかもしれません。
同じくムイネーにある、妖精の小川。
ムイネー砂漠を抜けたべとくす。途中、お供の妖精ゆうじ…じゃなかった、ほりいの故郷である「妖精の小川」に向かいます。目的の迷宮は一度入ったら出られないという噂。その罠に陥らないよう、ほりいの師でもある妖精王の加護を受けに行くことになったのです。
「妖精の小川」とはいかにもですが、実際に存在する場所の名前です。
小川は小川なのですが、裸足になってパシャパシャと歩ける程度には浅い。その「お散歩」がそのままアクティビティになっています。
さらさらとした砂を踏みしめる感触はとても心地よく、また両脇は赤土の岩壁と林という自然物に囲まれ、異世界感が満点です。歩くだけがこんなに楽しいものかと驚かされます。
途中でお坊さんや尼さんともすれ違ったので、まるで三途の川を歩いているような気分でした(渡るんじゃなくて沿って歩いているのだけど)。
暗くなってきたので、さすがにこれはケガするかもと思って途中で引き返しましたが、そのつもりさえあればどこまでも行けてしまいそうです(いちおう全長1kmくらいだっけな?)。10年以上前に行った友人は「最後に民家があった」と話していましたが、妖精王の居城ってことにしておきましょうか。
ダラットにある、風変わりな建築家が設計したという「クレイジーハウス」。
妖精王から魔除けの加護を受け、噂の魔術師の元へ向かったべとくすとほりい。そこには、人が住むために築かれたとは思えない、ぐねりぐねりと曲がりくねった大きな家があった。それが、噂の魔術師が棲むというクレイジーハウス。魔術によって命を吹き込まれ、べとくすの行く手を阻むべく常に間取りが変わる家。あらゆるドアや引き出しから吹き出す炎や氷などのトラップにモンスター。しかし妖精王の加護により魔術を打ち破り、家の主を追い詰める。その正体は、霧の魔術師本人ではなく、その弟子だった。
クレイジーハウスはロシア育ちのベトナム人建築家が設計した建造物。常に増築中で、およそ分かりやすさを重視してつくられたものではなく、迷うように歩き回ることそのものがアクティビティになっており、ダラットでも人気の観光スポットです。ここだけやたらと訪れる人の国籍も多彩。
建築家と建物を取り上げた新聞や雑誌の切り抜き。
クレイジーという名にふさわしいというべきか、ここは本当に掴みどころがありません。ルートは入り組んでおり、建築家自身も把握できているのか怪しむレベル。
その雰囲気は、ディズニーランドのアトラクションとガウディが設計したアパート「カサ・ミラ」を足して割って、そこの狂気を振りかけた感じ。写真をご覧の通り、安全性のステータスを斬新さに割り振りまくっているので、めちゃくちゃ危ないです。いずれだれか転落して問題視されると内心思ってます。
そんなクレイジーハウスですが…泊まれます。
ただ、しょっちゅう観光客がうろついているので、心休まるときはないと言っていいでしょう。というより、心を休めたいならまずここに泊まろうとは思わないでしょうけど。
ところどころにモンスターもいるという、ドラクエ的親切(?)設計。
宝箱もありました。
なにかの酢漬けらしき。
ハノイの旧市街にあるホアンキエム湖、ここにはある伝説が語り継がれている。
ちなみに…ここだけは(定番の割に)手持ちの写真がないので、自前はこの一枚だけ。
クレイジーハウスの主を追い詰め、師である霧の魔術師の居所を聞き出したべとくす。しかし魔術師は常に「降魔のベール」をまとっており、それを斬り払える武器は、この国の民ならだれもが知るという伝説、ホアンキエム湖の奥底に眠っているという「玄武の宝剣」のみだという。湖の中に浮かぶ玉山祠に行き、亀の石像に触れるべとくす。すると湖のはずが波立って、全長5メートルはあろうかという巨大亀が出現した。「あの剣がまた…必要な時が来たというのか…」。
実はこの湖は、実際に「還剣伝説」というお話で知られています。
伝統芸術の水上人形劇でも、その伝説が演じられる。/©Greg Willis
15世紀にレ・ロイという人物が湖の宝剣を使い、当時のベトナムを支配していた明を撃退。その後、平和な時代になると湖から亀が現れ、「剣を返せ」と言って持っていったというもの(実は冒頭の「勇者ロイ」はレ・ロイから。たまたまロトと語感が近くなったけど)。そしてまた、「伝説上の亀じゃないか?」という大亀が1968年に見つかり、すったもんだあって剥製になりました(玉山祠で見られます)。
ホアンキエム湖そのものは、ハノイ市民の憩いの場として愛されているスポットです。朝から夜まで、老若男女が湖を囲むようにくつろいでおり、ゆったりとした時間が流れています。最近は週末の夜になると、その北岸のあたりが歩行者天国に一変し、屋台やらパフォーマーやらと、大変に賑わう。ハノイ観光には欠かせない場所です。
***
書き始めると興が乗ってきました。これだけ書いて、ようやく折り返しに来たところなので、ふたつに分けたいと思います。という訳で、つづきは後編!ラインナップは、こちらのスポットを予定しています。
・ハロン湾
・フォンニャ・ケバン国立公園のソンドン洞窟
・ダナンの五行山
・ダナンのドラゴンブリッジ
・ダナン、バナヒルズのフランス村
・ダナン、バナヒルズのゴールデンブリッジ
なんといっても、ダナンが一番ドラクエです。
お楽しみに~。いや、やっぱり、ハードル上げたくないから楽しむな~。