人ひとりの人生を語るには、一時間くらいじゃ足りません。しかし、たとえば、一年区切りでそのしあわせ度を10段階のグラフにしてみると…?おもいのほか、おもしろいことに!というより、インタビューをお願いした三好さんの人生があまりに濃すぎました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/12/08
人ひとりの人生を語るには、一時間くらいじゃ足りません。しかし、たとえば、一年区切りでそのしあわせ度を10段階のグラフにしてみると…?おもいのほか、おもしろいことに!というより、インタビューをお願いした三好さんの人生があまりに濃すぎました。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/12/08
本記事は、2017年11月30日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。 サービス終了に伴い、許可を得た上で、べとまるにて公開いたします。
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こんにちは! ベトナム在住ライターのネルソン水嶋です。
いきなりですが、人の人生ほどおもしろい話はないと思っています。
しかし、頻繁にインタビューを受けるような著名人でもない限り、「人生について教えて!」と聞かれてスラスラと答えられる人は少ないはず。その人の人生を分かりやすく、そして、おもしろいエピソードを聞く方法はないだろうか?
そこで考えました……。
折れ線グラフにしちゃえば分かりやすくなるんじゃないか??
目次
まずは例として……私の人生、こんなグラフになりました!
どん底の10歳はいじめにあっていた時期、最高潮の30歳はとある賞を獲った時期、という感じです。
どっちも言ってて恥ずかしくなるな、コレ。
つまり、「よかった時期」と「悪かった時期」を数値化してグラフにすれば、その人の人生で印象深かったダイジェストシーンだけを聞けるはず! ちなみに最近、関西のテレビ番組で似た企画が放映されていたと聞きましたが、たまたまですのであしからず……!
友人の三好さん(仮名)に話を聞いてみましょう。現在27歳、私より6つ年下になりますが、以前から会話の節々で只者ではないと感じていたので、この企画にまさにうってつけです。
落差が激しすぎる!
こちら、数値が極端なところと、重要な場面を抜き出してみました。
6歳→両親の離婚(7点)
7歳→沖縄の離島へ移住(5点)
12歳→沖縄本島へ移住(6点)
13歳→非行に走る(7点)
14歳→初めての彼女ができる(8点)
14歳→子育てを経験する(4点)
16歳→バンド結成(8点)
16歳→初めてのライブ(10点)
16歳→自殺未遂(1点)
17歳→鬱になる(3点)
17歳→彼女ができる(8点)
19歳→霊に取り憑かれる(1点)
19歳→ゲーム廃人になる(10点)
20歳→腰を壊す(3点)
20歳→自転車で神奈川から大阪まで旅行する(9点)
21歳→バーテンダーをはじめる(8点)
21歳→ゲーム廃人になる(10点)
22歳→親が倒れて、沖縄に帰る(2点)
22歳→地元で就職(5点)
23歳→リーダーに昇格(7点)
24歳→ベトナムの法人立ち上げで現地へ単身赴任(8点)
24歳→結婚(8点)
25歳→長女が産まれる(8点)
25歳→家族がベトナムに来る(3点)
26歳→次女が産まれる(7点)
私「一言いいですか? 濃すぎです!」
三好さん「そうですか?」
私「これが7点と高めの数字なのはなぜですか?」
三好さん「父親からネグレクトを受けていたので、よかったなと」
私「お、重い……」
三好さん「その後、7歳の時に母と兄弟4人で関東から沖縄へ移住しました」
私「非行って、具体的にはどういう?」
三好さん「授業を受けなかったり、隣の中学へ殴り込みに行ったりとか」
私「ガチじゃないですか!」
三好さん「当時はとにかくおもしろそうだからやろう、みたいな感じだったんです。他校の学区との間にあるコンビニがどっちのものか決着つけよう、って」
私「すみません、コンビニはオーナーのものだから……!(笑)」
三好さん「それで殴り込みに行ったら、他校の先生に追いかけられて。逃げている時に喧嘩するつもりだったボスと出くわして、意気投合して仲よくなっちゃいました」
私「ギャグ調のヤンキー漫画みたいな展開を地でいってますよね」
ちなみに、当時不良だった人ほど成人式では大人しかったとのこと。
私「えー……と、『14才の母』的な話ですか?」
三好さん「姉の子どもです! 世話を見る人間が私くらいだったので。子どもは3人いて、料理をつくったりおしめを替えたりと、ひと通りのことはできるようになりました」
私「どんな14歳ですか……学校は?」
三好さん「非行少年だったのであまり行ってなかったです! それに家族の生活費や兄弟の学費を稼がなければいけなかったので、卒業後はすぐに働きに出ました」
私「兄弟の学費を稼ぐって、長男だったんですか?」
三好さん「いや、4人兄弟の末っ子でしたよ」
私「末っ子が家計を支えるパターンって初めて聞いた!」
私「16歳、激動すぎやしませんか? ここで最高潮とどん底を迎えている……」
三好さん「ライブで燃え尽きたことと、やはり金回りが悪かったこともあったのかもしれません。もう疲れたなーと思って、海が好きだったので、死のうと思って海に行きました」
私「でも、思いとどまったんですよね?」
三好さん「はい。浅瀬が広いので『長いなぁ』と思いながら歩いていたら、ちょうど携帯が鳴って、友人から『バンド組もう』って言われたんですよね。それで約束しちゃったので、自殺は諦めることにしました」
私「じゃ、その電話がなかったら?」
三好さん「死んでいたかもしれません」
私「ギリッギリで生きてますね」
こちらが、ある意味で思い出のビーチ。確かに浅瀬、広いな。
私「ここで突然、オカルトチックな話に!」
三好さん「それまでは幽霊を信じていなかったんですが、ある日ソファから動けなくなって、涙がぼたぼた流れて止まらなくなったんですよ。すると隣の中学だったボスが『お前憑いてるよ』って。電話越しにユタ(沖縄の霊媒師)から除霊方法を聞きながら、塩振ったりお経を唱えたりして祓ってくれました」
私「壮絶……だけど、なんでかつて仲よくなったボスが、さらっとその場にいるんですか?」
三好さん「あとから同じ職場で働く同僚になって」
私「な、なるほど。なんか見ました? 霊的なもの」
三好さん「見ました。自分の後ろに白っぽい着物を着た胸ぐらいまで髪のある女性が立っていて、めちゃくちゃ爆笑してましたね」
私「うお! 恨めしや〜とかならよく聞くけど、爆笑ってかえって怖いな」
私「なんで廃人なのに10点なんですか(笑)」
三好さん「楽しかったので」
私「それもそうですね」
三好さん「腰を壊して鉄筋工のような力仕事ができなくなり、最後の有休を使って自転車旅行をしながら、オンラインゲームで知り合った友人たちと会ってきました」
私「あぁ、いいですね。ネットで知り合った人と現実に会うって」
三好さん「それから電車で九州まで行って、初めて遊園地に行ったんですよ」
私「……遊園地、20歳まで行ったことなかったの!?」
三好さん「お話した通りの家庭事情があったので。ずっと夢だったパンダの動く乗り物に乗れましたが、同行した友人は若干引いてましたね(笑)」
私「すごく感動的な話なんだけど、確かに事情を知らなければそうもなるか」
数少ないという当時の写真。オンラインゲームで知り合った友人と(三好さんは右)。どんな状況だよコレ。
三好さん「それから東京に引っ越して、矢沢永吉さんがオーナーのバーで働きはじめました。本人に会えて、武道館のライブにも行けて、ちょうどその頃には兄弟たちも社会人になって実家への仕送りを終えた頃だったので、状況は好転していました」
私「好転したと思ったら……」
三好さん「そうなんです。東京で楽しく暮らそう、というタイミングだったので、この時ばかりは『俺はまた家族に縛られるのか……』と思いました」
私「15歳から21歳まで働き通しだったからこそ言えることですね」
三好さん「それで、地元で就職しないといけなくなりました。腰を壊しているので、サービス業以外のことをやってみたいと思って。ちょうどゲームをしながらプログラミングを趣味程度にやっていたので、未経験者でもOKという求人を見て今のIT企業に就職しました」
再び、東京から沖縄へ。
私「ここからトントン拍子でよくなってますね!」
三好さん「そうですね! かつて沖縄に住んでいた頃の幼馴染とたまたま近所のスーパーで再会して、付き合うようになって。2年後に会社から『ベトナムに行くか?』と聞かれた時に『行きます』と即答して、今の妻と『いっしょに行くなら結婚しようか』ということになりました。ただ、25歳の頃までは単身赴任として私だけがベトナムで暮らしていましたね」
私「なんで家族が来たのに点数下がってんですか(笑)」
三好さん「いやー、立ち上げ時から進めていたプロジェクトが終わって燃え尽きて……これからどうしようかなぁ、と思っていたときに家族が来たので」
私「でも次の娘さんが生まれて、家族が来てやはりよかった感じですね」
三好さん「そうですね」
ベトナムの地へ!
私「折れ線グラフにしてみていかがでした? かなりつっこんだ話を聞かせてもらいましたが」
三好さん「自分の人生を振り返ることってあまりないので、おもしろい経験でした! グラフにしてみると、高かったり低かったりで、自分がどんなことに喜んでどんなことに悲しむのかということに気づきましたね」
私「それはよかった。私もこんなに聞かせてもらえるとは思わなかったです。ありがとうございます!」
あとから知ったのですが、この人生を折れ線グラフ化するという手法、就職活動の際の自己分析でも使われることがあるそうです。あえて数字で定量的なものにすることで、自分のこれまでの人生を俯瞰できるのがいいのかもしれません。相手のことを理解するという点では、かなり有効ではないかと思いました。
みなさんも、ぜひ一度やってみてください!
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編集:ノオト