べとまるはレポートとユーモアを大事にしているところがありますが、外国人がその国のことを紹介するという点ではこちらの「iSenpai」にはシンパシーを感じます。今後どうなっていくのか、楽しみです。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2015/01/18
べとまるはレポートとユーモアを大事にしているところがありますが、外国人がその国のことを紹介するという点ではこちらの「iSenpai」にはシンパシーを感じます。今後どうなっていくのか、楽しみです。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2015/01/18
先輩っていいですよね!
輩(やから)という字は単独だと悪い意味で使われがちですが、誤用だそうです本当です。
あくまで関西圏の方言ってことですね。
べとまるのfacebookページを購読していない人は分からないと思いますが、実は一時帰国中です。
といってもこの記事を公開する数日後にはベトナムに戻っているのですが。
ベトナムに住み始めて3年と3ヶ月。それから初めて実家で年越しを過ごしました。
一週間の滞在中に何人かの友人たちにも会ったのですが、その中で初対面かつとても楽しみな人が一人。
それは一体誰なんでしょう、まずきっかけは今から一ヶ月ほど遡ります。
ネルソン「ねぇねぇ、ベトナム語で日本を紹介しているサイトってある?」
友人 「うん、あるよ」
以前から何度か話題に出していますが、現在私はベトナム人向け日本紹介サイトを計画しています。
その開発も兼ねたべとまるのリニューアルを進めている頃、参考になるサイトがあるか調べようと思ったのです。
そこで、ベトナム人の友人が口にしたサイト。それは…。
iSenpai(いい先輩)。
日本で生活する上で役に立つ情報をベトナム語で発信しているサイトです。
たとえば、青春18きっぷや、自動車免許証の書き換えや、結婚(入籍)の方法などを紹介しています。
ネルソン「おぉ、なんかすごい、一発で趣旨の分かる名前だね」
友人 「これね、私が留学していた時の先輩が運営しているサイトなの」
マジか!会ってみたい!紹介してくれ!
そう頼み込んで、大阪某所の喫茶店で会うことになったのです。
運営メンバーの一人、Khoaさんです。複数人で運営しているんですね。
このインタビューも、受けるかどうか運営メンバーで話し合って決めていただいたとのこと。
サイトを始めたきっかけ、運営体制、どういったサイトにしたいか、などのお話を伺いました。
ネルソン「Anhちゃん(友人)の先輩ということは、大阪大学ですか?」
Khoaさん「はい。大阪大学の日本語コースを一年、それから情報工学を専攻して三年です」
ネルソン「日本語コースなんてあるんですか!日本語学校に通って…という話は聞くけど、エリート!」
Khoaさん「いえいえ笑」
目次
ネルソン「複数人でとは聞いていますが、具体的には何人?」
Khoaさん「5人です。前まで6人でしたが、1人はベトナムに帰りましたね」
ネルソン「ということは皆さん日本に住まれてる?どうやって知り合ったんですか?」
Khoaさん「全員、大阪大学の同級生か、卒業や編入はしたけどもともと同じ大学にいた人です。ベトナム人は先輩・後輩のつながりが強いので、たとえ同期でなくてもお互いによく知ってるんですよ」
ネルソン「確かに、日本人でも同じ立場ならそうなりそうですね。それでは、その5人が執筆を?」
Khoaさん「執筆は専門の担当がいますが、記事を増やすためにも最近は全員それぞれで書いていますね。構築や運営は私ともう一人がやっています」
ネルソン「へぇ、そういえば情報工学ですもんね。得意分野ってことか」
Khoaさん「そうでもなかったですよ笑。みんな、勉強はしていてもサイトづくりは初めてですから」
ネルソン「あ、はい、全く同じことを自分にも言えますわ…笑」
※ネルソンは情報工学系出身です
Khoa さん「でも、やっぱりこだわっちゃうんですよね。記事を書くだけならTumblrでも使えばいいんですけど、そういうことを勉強しているとこんな機能はど うかあんな機能はどうかと付けたくなってしまう。だから、始めようと決めた時期から実際のリリースまでは半年以上も掛かってしまいました笑」
iSenpaiの記事。青春18きっぷの買い方や使い方を紹介。
ネルソン「そもそもどうしてiSenpaiのようなサイトを始めようと思ったんですか?」
Khoaさん「2013年の終わり頃、留学生が規定以上の時間働いて強制帰還になった話を知っていますか?」
ネルソン「知ってる!日本大使館がベトナム語で注意喚起をしていましたね」
同一文章ではありませんが、日本語による留学斡旋業者に関連する注意喚起
日本への留学を希望される方へ ~「仕事をしながら勉強ができる」ということを強調する留学斡旋業者には要注意~
Khoaさん「また、今年(2014年)にも、愛知でベトナム人による万引き組織の逮捕もありました」
ユニクロばかりを盗む 集団窃盗でベトナム人ら逮捕 愛知 – 産経ニュース
ネルソン「その組織は全員がベトナム人?」
Khoaさん「はい」
ネルソン「それは初めて知ったな…あ、最近、ヤギを盗んで食べたという事件もありましたね」
Khoaさん「ありましたね…苦笑」
窃盗容疑:除草ヤギ、食べられていた…ベトナム人を逮捕 – 毎日新聞
ネルソン「iSenpaiの誕生にはそれらの事件が背景にある?」
Khoaさん「はい。もちろん犯罪は許されないことなんですが、私達はその事件の原因のいくつかに『日本に住むベトナム人に必要な情報が足りない』ということがあるんじゃないかと思いました。少しでも生活に役立つ情報を共有して、『日本で生活しているベトナム人コミュニティの絆』を強くすることが出来れば、少しでも犯罪を防ぐことが出来るんじゃないかと」
ネルソン「すごく分かります、ものすっごく分かりますよ」
Khoa さん「そんなことを運営メンバーの一人と話し合って、事件の翌年3月には今のようなWebサイトをやろうと決めていました。それから構想を練って、メン バーを集めて、手探りでサイトをつくっていって、2014年8月にリリース。それから数ヶ月を掛けて記事を増やしていった…という感じです」
ネルソン「ん、いや待った!じゃあまともにサイトをリリースしてからまだ3ヶ月経ってない!?」
Khoaさん「はい笑」
ネルソン「たまげたなぁ…いいね!の数もすでに5000手前なんだけど笑(2014年12月時点)」
Khoaさん「お陰様で笑」
ネルソン「iSenpai誕生のきっかけ、全く以って同感です。ただ、ひとつだけ、付け加えてもいいですか」
Khoaさん「はい」
ネルソン「犯罪を起こす側…だけでなく、きっと呼ぶ側にも問題がありますよね」
Khoaさん「あぁ、そうですね。そうです」
ネ ルソン「ベトナム人だったり日本人だったりすると思いますが、日本の学校や企業に送り込んでその人数に応じて報酬を受けているエージェントがいる。真っ当 にやっていればもちろん問題は無いしむしろ意義深いことですが、報酬のためにロクでもないというか…きちんと人を判断しないで日本に増やすばかりではダメ だなと思うんです」
Khoaさん「両方の改善が必要ですね」
ネルソン「あと、Khoaさんがベトナム人だからおそらく思い浮かばないと思うのですが、それって回り回って日本人のリテラシーにとっても問題になり得るとも思っています」
Khoaさん「そうなんですか?」
ネルソン「ヤギの一件のインパクトが強かったんですが、ああいうことが起こると『ベトナム人はヤギを盗んで食べる』という印象が残ってしまう、一部に過ぎないのにベトナム人全員がそう思われてしまう」
Khoaさん「そうですね」
ネ ルソン「他の国だって同じ。そうすると、触れ合う前から特定の国の人に対して先入観を持つようになって、その国や個人を深く知ったり学ぼうと思わないよう になる。観光なり移住なり今後の日本に外国人が増えていくことは明白である中で、この問題を放置することは日本人にとって危険だと感じているんです」
Khoaさん「なるほど…そう言われると、ベトナムだけの問題でもないんですね」
ネルソン「iSenpaiの記事を見ていると、役に立つということに特化している印象を受けます」
Khoaさん「はい」
ネルソン「べとまるでは取材というか、ほぼ取材ばかりなんですが、それはやらないんでしょうか?」
Khoaさん「やらないです」
ネルソン「即答!どうして?」
Khoaさん「iSenpaiが目指す理想像として、いい先輩が、オリジナルで、信頼性が高くて、多くの人に役立つ、情報を共有するプラットフォームというものがあります。そこで取材は…ちょっと違うかなと」
ネルソン「何だか見えてきました。でも、顔を見せた方が信頼度は高まると思いませんか?」
Khoaさん「ライターのプロフィールで顔は見えるので、大丈夫だと思ってます」
ネルソン「そうかーもったいないなー、俺がやろうかなーやろうと思ってたしなー」
Khoaさん「笑」
ネルソン「テーマはどうやって考えているんですか?」
Khoaさん「カテゴリーが、生活、法律、社会、日本語…などがあって、そこからさらに別れます」
ネルソン「なるほど。カテゴリーがあって、それに沿った経験談を書き起こすという?」
Khoaさん「そうです。思いつかないとネットで調べて…というものも最近は増えていますが」
ネルソン「最近は私も似たようなことを考えるのでとても興味があるんですが」
Khoaさん「はい」
ネルソン「事業化はしないんですか?」
Khoaさん「それはまさに今、話し合っているところなんです」
ネルソン「く、詳しく!」
Khoaさん「事業として広告を掲載するのかしないのかと…掲載すると、もう決めましたが」
ネルソン「迷った風ですが、どうして?」
Khoaさん「やはり、ボランティアで始めたということがあります」
ネルソン「でも、続けていくためには、大きくしていくためには、お金は必要ですよね」
Khoaさん「広告収入が目的になってしまわないかということです」
ネルソン「あー」
Khoa さん「iSenpaiを始める前に、目的が似ているサイトが無いか調べたんです。あるにはありましたが、そこにはたくさんの広告が貼っていたり、またはお 店によるサイトでそのPRばかりでした。そこで私達は、お金が目的にならないようにしようと思ってボランティアで始めたという経緯があります」
ネルソン「痛いほど気持ちが分かるんですが、それでも本業でない限りはお金が必要になってきますよね」
Khoaさん「そうです。始めて、段々と分かってきました。だから掲載するという決断に踏み切りました」
ネ ルソン「結局、活動目的がお金というものに左右されなければいいと思います。それに、そんなことを考えるようになったという状況は、お金が必要となるくら いに活動が大きく広がっていったということなんだと思います。って、3ヶ月でそこに到達するって私からしたらすごいんですけど笑」
ネルソン「事業化して収益が出れば、原稿料という形でライターに還元するんでしょうか?」
Khoaさん「原稿料は、払わない方針です」
ネルソン「どうして?」
Khoa さん「あくまで先輩が後輩に役立つ情報を共有するサイトであってほしい。それに、ベトナム人は、対価が無くても情報を教え合うということをよくするんです よ。今は少ない人数で記事を書いていますが、ゆくゆくはそんな『いい先輩』が集まるプラットフォームにしたいと思っています」
ネルソン「記事の品質の担保は?」
Khoaさん「それは編集する私達の仕事ですね」
ネルソン「なるほど…慈善のコミュニティサイトという感じかな」
Khoaさん「それに、執筆にお金が絡むと、ウェブニュースみたいになると思っています」
ネルソン「というと?」
Khoaさん「記事が増えすぎてしまうというか…」
ネルソン「質より量を優先してしまう、ということかな」
Khoaさん「たとえば、PVがほしいなら、こんな祭があったとかいかにも日本らしいことを書けばいいと思うんです」
ネルソン「うん」
Khoaさん「だけど、あくまで生活に役立つ情報を発信したい」
ネルソン「でも、直接的に役に立たなくても、日本を知る上で良い情報もあるんでは?」
Khoaさん「はい。なので、そういう情報は掲載こそするけどメインではないということです」
ネルソン「あぁ」
Khoaさん「『iSenpai story』といって、新聞でいうところの社説ってあるじゃないですか」
ネルソン「社説とかよく知ってますね笑」
Khoaさん「運営する私達の意見や、すぐには役に立たないけどいつか役に立つかもしれないことをサイドとして掲載します」
ネルソン「では、発信するコンテンツは記事だけ?」
Khoaさん「それ以外も…Q&Aのようなものや、日本語学習、あとは動画などのサブページも増やします」
ネルソン「これから、おもしろくなりそうな気しかしないなぁ」
ネルソン「長時間に渡ってありがとうございました!」
Khoaさん「こちらこそありがとうございました!」
ネルソン「最後にお訊ねします、今後の課題と展望を聞かせてください」
Khoaさん「そうですね。課題は、やはりメンバーはほとんど学生なので、試験や課題が増えていく中で続けていけるかという心配はあります」
ネルソン「そうだった、学生だということを忘れてた…」
Khoaさん「そこで品質を下げてでも記事を書くのかどうか、広告掲載に絡んでもPV至上主義に走らないようにしていきたいです」
ネルソン「それは事業化の際に大きな課題になりそうですね」
Khoaさん「あとはさきほどのサブページを豊富にしていって読者を増やし、将来的にはベトナムと日本の架け橋となり、日本という国でつながったベトナム人の人達が交流できる場にしていきたいと思います」
ネルソン「ものすごく楽しみにしています!」
***
いかがでしたでしょうか。
インタビューを通して私がiSenpai(Khoaさん)に抱いた印象は、『志も構想もシッカリしている』というものでした。
冒頭で、私はこう書きました。
>私はベトナム人向け日本紹介サイトを計画しています。
これは当初、私自ら書いたものをベトナム語に翻訳して発信しようと思っていたんです。
しかし、べとまるは、日本人が見たベトナムを日本人に伝えるサイト。
その国を紹介するなら、読者となるべく同じ立場の目線で伝えるべきだと考えるようになったのです。
ならば、自分は環境づくりに回って、あくまでベトナム人のライターに書いてもらおう。
と、そう思っている時に教えてもらったサイトがこの『iSenpai』でした。
その時の私の率直な感想は『先にやられた!』です。
だからこそ、今回の帰国中に中の人と会ってみたかった。
自分が同じようなことをやる意義と余地があるものか確かめたかった。
そこで今回のインタビューを受けてその結論は、『ない』…むしろ応援したいくらいです。
それはそれとして、取材とか、笑いとか、やっぱり日本人が見たベトナムという切り口でべとまるを伝える意義はある。むしろ、iSenpaiがそれ以外の部分をやってくれたからこそ、自分だからこそ出来ることが明確に見えたので、かえって精度が増したかもしれません。
そもそもベトナム人に日本を伝えるためにはレポートサイトでなければいけないのか?ということも含めて考えています。ま、レポートは好きなのでやっぱりやりたいんですけどね。
iSenpaiには、今回のような志を持ったまま、発展していってほしいと思います!
なお、実は今回、iSenpaiでもべとまるについて取り上げていただいています。
ベトナム語ですが、Google翻訳にでも掛けるとざっくりと意味は分かるかも。
Vietmaru và người thanh niên âm thầm khám phá và tôn vinh vẻ đẹp Việt Namべとまると、ベトナムの魅力を発見する日本人青年
恐縮するほど良く書いていただきました…。