ベトナムの市場には、「心配になるTシャツが売られている」だって?なにそれ、いったいどういうことだ。実際に確かめに行ってみると…あ~!確かに心配なるわ!しかし、パロディとは愛なのです。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/17
ベトナムの市場には、「心配になるTシャツが売られている」だって?なにそれ、いったいどういうことだ。実際に確かめに行ってみると…あ~!確かに心配なるわ!しかし、パロディとは愛なのです。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/17
本記事は、2016年11月17日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。
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みなさん、こんにちは! ベトナム在住ライターのネルソン水嶋です。
どうして服にモザイクをかけているのかって? それはまたのちほど……。
目次
ベトナムのホーチミン市内で有数の観光スポット「ベンタイン市場」へやって来ました。
なんでもここに、心配になるTシャツがあるそうです。
心配になるって、破れてたり、スッケスケだったりするのか……?
まるで全貌が分かりませんが、とにかく確かめに行きましょう!
ベンタイン市場は“ホーチミン市の台所”とも呼ばれ、ありとあらゆる商品が売られています。お土産品を中心に、果物やお酒、コーヒー、布生地からスーツをつくってくれる仕立て屋、魚や肉などの売り場まで、なんでもござれ。
その一角を陣取るように存在するのが……、
Tシャツ売り場!
市場のなかでTシャツ売り場の店員の呼び込みはかなり激しく、個人的には観光客にとっての思い出づくりには最適だと思っています。ただ、腕を引っ張られたり、買わないとバカ呼ばわりされたりしますが、それもひっくるめて楽しめる人はぜひ通り抜けてみましょう。
歩いていると、「オニーサン」「ナニホシイー」「ナニカウノー」と呼び込みの声が聞こえてきました。一発で私を日本人だと見抜く店員さんの選球眼はいつもながらお見事です。
私「ここに心配になるTシャツがあると聞いたんだけど……」
店員「なにそれ!? そんなもの売るわけないじゃない」
店員「うちはiPhoneやスタバみたいなクールなデザインしか置いてな……」
私「これだよ! これこれっ!! これ~っ!!!」
そう、このベンタイン市場には、某スマートフォンや某コーヒーチェーンのロゴデザインをパロディ化したTシャツが堂々と売られているのです!
それらはだいたい、フォー(Pho)やベトナムコーヒーといったベトナムのシンボルをもじったもの。iPhoneは「iPho」に、スターバックスコーヒーは「ベトナムコーヒー」に、バーガーキングは「フォーキング」に……。
とくに国民食でもあるフォーへのこだわりは並々ならぬもので、ほかにもFacebookのパロディや、もはやパロディですらありませんが「Just Pho you」(写真左上)なんてものもあります。というか、iPho以外すべて無理やりじゃねーか!
店員さんに詳しく話を聞いてみよう。
私「こういうTシャツっていつから売られてるの?」
店員「私は5年前からここで働いてるんだけど、その頃はiPhoだけだったよ」
私「え、じゃあほかの……スタバとかバーガーキングは?」
店員「うーん、それぞれベトナムに進出したタイミングで一気に増えたかな」
ベトナムへのスタバの進出は2013年、バーガーキングは2012年。確かにどちらも5年前はベトナムに存在しなかったので納得がいく。なるほど……。
ということは、2012年に進出したファミリーマートのパロディ「Phomily Mart(フォーミリーマート)」のTシャツが存在していてもおかしくはない。いや、さすがに無理やりかコレは。
私「ちなみにどれが一番売れてるの?」
店員「全部売れてるよ!」
私「いや、その、じゃあ……どれがお姉さんのオススメ?」
店員「全部オススメだよ!」
私「らちが明かないな!」
なお、ベトナムのベンタイン市場で買い物するときは、高値で吹っかけられることがあるのでご注意を。
もし安く買いたい、または値切りたければ、少しでも遅い時間に行くのがオススメです。朝は「最初の客が高値で買うと幸先がいい」というジンクスがあるため価格が高くなり、夜は「少しでも売りさばきたい」という心理もあって安くなる傾向があるから。
「値段交渉は厄介だ」という方は、市場を囲むようにある店でどうぞ。ちょっと割高ですが固定価格なので、ぼったくられることはまずありません。
地図でざっくり説明すると、このへん。
ちなみに、固定価格のお店は天井から「FIXED PRICE」のパネルが吊り下げられています。
ベンタイン市場のパロディTシャツは、無理やり感もあってちょっと笑えるテイストでしたが、一方で若者に人気のお店では、オシャレ路線のパロディTシャツも扱っています。
こちらは、オシャレなセレクトショップやハンドメイド製品のお店が集うエリア「3A Station」。
そのエリアのとある店内で撮った写真が、冒頭のこちら!
スパイダーマン・イン・サイゴン……!?
敵を糸で絡めて戦うはずのスパイダーマンが、逆にベトナムの電線に絡まっているというパロディ。異常な数の電線ですが、ベトナムの電線はカオスと呼ぶに相応しい混線で知られているのです。
ベンタイン市場にあるTシャツはただのダジャレでしたが、ここまでくると立派にシャレの利いたパロディですね……。ちなみに、サイゴンはホーチミン市の旧名です。
こちらがベトナムの電線。スゴくないですか?
ほかにも、堂々としすぎてつっこむ隙すら与えてもらえない、『キャプテン・アメリカ』のパロディもありました。
フォーのパロディがここにも。ベトナム戦争を描いた映画『フルメタル・ジャケット』をベースとしていますが、もはや「フル」がどうやって「フォー」になったのか。これはちょっと無理やり感がおもしろい。
Tシャツ以外ではほかにも、
「ドラゴンボールZ・サイゴン」なるものから、
「アストロボーイ(鉄腕アトム)・イン・サイゴン」なんてものまで!
これらは欧米人の方が経営しているお店で扱われているものですが、なぜか最近になってベトナムのアイデンティティと有名漫画作品をコラボレーションさせたパロディTシャツやグッズが増えているようです。
ちなみに、この撮影場所は自宅。
はい、気に入ったので全部買いました!
パロディはオリジナルありきのため、もしかしたらこれを読んで「けしからん!」と思う方もいるかもしれません。ただ、コピー品ではなくどう見ても明らかなパロディ製品で、かつそこに作品とベトナムに対する愛も感じ取れるものであれば、微笑ましいひとつの文化だなと思いました。
ベトナム土産としてよく買われる、ノンラー(傘帽子)やキーホルダーなどもいいですが、これらのパロディ製品をプレゼントしても結構喜ばれるかも!?
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編集:ノオト