ベトナムの特撮を未来へ!「ヒーロースーツ職人」に会ってきた

ベトナムの特撮を未来へ!「ヒーロースーツ職人」に会ってきた

ヒーローっていいですよね!

実は私、高校生の頃にヒーローショウのアルバイトをやっておりました。あれってめちゃくちゃ大変なんですよね。週に二度の練習(無給)に参加して、週末の現場は早ければ朝5時頃に集合して、衣装などの荷物を詰めたら出発して、着いたら着いたでステージ脇に控室用のテントを設営して、殺陣(格闘シーンの演技)を決めて…今思えば何かとブラックでしたが、良い経験になりました。

…と、ここまで書いておいて嘘です。なんてこともないです。本当です。

 

前置きが長くなったが、本題。先日、こんなニュースを発見しました。

 

スーパーヒーローに憧れて、自作スーツで変身! [特集] – VIETJOベトナムニュース

※翻訳元ページはこちら

 

西北部地方ラオカイ省出身のドー・ドゥック・ムオイさん(男性・20歳)は、幼いころからスーパーヒーローに憧れていた。そこでムオイさんは、スーパーヒーローのスーツを自作することに決めた

ムオイさんの「変身」姿の写真がインターネットに掲載されると、1万7000件もの「いいね!」と数千件のコメントがついた。完璧にデザインされたスーツを称賛する声とともに、好きなことを行動に移すムオイさんに対する憧れの声も多い。

 

へ~、そんな人が!どれどれ、どんなスーツを…。

 

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ほうほう。

 

 

なんだこのハイ・クオリティ!!?

 

冒頭の理由からなにかとヒーローという言葉に関心を引っ張られるわたくし。
が、そもそも、これはすごい…。

以前にもベトナムのコスプレイベントを何度か取材していますが、レベルが違います。

 

コスプレ界に個性が光りだす!ベトナムのオタクの祭典・マンガフェスティバル2015 レポート

これは、これは話を聞きたい…聞きたいぞ!

 

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という訳で、ムオイさんに会いにハノイまで行ってきましたよ。

って、え?ふたり??分身??

 

ムオイさん「あぁ、今は二人組のチームで活動しているんです」
ネルソン「あらあら、そうだったんですね!」

 

改めて、「Transform Studio」(ユニット名)のムオイさんとチュンさんです。

 

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二人の作品が気になる方も多いと思うので、インタビューの間に挟んでいきます。

 

独学で「変身」!憧れが導いたクオリティ

ネルソン「なによりはまず、どうしてヒーロースーツをつくろうと思ったんです?」
ムオイさん「子どもの頃からアニメや漫画、特撮番組を見ていて憧れていたからですね。見るだけじゃ満足できなくて、高校生の頃からスーツの作り方を研究していました

 

ムオイさんの地元は北部のラオカイ省。中国国境付近に山岳地帯のサパという街があり、有名観光地でもあるため、ラオカイはその途中にある街として知る方も多いかもしれない。背景についてはチュンさんも同じ。きっと、彼らが見た番組の中にはインターネットに流れていたものもあっただろう。版権の話がある一方で、世界中のサブカルチャーコンテンツの人気はネット上での拡散が支えている実情もある。

 

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工房の様子。

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ヒーローのヘルメットがずら~っと!

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これらを、写真や動画を見て見様見真似でつくっているだけという!すごすぎない!?

 

ムオイさんは、服をつくって着るばかりでなく、ときどきボランティアで病院に出向き、入院中の子どもを喜ばせたりもしていたとのこと。それはもはやヒーロー活動といってよいのかもしれない。その後、ムオイさんはハノイの大学へ。日本で言う上京のようなものだけども…。

 

ネルソン「ハノイに出てきた理由は?」
ムオイさん「服の研究をしていた頃、とにかく材料が足りないと思うことが多かったんです。そこでハノイならいろいろと揃えられるということと、より素材やデザインについて学べる大学へ行きたかった」
ネルソン「といっても建築ですよね?」
ムオイさん「卒業後に建築の仕事は考えていないですね、あくまでデザインを学ぶという動機です」
ネルソン「初志貫徹だなー」

 

なお、ムオイさんが在籍している学科は「内装デザイン」。このとき、アパレル系の学校は選択肢になかったのか聞かなかったものの、実際に私の友人にも建築業界の人が多く、最先端という意味ではこちらの方が良かったのかもしれない(もちろんアパレル業界と比べた意見ではない)。

 

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チュンさんがイベントで披露したコスプレ、緊張して手が震えたとのこと。それは分からん。

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中国の時代劇が人気のベトナムでは、こういったコスプレも大人気!

 

ネルソン「大学かぁ、チュンさんは?」
チュンさん「私もムオイと同じ大学です。ただ、もともとはアパレルデザインを学べる産業デザインの大学を受けていたのですが、落ちてしまって、そこでハノイの建築大学に」
ネルソン「チュンさんとムオイさんは大学で知り合った?」
チュンさん「いえ、それが三年前、大学に入ってすぐに軍の規範を学ぶ機会があり(※)、そこで同じグループになったことがきっかけです」
ネルソン「え、じゃあ、活動とは関係ないところでたまたま知り合ったということ?」
チュンさん「はい」
ムオイさん「そして一年前、私がfacebookで制作に使う材料を探していたところ、チュンから連絡があって、そこではじめてお互いに同じような活動をしていると知りました」
ネルソン「同じ大学にいて、お互いに知っていて、活動を知ったのが最近ってすごいな!」

※ベトナムの多くの大学にあるカリキュラムだそうです、社会主義国家らしい。

 

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それこそヒーロー番組のような、相棒との出会い。認め合い、二人はともに活動することに。

 

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丁寧に並べられたヒーロースーツ。

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中にはネタっぽい写真も。

 

ニュースで取り上げられて3000通以上のメッセージ!一躍人気者に

ネルソン「ベトナムにもコスプレイヤーが増えてきたとはいえ、これほどのクオリティだとメディアの取材も多いと思うのですが、いかがですか?」
ムオイさん「新聞や、テレビニュースやネットニュースなどがありましたね。一度、取り上げられたあとに3000通以上のメッセージが送られてきて大変でした笑
ネルソン「なんかすごい、取材を受けていただきありがとうございます…!」

 

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ベトナムではアメコミも人気だよ。

 

ネルソン「今はお二人とも学生ですよね?」
チュンさん「そうなんです、だから大学の勉強も忙しくて」
ムオイさん「あとは学生でお金がないので、材料の購入も大変なんですよ」
ネルソン「あー、そうか…市場が出来上がっている訳じゃないからなにかと高くつきそう」

 

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ハリウッドらしい恐竜映画に出てきそうなものも!というかもう…本当にすごいな!
賞賛の言葉がすごいばかりで申し訳無いけど、それでもすごい!

 

ムオイさん「実は一ヶ月前に、会社を立ち上げたんです」
ネルソン「おぉー!?」
チュンさん「どうしても材料費が高くつくので、資金がないとなと。今後投資してもらう計画もあるので、まずは。といってもまだまだ勉強が忙しくて、つくっただけなのですが」
ネルソン「いいですね、心よりご成功をお祈りしております!」

 

未来のベトナムの特撮を、技術で支える!

ネルソン「お二人がつくっているヒーロースーツなど、特撮の本場といえば日本!といって問題ないと思うのですが、もし今後その本場で仕事できる機会があるとしたら、行きたいですか?」
ムオイさん「行きたいですね!ただ、長い時間ではなく、あくまでそこで学んだことをベトナムに持ち帰りたいと思います」
ネルソン「そうですね。本当、私としても、そうしてもらいたいと思います。となると、やはりいつかはベトナムでも特撮番組をつくりたいと思いますか?」
チュンさん「もちろん思ってます。僕らは、映画やドラマが発展していくためには、衣装や小道具などの技術の向上が欠かせないと考えています」
ムオイさん「今のベトナムは中国やタイからの輸入品がほとんどで、ベトナム人自身の手で高い品質のものをつくれていません。これから技術を磨き、特撮やコスプレを文化として確立させたいです」

 

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ありがとうございました!「Transform Studio」、ムオイさんとチュンさんでした。

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未来へ!

 

ベトナムで取材をはじめて5年以上の年月が経ちますが、やはり胸にグッと来る瞬間はいつでも人の意志を通して未来が見えたときですね。以前、別のウェブサイト(下にあるから読んでね)で漫画家を取材したことがありますが、どの分野でも黎明期の中にいる人の、憧れと情熱は並々ならぬ熱をはらんでいる。

先人の示してきた道のない国で、むしろ自分たちが道をつくっていくという行為は、本当に尊いことだなと感じています。もし業界関係者の方がこの記事をご覧になりましたら、ぜひとも紹介させてほしいです。直接連絡してもらってもいいけど、そのときはベトナム語で!

 

燃えよペンタブ!ベトナム漫画界は黎明期 – デイリーポータルZ

Transform Studio – Facebook

 

おまけ

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ヘルメットを装着させてもらいました。

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最後に渋谷でドリアンマンになった記事を見せたら、ほんの微かにウケてた気がしないでもない。

 

匂わないドリアンマンVS狂気の工作博士マドリア

 

そういえば今回、珍しく一切顔を出してないな。俺。

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