首を長くして待つっていうじゃないですか。首長族ことカレン族のみなさんは、そんな概念があるのかしら?わざわざタイの奥の方まで行って聞いてみました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/26
首を長くして待つっていうじゃないですか。首長族ことカレン族のみなさんは、そんな概念があるのかしら?わざわざタイの奥の方まで行って聞いてみました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/11/26
本記事は、2015年11月17日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。
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首長族の村にやって来ました。
本当です!
こんにちは、ベトナム在住ライターのネルソン水嶋です。
今回は国境を飛び越えてタイのチェンマイに来ています。
首長族、正式名は「カレン族」といいます。テレビで見たことがあったり、名前だけは知っていたりする方も多いのではないでしょうか。(※厳密にはカレン族の中の特定の部族です)
まぁ、とりあえずみなさん、今こう思っていませんか。
この子めちゃくちゃかわいくない!?
「首長族にはべっぴんが潜んでいる」とちょくちょくウワサに聞いたことはあったのですが、どことなく後藤真希に似ている気もするぞ! さて、この子の携帯番号も気になるところだけど(そもそも携帯を持ってるのか?)、まずはどうしてここに来たのかその経緯を説明しなければなりません。
目次
「首を長くして待つ」ということわざがあるじゃないですか。語源は「そういう姿勢で待つから」だそうなのですが、私はずっと思っていたのです。
長くならないよね?
待つときに首、長くならないよね!?
そんなかねての疑問と首長族の存在がぶつかり、「そうだ、首長族の人に待ってもらえばことわざの通りになるぞ!」と思い至った訳でした。つまり、ダジャレです。すみません! そんな理由で本当にすみません。
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さっそく調べたところ、タイ第二の都市・チェンマイの、市街地から車で一時間ほど走った場所に、首長族の方が住む「トン・ルアン村」があるということが判明。
現地のコーディネーターさんに同行をお願いして、チェンマイへ飛びました。
今日はよろしくお願いします!
はい、コーディネーターのサイントンです! よろしくお願いします。
その村って、首長族の人たちだけが住んでいるんですか?
いえ。ほかの民族も住んでいたり、自分たちの村から通勤していたりしますよ。
通勤……?
出稼ぎに来てるんですよ。首長族、カレン族も本来は山奥に住んでいます。
ちなみにその山奥へ行くとどれくらい掛かるんですか?
車で一日、ボートで半日、動物で半日です。
すごい掛かる……っていうか、動物で半日って斬新な表現だな!
生活圏が山岳地帯なので当たり前なのですが、車で行ける場所ではないので、主に象などの動物を利用するほかないらしい。
首長族に限らず彼らの文化や生活の保護と、観光資源として活用したいという業界の狙いもあり、2005年にオープンした観光施設が「トン・ルアン村」です。納得。
なみに本来の首長族の村は、タイとミャンマーの各地に点在しています。
到着。めっちゃのどか!
はた織りと鶏の鳴き声が聴こえる。
美しい水田風景、日本の田舎を思わせますね。
山岳民族の人たちはこんな生活を送ってますよ、ということらしい。
家に入っても村人たちはなーんもお構いなし!
もちろん入る前に許可は取っているのですが、みんなその場から動かず作業を続けます。
まるでドラクエの主人公にでもなった気分です(さすがにタンスは開けないけど)。
村には、えっらいふっとい襟巻きを巻いた民族衣装があったり……、
おばあちゃんの染織技術に驚いたり……、
ミノムシに心奪われる欧米人カップルがいたり……、
偶像崇拝のあとがあったり(違います)……、
竹馬の達人がいたりしました。
うわーっ、むずっ! これだけでもむずーっ!!
首長族に会いに来たんですよね?
あ、はい。
おっ、ついに首……! 長くないな別に。
彼女たちはカヤウ・カレン族。同じカレンの名前がありますが、いわゆる首長族ではありません。
ただし……、
足、めっちゃ締め付けてる!!
中国にも唐の時代に纏足(てんそく)という足を小さくする風習があったし、アジア圏においてそういったことのなかった日本の方が珍しいのかもしれないなぁ。
まぁ、ただ知らないだけかもしれないけど……。
耳のピアス穴? のインパクトもすごい。
彼女たちのほっぺに描かれているものは「タナカ」と言って、今でもミャンマーでは都市部でもよく見掛ける風習。
紫外線対策であるとともに、デザインはその日の気分で決めるとか。つまりオシャレなんですね。
さらっとミャンマーと書きましたが、彼女たち山岳民族の多くはそちらから移住してきたケースが多いそうです。このあたりの背景については国際問題にもなっているので調べてみてください。
いずれにせよ今このトン・ルアン村において、彼女たちとチェンマイ(タイ)は生活する場所と労働の機会を与え合う、相互扶助の関係にあると言ってもいいでしょう。
少女「一緒に写真撮りましょ?」
私 「えっ?」
日本語で話し掛けられて振り向くと、やっぱりカヤウ・カレン族の少女。
サイントンさんによると、この子はほかに英語タイ語フランス語と四カ国語を操るのだとか。
話せる言葉はあいさつと値段とさっきのセリフくらいだけど、この環境でそこまでできるのであれば、ちょっとした天才かもしれない。
ここまで来ると扱うお土産に首長族の木像が。
首長族でもないのに売っているあたり商魂たくましいが、そろそろ目的も近いということか……!
そろそろ行き止まりみたいだけど……ん?
い、いらっしゃったー!!
ついに会えたよ! 首長族あらためカレン族。
テレビでも見たことのあるお姿、ちょっと感動する。
なお、カレン族で首を長くする人は女性だけ。
幼い頃から首に真ちゅう製の輪を巻いて、首を長くするというより、顎を押し上げ鎖骨を押し下げることによってそう見せるらしい。
つまり、「首が長いというより超なで肩」ってこと。
サンプルとして置いてあった輪。5キロはありそうだ。
輪を取った状態の写真も置かれていた。
村一番の長い首を持つおばあちゃん。
首を長くする風習がはじまった理由には諸説あり、古くは「虎の牙から首を守るため」や「他の村の男に見初められないため」などがある一方で、現代に至ってもなおつづける理由には、「観光業界から首長手当なる報酬が支払われるから」というドライな意見もある。
いずれにせよ、カレン族の女性達にとって長い首がアイデンティティであることは間違いない。
それはそうと、あれだ!
首長族はどれくらい待ってくれるのか!
当初はカレン族の女の子とどこかに待ち合わせして、わざと遅れようと思っておりました。が、それができる環境かどうか現場に来るまで分からないし、普通に失礼だ。
文化の異なる環境で道理を踏み外すことはいろいろな意味で危ない。
だから、そうだ! お土産だ。お土産を選ぶのにゆっくりと時間を掛ける(結果、待たせる)くらいならいいんじゃないか?
この方法の最大の決め手は、お土産屋の少女がめっちゃかわいいってことだ。
そうと決めたらお土産を買おう(悩もう)!
と思ったが……。
わりと本当に……。
どれも欲しくないな……。
うーん。
どれにしよう。
たいして欲しいものもないぞ。
う、う~ん……。
よし! このスカーフにしよう!
えーっと、お金お金……。
どこにやったっけ……。
あれ……。
あ、あれれ……。
(チラッ)
……。
いつまでも待ってんな。こりゃ……。
私 「さっきお土産選びに結構時間掛けてたけど、待った?」
少女たち「待ってないです」
私 「え! まったく!?」
少女たち「まったく待ってないです」
おじさん、困っちゃうな……。
という訳で、5分程度のお土産選びくらいでは全く意に介さないカレン族。
それならばと、「待つ」をテーマにいろんな質問を投げかけてみました。
カレン族の時間の概念を丸裸にしよう!
ここで、こちらの少女の名前はマノーさんということが判明。
もうひとりはマギーさんでどちらも14歳、みんな「マ」からはじまるのか。
友だちと待ち合わせしたとき、どれくらいまで待てる?
待ったことなんてないです。
えっ、なんで?
近くに住んでるから待ち合わせとかする必要ないです。
じゃ、じゃあ……、
トイレに誰か入ってたとき、どれくらいまで待てる?
待ったことなんてないです。
えっ、なんで?
共同トイレが4つもあるから待つ必要とかないです。
じゃ、じゃあ……!
インターネットがつながらないとき、どれくらいまで待てる?
待ったことなんてないです。
えっ、なんで?
インターネットがないから待つ必要とかないです。
日常の中で待つことってないの?
ないです。
なんだよそれええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!
【結論】
首長族は待つ必要とかない。
ちなみに好みの男性は「優しくて太ってない人」だそうです。それは普通だな。
でも、本当は持ってるんでしょ? スマホ。
……持ってる。
なんだよそれ!
撮影日:2015/10/24
※この記事はYahoo! スマホガイド内「スマホの川流れ」コーナーにて配信された記事を再掲したものです
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編集:ノオト