ベトナムの刺繍技術は個人的に世界一なんじゃないかと思っています。特にホイアンで見掛けた刺繍絵画はすごかった、立体物(壺)も一体どうなっとんねんというレベルです。XQは見学自由なのでオススメですよ。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/12/09
ベトナムの刺繍技術は個人的に世界一なんじゃないかと思っています。特にホイアンで見掛けた刺繍絵画はすごかった、立体物(壺)も一体どうなっとんねんというレベルです。XQは見学自由なのでオススメですよ。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2013/12/09
刺繍っていいですよね!
針で裁縫をする時に擬音をよく「チクチク」と表現しますが、これが歴史上初めて登場した作品は源氏物語だと言われ、源氏に恋する玉姫の乙女が裁縫をしている光景で使われています嘘です。
玉姫の乙女って何だよ、今初めて言ったよそんな単語。
皆さんは御存知でしょうか?ベトナムは、裁縫大国です。
一度は観光に訪れたことがある方なら、市場に並ぶ豊富な裁縫製品を目にしたことがあることかもしれません。
他にも漆製品などがあり、こうした産業もあってベトナム人は器用であるというイメージがあります。
そこで今回は、ベトナムの老舗刺繍製品店『XQ』へやって来ました。
ホーチミン市内のブランドショップが集まるĐồng Khởi通りにもお店を構えているこのお店。
ちなみに名前の由来は、創業者二人(夫婦)の名前の頭文字を組み合わせたということですって。
このお店は、ダラットを拠点とし、ハノイやダナンにも支店がある言わば刺繍製品のパイオニア。
刺繍って昔からあるんじゃないの?…いいえ、ちょっとワケが、というかレベルが違うんです。
論より証拠、入ってみましょう!
流石Đồng Khởiにあるというべきか、高級店らしいオーラが漂っています。
で、肝心の刺繍はというと…。
あれれ?
絵画ばかりやないの!
ノンッ!ノンノンノォーンッ!!
刺繍です!こいつら全部が・し・しゅ・う!!
帽子やバッグに取り付けるアップリケとか、はたまた体操服に縫い付けるゼッケンとか、そんなレベルじゃございません。紛れも無くアート!です。ていうか今読み返したらお店の看板にARTって書いてました。
刺繍芸術の分野ではかなり名前が通っているようで、ベトナム国内外の偉い人の写真が飾られていました。
中には、日本国大使が写り込んでいるものもありましたよ。
しかし、ベトナムの刺繍芸術はこれだけに留まりません。
一、ニ、そして四階は、豪華絢爛な部屋に数々の刺繍作品が飾られています。
はい!いくよ!!
これ、刺繍。
ほんでもってこれも刺繍。
そしてなんとこれさえも…刺繍です。
全て高い位置にあったので真正面から撮れませんが、凄みは十分伝わるかと思います。
針と糸でこんなものが出来るのか!と。
特に三枚目の煙草の煙のかすれ具合なんて再現性が高く、お見事なものです。
もう、ここまで来ると一周回って変態です。
途中工程を見せたくてこうしたのだろうけど、中途半端に生かされた人工生命体って感じ。
近くには虫眼鏡も置かれていて細部までよく見えます。目、血走っとるな。
刺繍の金魚!よく見ると…
のわー、立体です!
表から見ても裏から見ても立体です!!
これに至ってはもはや刺繍ちゃいますやん!壺ですやん!!
どうやって作るんだよ!検討もつかねーよ!!
蜘蛛ですやん!
虫ですやん!虫の標本ですやん!!
振り回し過ぎてピンが外れた虫の標本ですやん!!
マネージャーによると、この立体刺繍はここ二年で出てきた技術とのこと。
三階では、刺繍職人さんが次々と作品を生み出す工房となっています。
この工房も見学可能にしているからでしょうか、全員がアオザイ姿です。
よく目を凝らして見ると分かりますが、
下絵があります。
ひとつの作品が出来上がるまで、大まかに工程は二つ。下絵と刺繍です。
刺繍はご覧の通り職人さんの手によって紡がれますが、下絵は専門の職人がいます。
で は、刺繍職人は下絵を形に起こすだけなのか?…というと違う話で、下絵職人は本当に下絵のみつくり、刺繍職人は下絵から受けたインスピレーションから自由 に糸の色を選択するのです。つまり、線と色の分業。実際に作品をご覧になればよく分かりますが、このグラデーションの美しさというものも相当なもので、二 人の職人が持つ技術があって、初めて素晴らしい作品が生まれるものなのだとよく分かります。
マネージャー「ほな、やってみなはれ」
ネルソン 「え、いいの?」
実際に刺繍の工程を体験させてもらうことに。
なお、いきなり坊主になっていますが、実はかれこれ4ヶ月半前の取材だったりします。
前回が前回だけに驚かれたかもしれませんが、決して白髪の抜き過ぎでこうなったのではありません。
うーん、姿勢からしてプロと素人の違いが丸わかり!
刺繍はこうして右手で針を通し、
その下から、
左手でも通します。
キャンパスとなる白布を板挟みする形で、チクチクと選んだ色の糸を縫い付けていくのです。
そして、客が立ち入れる最上階、五階はちょっとした資料館になっています。
刺繍の下絵のモチーフとして集めたものでしょうか、
中国やフランスの文化が香る、昔のベトナムの写真が掲示されています。
この手の古い写真は、ホーチミン市内の博物館ではそれほど多く見たことがありません。
実 際に刺繍作品を買おうと思えば、絵画は数万円からとお高いですが、中にはブローチや刺繍を縫い込んだYシャツなどもあり、それらは数千円と比較的手の出易 い価格に設定されていました。ベトナムの卓越した刺繍技術が凝縮された名スポットですが、意外に観光地としては知られていない場所です。刺繍技術、刺繍作 品、そして昔のベトナムが分かる資料館と、間違いなく一見の価値アリなので行ってみてください。
なお、今回の取材の様子は、ベトナム国内最大手日系フリーペーパー・SKETCHで連載しているメコン迷走探検隊という漫画になっています。紙面の9月号はもう手に入らないと思いますが、Web版ならこちらで読めるので是非どうぞ。
***
店名:XQ Hand Embroidery
住所:37 Đồng Khởi, Dist.1
***