ベトナムに住む日本人でダーカウを見たことがない人はいないんじゃないでしょうか。よく公園で輪になって、羽根つきシャトルを蹴り上げている遊びです。そのダーカウを日本で広めようとしている上田さんにインタビュー。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/03/29
ベトナムに住む日本人でダーカウを見たことがない人はいないんじゃないでしょうか。よく公園で輪になって、羽根つきシャトルを蹴り上げている遊びです。そのダーカウを日本で広めようとしている上田さんにインタビュー。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/03/29
スポーツっていいですよね!
原始時代の出土品を見てみると、スポーツといった体を動かす遊びを人が始めたのは、丁度生活の糧を得る手段が狩猟から稲作に変わった頃だそうです。
つまり、暇を潰せる時間が生まれる生活様式に変わるまでは、娯楽のために身体を動かすという概念が無かったということですね嘘です。
皆さん、ダーカウってご存知ですか?
過去の記事でも何度か話に触れたことがあるので思い当たる方はいるかも。
バドミントンのシャトルの様な羽根が付いた重しを、落とさずに蹴り合う遊び。
これが、ベトナムでは国民的外遊びといってもよく、朝から夜まで子供から青年を中心によく遊んでいる様子を見掛けます。このダーカウ、本場のベトナムには協会が存在していたり、なんと驚くべきことに二年に一度、世界大会も行われているそうなんです。(バドミントンに近い形で、ネットを挟んで打ち合う)
で、今回の記事は、インタビューです。
相手は誰かというと、日本ダーカウ協会の総帥(会長ではないらしい)・上田修久(まさひこ)。
まだ23歳と若い青年で、彼は二年前に訪れたベトナムでダーカウに魅了され、日本に帰国してそのまま日本ダーカウ協会を立ち上げたとのこと。そして、野外での普及活動や、5年前から毎年代々木公園で行われているベトナムフェスでの実演活動を経て、現在は自身のダーカウ技術向上のためにハノイでダーカウ修行に明け暮れる日々を送っている。
日本の23歳といえば、大多数の同世代が社会人になって日も浅く、これから色々と仕事を覚えていこうという世代だともいえます。
彼をそこまで入れ込ませるダーカウの魅力とは!?
そして『普通』のレールを外しまくっている彼はどんな未来を見ているのか!?
ざっくり、色々と質問をしてみました。
***
ネ「お久しぶりです。」
上「お久しぶりです。」
ネ「上田君と初めて会ったのは、もう一年と七ヶ月くらい前?」
上「そのぐらいだと思います。2011年の9月ごろですかね?」
ネ「俺がベトナムに行くちょっと前だったからそれくらいだね。確か、某面白Web制作会社の方からの紹介で会ったんだったね。俺がベトナムへ行くと言ったら、ベトナム繋がりで面白い人と会ったので紹介します!って。ベトナムの話をするのに、何故かロシア料理のお店でボルシチを食べながら話した気がする。」
上「ロシア料理でしたっけ?笑」
ネ「ロシア料理だったよ!笑」
上「僕もちょうど、ベトナム関係の繋がりをつくっていた時期で、是非、会わせて下さいってお願いしました。初めて会ったのに、盛り上がりましたね!」
ネ「そこで『うえだーかう』って名前を付けて、いまだに一度も呼んでないけどね!」
上「その名前、ありましたね!是非、これから呼んでください!笑」」
ネ「呼び辛いから嫌です。」
上「笑」
目次
ネ「まぁ、それで、そのうちベトナムへダーカウ留学します!と聞いたまま俺が先にベトナムへ移住した。それからしばらくしてから上田君もやって来たんだったね。いつ頃だっけ?」
上「2012年の10月ですね!ネルソンさんが行ってからだいぶ後になりましたが…」
ネ「うん。じゃ、ここでもう一度、改めて聞こうと思います。何故、日本ダーカウ協会というものを立ち上げて、ダーカウ留学というものをやろうとしたの?」
上「まず、ダーカウ協会の立ち上げについてですが、僕が2011年の2月に初めてホーチミンに行きました。その際に、公園で謎の羽蹴り(ダーカウ)をしている様子を見て、羽根をお土産として持って帰りました。そして、日本で友人たちと遊んだら、とにかく面白い!!とハマってしまって。それから、日本にダーカウという文化が知られてないということで、この面白さをもっと日本人に知って欲しいと思い、協会という形で普及活動を開始しました。ダーカウ留学に関しては、一年半ほど日本で普及活動的なものを行ってきましたが、とにかく正確な情報が日本では手に入れられない。そして、普及者である自分自身が高いダーカウスキルを持っていないと説得力がないということで、本場のベトナムで留学しようと決めました。情報収集とスキルアップですね。」
ネ「ふむ。ハノイとホーチミンは早々に、ホイアンでかなり活動していたみたいだね。Facebookに動画を上げたりしていたから、そう感じただけなのかも知れないけど。」
上「ホイアンには、去年の11月に初めて行って、日本人の方達とダーカウをしました。ホイアンに住んでいる日本人の皆さんは繋がりが強く、(彼らが言うには)娯楽的なものも少ないらしく、ダーカウにすごく興味を持ってくださりました。僕自身がホイアンでかなり活動したというよりも、ホイアンの皆さんがダーカウにかなりハマってくださり、動画や写真をどんどんアップしてくれてます!めっちゃ有難いです!そして今僕は、ハノイに住んでダーカウ修行に明け暮れてます。」
ネ「ベトナムに住んでる日本人ってさ、面白い人が多いよね。中国やタイほど日本人コミュニティが大きくないから、みんな繋がろうとする。かつ、基本的に変わり者なんだよね。わざわざベトナムという、便利でもなく不便でもない場所を選ぶあたり。だから、ホイアンで盛り上がったということはすごく分かる気がします。」
上「面白い人多いですよ!毎日色んな日本人に会ってますが、本当様々な人生をおくっている人がいて、とても楽しい環境です!そして、僕みたいに『ダーカウ』しか言わないような奴でも、面白いと言って受け入れてくれる、とても有難いです!」
ネ「ほんまに『ダーカウ』しか言ってなかったら何処の部族やねんって感じやけどな笑」
上「まあ、そうですけど笑。会話は、基本ダーカウネタで入ります!笑」
ネ「日本で普及活動をするのではなく、ベトナムに来て現地の日本人に普及活動をするって構図が面白いね。単純に、日本にいる人からしたら、何それ訳分からんという印象がほとんどだと思う。ベトナムのスポーツ(路上遊び)と言われたところで、その目で実際に見てないからね。しかし、上田君は、実際に現地でダーカウに触れたからそれだけ熱い想いを持ってる訳で。そういう意味で、既にベトナム在住という接点がある日本人には、多くの日本にいる人以上に身近に、そして親身に協力してくれると思う。普及活動という点では、超強力な仲間を得たのかも知れないね。まぁ、そもそも娯楽が無いってのはあるけど笑」
上「最初のころは、ベトナムの日本人という意識は、正直あまりなかったのですが、繋がりが出来て行く中で、これはもっとこっちに住んでいる日本人に広められたら面白いと思えるようになってきました。住んでいる人なら、一度は路上でダーカウを見た人ばかりで、話が早い。そして、羽も手にいれやすいので、次会ったときには、体験してみましたよっと言われたりします。日本にお土産で買って行って貰ったりも。この繋がりは、日本に帰ってからもかなり強力なものになると思います。新たな仲間であったり、サポーターであったり。」
ネ「そういえば、このインタビューを書くために写真をくださいとお願いしたら、その内の一枚がベトナム人とのツーショットで聞くとベトナムのダーカウ協会会長だったんだね。」
上「そうですね。ずっとメールで連絡を取ってて、去年の12月にお会いしました。」
ネ「会うまでの経緯や、どんな話をしたのか教えて貰ってもいいかな。」
上「サッカーでいう、FIFAみたいなのがダーカウにもあって、その世界協会的なところのホームページにベトナム協会さんのメールアドレスが載ってて。日本にまだいるときに、そのアドレスに連絡しました。歴史やルール、大会の情報を教えてくれませんか?と。それから、返事が返ってきて、何度かやり取りしながら、実際に僕がベトナムに来たときに、直接会って欲しいと言って会いました。話の内容は、ダーカウの競技スタイル、ルール、ベトナムにおけるダーカウの立ち位置、大会の情報などですね。晴れて、本場ベトナムダーカウ協会からも、日本ダーカウ協会としてお墨付きを…正式に貰ったわけではないですが、日本で普及して下さることはこちらとしても大変嬉しいので、協力できることがあればいつでもしますっと言って貰ってます。」
ネ「本場ベトナムのダーカウ協会会長に認知して貰ったということはものすごい進歩だね。今の世の中、会いたい!というだけなら案外実現出来ちゃうもんね。」
上「そうですね。会いたい人に会うのは、とても簡単になってますよね。あとは、その後どう生かすかにかかってきますよね。」
ネ「ここまで聞いておいてなんだけど、上田君、今23歳やん。日本にいるほとんどの23歳は働き始めて間も無く、社会人として過ごしていると思うんだけど、その中でこのダーカウ活動を通して、どの様な展望で、どの様な人間になっていこうと思ってる?生き方自体は、今世間でも注目されている、分り易いから使うんだけど、いわゆる『社畜』という言葉に相反する自由に望むままの生き方だと思うんだよね。その人自身の度胸や行動力によるところだと思うんだけど、これからそういった生き方が増えていくだろうという予兆をメディアなどからも感じる。だが、まだまだ、さすらいのイメージが強く、それで生きていけると思うなよという一方の世間の冷たい空気も感じる。まだそのライフスタイルが確立、というか市民権を得られていないと思うんだ。だからこそ、上田君が考えている将来像を教えて欲しい。ベトナムでダーカウに魅せられ、日本で日本ダーカウ協会を発足し、ダーカウ留学ということでベトナムに渡り日本人にダーカウを教え自身も修行に明け暮れ、そして本場・ベトナムのダーカウ協会会長にも会うことが出来て遂には協力を取り付けることも叶った。そんなダーカウに特化した上田君の考える、将来像。」
上「ごめんない、書いてる途中でこれからダーカウ練習に行かなくてはなので、17時半ごろにまた送ってもいいですか??」
ネ「えっ」
イ、インタビューの最中でダーカウ練習だと…どれだけミスター・ダーカウなのだこの男。
あと原文ママで載せたけど『ごめんない』って何だ。
ちなみに、これはオンライン上でのチャットインタビューだったりします。
いきなりスクッと立ち上がって「ダーカウしてくらぁ!」となった訳じゃないよ、展開的には面白いけど。
~3時間後~
上「練習終わりました!」
ネ「おいっすー。」
上「あ、話してなかったのですが、ベトナムのダーカウ協会さんに紹介して貰って今は、専属のコーチに指導してもらってるんですよ!」
ネ「それメキメキつよなるなぁ。」
上「メキメキです。それから、最後の質問の回答です。本来ならもう、社会人2年目で、どんどん仕事を学んでいく年齢で、その時期に、わざわざベトナムまで来て、修行してっていうことをしたからには、やはり日本に帰ってからもダーカウの活動は、僕の生活における一番のものにしていきます。もちろん、どこか別のことでお金は稼がなくてはならないけど、いずれはダーカウがメインで食べていく。理想は、27~28歳頃までには。ダーカウを今後どう展開てしていくかってところで、小学校やサッカーチームや日越交流の団体とかにアプローチなどありますが、僕が一番やりたいなって思っているのが、ダーカウのパフォーマンスです。ネットを挟んで試合をする形式ではなく、魅せる、人をアッと言わせるパフォーマンスを創り上げていきたいです。それを僕が極めて、披露する⇒かっこいい、やりたいと思う人を増やす⇒教える⇒大会を開く…みたいな。もっと言ってしまえば、ダーカウ自体は世界的にみれば、まだまだマイナーで、日本のみならず、世界中に普及する活動にも携わりたいです。パフォーマンスを極めるという点で考えると、ベトナムのダーカウ協会さんや先ほど話した世界の協会さんの広告塔となって、世界の色んな場所でダーカウパフォーマンスを行う人になっていく。普及活動としても、仕事としてもパフォーマンスだけではまだ弱いかと思いますが、とにかく今は、これをしたいといった感じですね。ダーカウをパフォーマンスとして表現していく。」
ネ「なるほど。今って、クラウドファウンディングサービスがある様に、共感出来る目標を持って活動している人をお金だけじゃなく、色んな形でサポートしたいというニーズはあると思うのよね。俺についても同じことが言えるんだけど、上田君の活動が広がって広がって、きっと何処かの段階で、お金やアイデアをくれる人が現れると思っています。それまで、きっと色んな障害があるだろうけど、ずっと前向きに続けてられるかってのが大切だろうね。とはいえ、ただ頑張るだけでもやっぱりダメで、上田君自身が知恵を絞って、SNSなども上手く使って、ガンガン人に会っていって、自分の存在感を強くしていくことも必須。一線を超えた辺りで…爆発する様にこぞって人が集まってくると思うよ。まぁ、これはそのまま俺自身への自戒というか言い聞かせていることだとも言えるけど笑。」
上「丁寧にありがとうございます!心に刻みます!!」
ネ「上田君が魅せられたのなら、きっと他にも魅せられる人はいる筈。お互いに、頑張りましょう!」
上「はい、お互い頑張りましょう!!」
***
如何でしたでしょうか。
誤解を恐れずに言えば、上田君の活動を見て「賢い」と言う人は一人もいないと思います。
これがほんの5,6年前であれば、私が何らかのきっかけで上田君と出会い意見を求められれば、ダーカウ?訳が分からん、やめておけ…と言っていただろうと思います。
でも、今の世なら、もしかしたら。
主にSNSの流行と、シェア体質の人々が増えているという理由から、ドミノの様に何かが導線になって彼に対する需要が爆発するんじゃないかという気もするのです。彼の身の回りにいる数人は、馬鹿げていると思うかも知れません。
それは、数百人になっても、相変わらず全員が馬鹿げていると思うかも知れません。
しかし、今は国を越えて、世界中の人々に自身の活動が伝わり得る可能性を持っています。
国が変われば考え方も変わります。
特にダーカウはベトナムの国民的スポーツ。
日本でたとえるなら、スポーツではありませんが、母国に将棋という文化を広めたいと情熱ひとつで外国人の青年が来日した様なものです。
応援したくなるじゃないですか。
そうすると、もしかしたら、すげー!是非協力したい!お金だって出す!という人の耳に届く可能性だってある。
もはや自分自身の活動のポテンシャルは自分自身も身近な人も測れません。
ただ、情熱に従って、認知に知恵を絞って、あとはとにかく楽しく突き抜けること。
それが出会いを呼び、アイデアを呼び、生活に困らない程度には稼ぐ手段になるかも知れません。
今回のインタビューを通してそれが最も言いたかった!です!
上田君、なりたい様になってください。応援しています。ちなみに、SKETCH 4月号の『ベトナムの日本人』というコーナーで彼が取り上げられるとのこと。
あと、これ、動画です。ダーカウを楽しむホイアンの日本人達。
ちょっと待て、もはやこれReviveのPR動画じゃないのか笑。