ホイアンは障がい者の生活や就労の支援団体がいくつかあるそうです。Duck Caféはその中でも数少ない日系で、カフェでは積極的に障がいを持つ方を雇用しています。そのマネージャー・野口さんへのインタビュー。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2014/07/12
ホイアンは障がい者の生活や就労の支援団体がいくつかあるそうです。Duck Caféはその中でも数少ない日系で、カフェでは積極的に障がいを持つ方を雇用しています。そのマネージャー・野口さんへのインタビュー。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2014/07/12
アヒルっていいですよね!
ベトナムで食べられる孵化寸前のアヒルの卵、これを「ホビロン」と言います。
ニワトリの場合、「オロロン」とお伽話で鬼が泣いているような名前になるそうです嘘です。
以前、スタディツアーの同行取材でホイアンへ行ってきたことは皆さんの記憶にも新しいと思います。
日本の学生をベトナム・ダナンへ放り出してみた!GETレポート~ホイアンに生きる日本人編~
その中でホイアンに住む日本人のお話ということで、野口かな子さんという方を紹介致しました。
彼女は、ホイアンで「Duck Cafe」というカフェを切り盛りするマネージャー。
このDuck Cafe、ただのカフェではありません。
積極的に、ベトナム人障がい者を雇用しているカフェなのです。
そのスタイルは日本国内で展開する「スワンベーカリー」に共通するものがあります。
野口さんとはツアー中では名刺交換をするくらいしかやりとりできなかったのですが、先日サイゴンに寄られる機会があったので、現地を案内しがてら、詳しくお話を聞かせていただきました。
と言いつつこの写真はDuck Cafeにて。はい、撮り忘れました。無念…。
ネルソン「お久しぶりです!」
野口さん「はい!お久しぶりです」
ネルソン「ホイアンでお会いした時は、話を聞く時間が取れず残念でした。今日はここぞとばかりに質問攻めしたいと思っております」
野口さん「はい笑」
目次
協力しながら切り盛りするスタッフ。スタッフ同士の連携が、とても大切。
ネルソン「まず、Duck Cafeはベトナム人障がい者の方を雇用しているということですが、スタッフは何名在籍していて、そのうち何名が障がいを持たれている方なのでしょうか?」
野口さん「現在は、知的障がいのあるスタッフが1名、聴覚障がいのあるスタッフが2名、そして健常者スタッフが5名…というメンバー体制で運営しています」
ネルソン「Duck Cafeという名前の由来は?」
野口さん「Duck Cafeは当初、スワンベーカリーの海外初出店という話だったんです」
ネルソン「なんと!…」
スワンベーカリー→300名の障がいを持つスタッフを雇用するベーカリー&カフェ。”障がいのある人もない人も、共に働き、共に生きていく社会の実現”という理念を掲げ、1998年6月に1号店がオープン。今では全国に30店舗近く展開している。URL
野口さん「結局その話は頓挫してしまったのですが、コンセプトは同じままで是非やりたいと。そこで、スワンベーカリーの由来と同じく、「みにくいアヒルの子」から取って「Duck Cafe」としました」
ネルソン「では、アヒル料理があるとかじゃないんですよね?」
野口さん「あります笑」
ネルソン「あるんだ笑」
野 口さん「ベトナムではアヒル料理は一般的ですが、調理方法が塩ゆでや塩コショウとレモンを使うくらいで、その食べ方だと外国人(日本人)にとっては臭みや 食感が気になります。なので、ウチでは、すき焼きにしたり、生姜焼き風にしたりと、味を変えて提供しているんです。他にも、中部都市・バンメトートから コーヒーを、京都の宇治にある農家さんから抹茶を直送してもらっています」
ネルソン「お腹空いてきた…ホイアンへ行った時はいただきますね!」
ベトナム語での手話の教科書。言葉よりもジェスチャーの方がなんとなく分かる…。
ネルソン「しかし、障がいを持っている方…だからこそ、人材を見つけることも大変だと思います。どうやってスタッフを集めたのですか?」
野口さん「ダナンに「希望の村」という日本人女性グループが運営している施設があるんです。そこでは、孤児や、聴覚障がいのある、高校生くらいまでの子どもが住んでいて、そちらから紹介してもらいました」
※希望の村→ダナンにある「生活困難な子どもたち」の養育施設。孤児や、聴覚障がいを持つ高校生までの子どもが支援を受けながら生活している。URL
ネルソン「あぁ、なるほど。それは心強いですね」
野口さん「はい」
ネルソン「聴覚障がいを持つスタッフとコミュニケーションの取り方で工夫していることは?」
野口さん「私自身もベトナム語の手話を勉強したり、口の動きやジェスチャーでやりとりしています」
ネルソン「もともとベトナム語が話せない場合、あまり苦労は変わらないかもしれませんね」
野口さん「はい。外国において、その国の言葉が話せない人はある意味では障がい者なんだと思います」
ネルソン「その言葉、重い…。ちなみにベトナムで障がいと聞くと、どうしても「枯葉剤」のイメージがつきまといます。その辺り、原因はどのようなものがあるのでしょうか」
野口さん「枯葉剤の影響ももちろんありますが、高熱が出たけど治せなかったというケースが多いようです。治療費が払えないなどの問題もあって、そのまま後遺症となって残ってしまいます」
ネルソン「その話を聞いて思い出したことがあります。南部にある村の家族のお父さんと話していて、「何か不安なことはあるか」と聞いたら、「病気になること」と話されたんです。地方だと、医療技術も発展しておらず、病気になると治療も簡単ではないと…もちろん、日本もかつては同じ状況だったのでしょうが」
野口さん「そうですね。地方に住む人にとって、病気の治療は死活問題だと思います」
ネルソン「また、ひとつ疑問に思うことがあって、サイゴンに住んでいるとそう障がいを持っている方と出くわす可能性が低いように思います。私の行動範囲が狭いと言われればそれまでなんですが。これって、地方から出てきてないのかなと思っていたんですが、どう思います?」
野口さん「サイゴンでは分かりませんが、ホイアンでは社会の中で健常者と同じ職場で働いている障がい者の方をよく見掛けます。ただ、その一方で、家にこもる人がいることも事実です」
ネルソン「その話を聞くと、Duck Cafeの活動の、社会的意義の大きさをより感じますね」
ネルソン「次は、野口さん個人にフォーカスを当てたいと思います」
野口さん「はい」
ネルソン「今はこうしてDuck Cafeのマネージャーとして働かれている訳ですが、どういういきさつだったのでしょうか」
野口さん「Duck Cafeをスワンベーカリーとして出店する予定だった頃、私の父と先方の社長とで話を進めていたのですが、父から「立ち上げに参加して、日本のテイストを入れてほしい」という依頼を受けたんです。それで、昨年(2013年)の6月末頃から来越して手伝うことになりました」
ネルソン「日本のテイストを入れるとは、メニューや内装に反映させるということですか?」
野口さん「そうです」
ネルソン「その依頼もなかなか難しいと思いますが、何かそういった勉強やお仕事をされていた?」
野口さん「はい。中学から茶道を学んでいて、その頃から日本の文化が好きだと自覚していました。大学でも、日本酒を学ぶ学科を専攻していたんですよ」
ネルソン「そんな学科があるんだ笑…飲食関係でも何か経験を?」
野口さん「はい。ファーストフードチェーン、懐石料理屋、イタリアン、日本茶専門カフェなどで働いていました」
ネルソン「では、「カフェに日本のテイストを入れてほしい」という話は野口さんにうってつけではないですか!」
野口さん「そうですね…確かにそういうことをやりたいとは思っていたんですが、絶対国内!と思っており、国外という発想は全くありませんでした。というより、外国に出たことはなかったんですよ。そう考えると、父はそのことを全て知った上で誘ったのかもしれません」
ネルソン「でも、考えてみると、今はマネージャーとして店の一切を切り盛りされてますよね?」
野口さん「そこにも色々といきさつがあり…そうなっています笑」
***
インタビューは、次回の後半に続きます。
野口さんが話された、「外国において、その国の言葉が話せない人はある意味では障がい者」という言葉が非常に印象に残りました。確かに、本当に、その通りだなと。
今からもう6年前くらいでしょうか、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」 というワークショップに参加したことがありました。これは視覚障がい者を持つ方と同じ経験をするもので、視力が全く効かないほどの暗闇の中を、聴覚や触覚 を頼りに歩いて行くというものです。屋内ですが、途中で小川のせせらぎが聴こえて来たり、林の中を歩いたり、お酒を飲んだりというアトラクションが満載。
10 人くらいで移動するのですが、そのガイド(ワークショップ内ではアテンドと呼ばれます)を任されてくれる人は、なんと視覚障がい者の方。普段からそういっ た生活を送っている方は、他の感覚が磨かれていて、あらゆる障害物をスルスルと抜けて案内してくれ、ただただスゴイと感心した記憶があります。
何かが足りなければ、何かが足りるもので、私はもうそこは個人の努力だと考えています。
全てのケースがそうだとは言いませんが…。
そして、そこに雇用を創出する野口さんの活動を、私は応援しております。
***
店名: Duck Cafe
営業時間: 9:00~22:00(ラストオーダー)/定休日なし
住所: 59 Nguyen Phuc Chu, Hoi An
電話: +84 5103919229
コンセプト: Friendly to people and the society ~人と社会に優しく~
Duck Cafeのイイところ
・Special Duck Food(あひる料理)
・Coffee and Matcha Latte from farmers(農家直送のこだわりのコーヒーと抹茶)
・Support people with disabilities(障がい者支援)