インターンっていいですよね!
インターンはもともと、理容師や美容師の研修制度を指すそうです本当です。
私は今から6年前、27歳のときにベトナムに住み始めたのですが、当時は一番若いと言わないまでも、年下の人に出会う機会はほぼありませんでした。それが今や、27歳以下どころか、「入社後すぐに赴任になった」とか、「ベトナムの現地法人で新卒就職した」とか、若い方が増えました。中でも10代の方がいたりして…えっ、どういうこと!?と聞くと、大抵は「インターンシップです」と返ってくるんですよね。
そう、インターンシップ。
ベトナムを含むアジア地域での日系企業の進出が進み、受け入れられる体制が整ったということもあるのか、そこにさらに大学の教育プログラムの拡充や人材紹介会社の事業展開も絡み合って、今やベトナムに働く日本人学生がいることは当たり前。企業や学生から直接いろんな話を聞くので個人的には良いことばかりじゃないんだなと感じているのですが、それについてはまた書くかもしれないし書かないかもしれない。さて、あいかわらず前置きが長くなりました。
ベトナム最大のIT企業がインターンシップを行なっているという話
FPTって、ご存知ですか?FTP(ファイル転送プロトコル)じゃないですよ。もしベトナムへ進出を考えているIT系の方がこれを読まれており、「知らない」とおっしゃるならニワカです。出直してください。
いや、出直しては言い過ぎだけど、調べていれば必ずぶつかる会社です。ベトナム最大のIT企業で、いろいろやってる、日本で言うところのNTTグループ…のような存在。日本にも、東京、大阪、名古屋、福岡、これらに4つの拠点があります(これは取材時に知って私も驚いたんだけど)。
さらによく知りたければ
You Tubeに上がってる紹介動画をご覧いただくとして、「そんなFPTがインターンシップをやっていて日本の大学をすごい呼び込んでいるらしいからちょっと見てきて」と偉い人に頼まれて行ってきた、という話です。
リアルシムシティ、ダナンのFPT CityへGO!
場所はホーチミンの~…と思いきや、ダナンです!中部最大の都市と呼んでもいいでしょう、海山川と自然に恵まれた街で、リゾート的観光地としても知られるようになりました。
北と南にはどちらも世界遺産に指定されているフエとホイアンという街があり(写真は、ダナン→ホイアン→フエの順)、この5年ほどでダナンにおいても観光の要素も兼ね揃えた現代的な建造物が立て続けにつくられています。少し前になりますが、2014年にTripAdvisorが選ぶ「人気上昇中の観光地トップ10」で一位になったことからも、その注目ぶりが伝わるかと思います。
この中心地から車で20分ほど走った場所に目的地はあります。
近づいてくると…
看板には「FPT City」!City~~~???
はい。FPTは企業なのですが、なんと成長に成長を重ねてもはや企業の枠をはみ出していると言ってもよく、「東南アジアのシリコンバレー」として、オフィスエリアはもちろん、学校や公園などの生活に必要な施設を集約したひとつの街をつくろうとしています。「つくろうとしている」というのも計画発表は2011年と比較的最近のことであり(まだ何もない状態)、2016年4月に「FPTコンプレックス」という拠点的施設が完成したばかり。現状としては、だだっ広い土地に、その建物と、社員向けの寮がある、というくらいです。
で、今のうちに書いちゃうと、インターンシッププログラムを企画・運用している組織は、FPTではなくその関連組織であるFPT大学なんですよね。まちづくりだけではなく大学までも運営しちゃってると!このFPT大学は、ダナンのほかに、ハノイ、ホーチミン、カントーの国内の合計四ヶ所にあります。なお、大学の方がCityよりも先です(最初のハノイ校は2006年に開校)。
これが社寮、であると同時にインターンに来た学生のための宿泊施設。
周りが池と原っぱばかりのため、近代的なつくりなだけに今はちょっと浮いています。
こちらの施設はまたのちほど紹介するとして、今回センター長のHOANG氏に話を伺うことができました。
HOANG VAN CUONG氏。
部屋の入口には「DIRECTOR」という文字が。
ほかの部屋は「HOIAN」や「HUE」などの中部の都市名が付いていました。遊び心を感じられる。
FPT大学には世界中から年間1000人もの学生が学びに来ていた
ネルソン「今日はよろしくお願いいたします」
HOANG氏「こちらこそよろしくお願いいたします」
ネルソン「FPT大学は知っていたのですが、インターンシップをしていたとは初耳でした。日本の学生もよく参加されているそうですね?」
HOANG氏「はい。現在までに、信州大学、法政大学、文教大学や創価大学や九州工業大学に千葉工業大学などの10校ほどから来られています」
ネルソン「え!そんなに!?…それらの大学とのつながりはどうやって?」
HOANG氏「FPT大学と提携している大学です」
ネルソン「あぁー、そうか」
HOANG氏「日本の学生は年間100人から150人ほど参加していますよ」
ネルソン「一ヶ月10人近くと考えるとコンスタントに来てますね。日本だけですか?」
HOANG氏「いえ。日本からの参加者が最多ですが、ほかにも、ブルネイ、タイ、台湾、オーストラリアなどからも来ています」
ネルソン「へー、ブルネイ!観光のイメージが強くないからか詳しく知らないだけに、ここで名前が出るとは意外です」
HOANG氏「インターンシップは2014年にハノイから開始し、ハノイ校・ダナン校・ホーチミン校の全体では、年間1000人くらいの学生が参加しています。ダナン校が最も多く、500~600人ほどです」
ネルソン「そんな動きが…不勉強を思い知らされるなぁ」
参加者が交流するためのスペースもある、キッチンもあるのでここで自炊が出来る。
外に広がる牧歌的風景を見ていると、この街は今まさにはじまったばかりだとしているという状況がよく分かる。取材日は6月だが、新年の飾り付けがいまだにある点はベトナムあるあるということでご愛嬌。
窓際にはベトナム人なら誰もがルールを知っている?中国象棋の盤も。
ネルソン「では、そのインターンのプログラムってどのようなものなのでしょう?」
HOANG氏「まず、インターンだけではないんですよ」
ネルソン「おぉ!というと?」
HOANG氏「大きく3つのプログラムがあり、インターン以外に英語学習とスタディツアーがあります。期間も参加する大学側の要望によりさまざまですが、短いものであれば英語学習で二週間というものもあるし、長ければ四ヶ月というものもあります」
ネルソン「四ヶ月か…日本人って個人の休暇は短いイメージがあるけど、大学のプログラムならそれくらい長期も可能かもしれませんね」
英語学習の授業の様子。
スタディツアーは、およそ二週間とインターンシップよりも短いプログラム。地元の学生(FPT大学)との交流や、ワークショップ、観光ツアー、英語クラブへの参加、「VIPTALK」といわれる地元での有名人よりテーマ性のある講演会などが行われるとのこと。このプログラムは、ベトナムの人・文化・考え方について体験し、知識を深めることを目的としている。
事務室、これから雑貨店に変わるということで飲食物を中心に商品が置かれていた。
インターン先はIT関連のみならず、ダナンらしくリゾートホテルも。
ネルソン「インターンでの勤務先は、やはりFPTの関連企業なのでしょうか」
HOANG氏「技術専攻の学生であればそうですね」
ネルソン「であれば?てっきり、理系…もっと言えばエンジニア志望の学生のみ受け入れていると思ってたんですが、違いますか?」
HOANG氏「いえ、ほかにも経営学専攻などの文系の学生も参加されています」
ネルソン「へ~!その場合はどちらで就業経験を?」
HOANG氏「FPTが提携しているリゾートホテルなどで、フロントマンやレストランのスタッフとして働いてもらいます」
ネルソン「あぁ…そうか!確かに、リゾートのダナンではそういった場所には事欠かないですね。上手く出来ている」
HOANG氏「一方で、FPT関連企業の人事部やマーケティング部署という環境も用意してあります」
ネルソン「なるほど、IT企業がエンジニアだけで回る訳でもなんでもないですしね」
冒頭で書いた通り、ダナンは近年世界中からリゾートとして注目されている。その都市のホテルで働くということは、世界中からの宿泊客に対応する必要があるということ。フロントやレストランでは接客業という分類になるが、国や文化を横断して見えてくる課題は、社会に出て職場環境が固定されがちになると考えれば、学生だからこそ得られる希少な機会であることは間違いない。写真は実際にインターン先の候補である、「Almanity Hoi An Resort & Spa」(一枚目)、「Royal Lotus Hotel Danang」(二枚目)。
インターンシップでの活動の様子。
ネルソン「そういったリゾートである要素も、ダナンをインターンシップ受け入れの拠点とした理由なのでしょうか」
HOANG氏「それもあります。ダナンは、海・山・川があり自然に恵まれ住みよい環境だと世界で知られています。また、政府(ダナン市人民委員会)はダナンをEnglish Speaking Cityにしていこうと考えており、協力に積極的であるという理由も大きいです。また、インターンの参加者には、仕事ばかりでなく、週末などの休日には観光ツアーも提供しています」
ネルソン「観光ツアー!目的が就労体験とはいえ、観光地に来ているのだからそれはとても良いですね」
屋上から見られる景色。一見すると陸の孤島のようだが、職場へはバスが出ている。
ナイトライフを楽しみたい人には不向きかもしれないが、それは週末にでもどうぞ。
奥に見える山はかつて儒教徒の修行の場でもあったという五行山。
学びに来ているという点では相応しい景色かも?
屋上からパノラマモードで撮った風景。
HOANG氏「そのほか、世界各地から学生が参加しているということもあって、学生同士の交流イベントなども行っています」
ネルソン「あーそうか、同じ時期に集まっているのだからそれが実現できる環境にありますよね!ハブの役割を果たしている訳か」
HOANG氏「参加する大学側としても、その点を期待していると思いますね」
居住施設内にはビリヤードなどの交流する設備も用意されている。タイから来ている学生が遊んでいた。
こちらは学生同士の交流イベントの様子。
ダナンには、国内に3校ある、技術に特化した国立の工科大学のひとつであるダナン工科大学があり、IT立国化を目指すベトナムの国策として重要な柱を担っている。優秀なエンジニアが生み出される土壌としても知られ、現地にオフショア拠点を置く日系の大手IT企業も多い。今は「理系の学生はFPT関連企業で」ということだが、もしかしたらそのうち日系企業と提携することもあるかもしれない(とはいえ、FPTのメリットを考えるとなるべく社内で職環境を提供したいと考えることが自然だろうけど)。
日本の新築マンションのようなインターン向け居住スペース!
ネルソン「お話ありがとうございます。最後に、参加者にとって重要であろうことを聞きますが…おいくらなんですか?」
HOANG氏「プログラムによっては変わりますが、基本は一ヶ月1000ドルです」
ネルソン「ほー、へー」※聞いておきながら相場がよく分かっていない
HOANG氏「ただし、ビザ・航空券・食費については含まれていません。住居環境と、プログラム自体やそれに関わる内容です」
ネルソン「居住環境!見させていただいてもよろしいでしょうか?」
HOANG氏「どうぞどうぞ」
居住環境、これが…すごかった!
カードキーを使うタイプのエレベータで移動。
重厚感のある立派なドアを開くと…
あらやだ、すごいキレイじゃないか…!!
窓から内側へ向いたアングルはこちら。
窓からは聖地・五行山が毎日拝めます。
内観だけ見ると、日本の新築マンションの一室かと思いそう。長期間に渡って滞在する場合、文化的な特徴が強くなりすぎない近代的なデザインは、世界各地から学生が来ることを踏まえると、ストレスが掛からないという理由で適しているのかもしれない。サイズは2タイプ、一階につき29部屋、それが9階分になるので合計261部屋あるという。
住人の大半はインターンに参加している学生、FPTグループの社員とその家族だが、FPTは一般の…つまり外部の人に向けても販売している。法律上の理由もあって購入者はベトナム人に限られるが、購入したオーナーが投資目的であれば、両者の取り決め次第では外国人でも賃貸が可能かもしれない。冒頭で書いたように、今現在の周辺環境は寂しい感が拭えないが、FPT Cityが発展していく様子を見ながら暮らすというのもすごくおもしろそうだ、と思った(どこでも働ける人なら、だけど)。
また、このアパートメントのみならず、これから建設することを前提として戸建て住宅も販売しているとのこと。これらの詳細が知りたい方はウェブにいくらでも情報があるので、「FPT City」などで検索してみてください。まだ街がない状態での投資ということもあってか、アパートの部屋も戸建てもすごく驚きのリーズナブル価格でしたよ。FPTが外国人に向けて賃貸してくれるなら、ダナンの別宅みたいな形で借りてもよかった(と思えるくらいに安い)。まぁ、ないものねだりですけども。
最後に、案内していただいたFPTのお二人と!後のこちらの女性もインターンだと知って驚き。
そういえば、ここに至るまで私の写真を一切出してなかったですね。
ちゃんと行ってますよ!アリバイ!アリバイ!(何の?)
ベトナム・FPT大学のインターンシップに本気ぶりを見た
と、以上です!いかがでしたでしょうか?
今回の取材は私にとって驚きの連続でした。
一言でいえば、インターンシップに対する印象がかなり変わった。
企業と学生とのミスマッチはどうしても起こるとは思うけど、そうなったときに誰がどうやってフォローしてくれるか。人材紹介会社が間に入っているなら取り持てるけど、それが満足にされずトラブルにつながったという話も聞いているし、または学生から企業に直接問い合わせてインターンがはじまった場合にフォローする存在はいないことが多い(そういう学生ほど行動力があっておもしろい人が多い印象だけど)。そうした背景もあって、私にとって、(海外での)インターンって「どうにも危うい」という印象があったんですよね。だからこそ、その危うさをフォローできますよということが、インターンを紹介する人材紹介会社のアピールポイントになっていると思うのですが。
その点で、ベトナムと日本の大学がつながって、きちんと大きな網で学生をフォローできる環境はとても大きな安心材料になりますよね。FPT関連企業やリゾートホテルなどインターン先が豊富だということも、日本の新築マンションのような素敵な住環境があるということも、週末に観光ツアーを催行というサービスも、主催側に引き出しが多いとその分だけフォローも出来る。
「だからFPT大学のインターンシップに参加しましょう!」というつもりはさらさらないんだけど、インターンがただ企業と学生をつながって終わるというものではなく、インターン期間のすべての時間を学びがあり過ごしやすいものになるように、どこかが責任を持ってフォローするという姿勢は重要だなと感じました。とかなんとか言って、最後に真逆のことを言いますが、お膳立てされずに来る学生の方が能動的に動いている分だけ個人的にはおもしろいですけどね。中途半端なお膳立ては危ないよね、という話でした。