統一鉄道をご存知ですか?ベトナムを南北に走る鉄道、新幹線のようなスピードもなく、飛行機と比べてもお得じゃない。しかし、その存在が醸し出す旅情は一級品です!ベトナムのリピーター観光客、そしてまだ未経験だという在住者に、ぜひ体感してほしい!「世界の車窓から」の世界へ行ってらっしゃい!
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/05/19
統一鉄道をご存知ですか?ベトナムを南北に走る鉄道、新幹線のようなスピードもなく、飛行機と比べてもお得じゃない。しかし、その存在が醸し出す旅情は一級品です!ベトナムのリピーター観光客、そしてまだ未経験だという在住者に、ぜひ体感してほしい!「世界の車窓から」の世界へ行ってらっしゃい!
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2019/05/19
線路っていいですよね!
線路といえば通常2本のラインですが、世の中には1本線というものがありそうです。はい、「ありそう」と言いました。実際にあるかは知るワケないでしょプンスカプププププププププププププププ
目次
男ならだれでも乗り物好きでしたよね!?
なんてことを言うと今のご時世的によくないんだろうか…「女でも乗り物好きはいる!」って…いやそこまでじゃないよね、さすがにね。何にしろ、僕に関しては確かに乗り物好きでした。忘れていたと言ってもいいのですが、思い返してみれば、ワインレッドカラーの阪急電車の模型を買ってもらってキャッキャと喜んでいたり、JALの飛行機型の風船を買ってもらってキャッキャと喜んでいた過去があります。
でも時は経ち!今は雑誌のカバー!というエピソードはZeebraかKJか忘れちゃいましたが、というか私の場合ほんとに雑誌のカバーになってしまったのでこの冗談を言うか言わまいか葛藤したというどうでもいいことをここに報告させていただきます、が。いつしかそんな乗り物愛も薄れていってしまったワケですよ。なんなんですかねー、花金の満員電車で吐瀉物かけられたからかなぁ…まぁそれは作り話だけど…。
いずれにしても!そんな乗り物愛を忘れてしまった元少年たちに伝えたい存在があります…それは!
ベトナムの走る旅情…『統一鉄道』です。
これ、サイゴンとハノイをつなぐ鉄道で、なんと全長1726kmに及びます。日本でたとえるなら青森市から熊本市への距離みたいですよ、熊本市から青森市への距離に相当するそうですよ。長いですね~。そうなんです、ベトナムと日本はその縦幅っていうのか、長い部分の距離が近いんですよね。そもそもハノイとサイゴンってとんでもなく離れてるんですよ。俺も住むまでぜんぜん知らなかったけどさ。
で、移動にどれくらい時間がかかるか、日本だったら「6~7時間もあれば?」と思いますよね。ノーノー!ノノー!!30時間ちょいです。はい、そもそもベトナムには新幹線のような高速鉄道がまだないので、鈍行気分でそれくらいかかっちゃうんですね~恐いですね~べつに恐くはないんですけどね~。
となると、統一鉄道はあれなワケですよ。え?うふふ、もう分かってるでしょ…。
寝台列車!!
これもう旅情満点なんですわ!社会主義っぽい無骨なデザインの中で、大荷物を抱えた乗客がざわざわしてる感じっつうのかなぁ。世界の車窓の世界に飛び込んだ雰囲気なんです、ってたぶん統一鉄道も実際に登場してるはずですよ。では、では!今回そんな統一鉄道での移動する様子をお伝えしたいと思います。
まずは駅から。
ニャチャン駅~!です。
出発地はニャチャン、目的地はダナン。飛行機を使えばほぼジャスト1時間のこの2都市。統一鉄道だと10時間はかかります。そうです、なんと地上だと空の10倍もかかっちゃう!じゃあ価格は1/10になるの~?というと!やっすい航空券が2500円くらい!統一鉄道が4500円くらい!つまり…
ほぼ”2倍”になります!
ざわ…ざわ…(どよめく客席)
はい、そうなんです。飛行機の移動が1時間とはいえ空港の行ったり来たりでなんだかんだ5時間は掛かっちゃったりするものですが、それでも10時間の半分で済みますよね?でもなんで鉄道の方の価格が逆に倍になるのさこのトンチキ野郎っていうと、それはもうLCCを中心とした(というよりほぼLCCの)企業努力の賜物だといえるのかもしれません。逆に鉄道は国営なので、鼻くそほじりながら運行してるのかもね~(嘘です!すみません!盛り上げるためにと思って言いました!旅情をいつもありがとうございます国営鉄道さま!)。いやでもほんと、内情については一切無視して言ってます。だって分からんもん。
ちなみに統一鉄道も、ハードシート、ソフトシート、ハードベッド、ソフトベッド、それぞれの価格があるので、ひとえに倍ってワケじゃないのですが、平均するとだいたい倍になります。だから想像もふくむのですが、統一鉄道を使う人は、発着地と空港が遠い人、大量の商材を運びたい業者、あとは単に旅情を楽しみたい外国人を中心とした観光客だと思われます。繰り返しますが、想像です。
チケット販売窓口。
そのみっつめの需要のお陰で、チケットはオンラインでわりと簡単に買えます。最近はバスもふくめてけっこうラクになりましたよね。ベトナムに限らないかもしれないけど。ちなみに、国営のサダメでしょうか。サイトを見れば分かりますが、UI(ユーザーインターフェース)に妙にクセがあるものの、途中で「あ、これってそういう意味…」という感じで購入できるかと。できない人はネットを使いこなす意味でいろいろ危ないので、お近くの詳しい人に聞くか、最初から旅行会社にお願いした方が良い気がします。
チケットの項目に「外国人」と入っているところに清々しさを感じるね。
列車待ちの乗客が増えてきた。
もうイスが足らなくなってきた感じ。
そして平常運転通りの遅延の連絡、よく見るとワードの編集画面そのまんまやないか…。
最終的には50分ほど遅れて列車が到着、ただでさえ23時前到着の予定だったのでこれはちょっと勘弁してほしかったり。今はGrab(バイク配車アプリ)があるから、深夜のダナンでも移動手段がないって状況はないと思うけどさ~。あんまり深夜だと万が一にもトラブったときが恐いからね…。ま、いつものこと。
乗り込みまっす!
ザ・寝台列車!という感じの廊下を抜けて…
え~と、ここだ。
はいどうも、CM明けのノリでこんにちは!ローアングルの俺ですよ。
この寝転がるまでの写真を撮っていない理由は、実は部屋探しでまごついて。というのも自分の指定寝台に思いっきり人が寝ていたので、「え、違うのか!?」と戸惑っていた訳です。背景は単純明快、「勝手に寝られてた」ということになるのですが、鉄道に限らずバスでも飛行機でもそうしたパターンはものすごく多いので、皆さまに置かれましては同じ轍を踏まないようにしていただきたい(って防ぎようがないな)。なお、先方の「足が悪いから下で寝させろ」という割と真っ当な理由により寝台を交換しました。
寝台は狭くもなく、かといって広くもないという感じ。日本の布団の2/3の横幅といったところかな。
乗り出すと廊下が見えます(ドアは開閉できるが立て付けが悪かったので開け放しにされていた)。
ドアの上の謎スペースが気になる、右端の禁煙のパネルの色合いが好みです。
枕元の照明、これはふつう。
車窓に向かって見るとこんな様子です。
外の景色は、田園、田園、ひとつ飛ばして田園で、飛ばさなくても田園です。
ベトナムは国民の7~8割が農業従事者と言われており、ひたすら北進(あるいは南進)すると大半が農村なんだなということがよく分かります。外国人(日本人)が農村に住むって、農業関係の仕事をするか、NPOなどの国際支援関係でないとあまりないことですからね。ふとしたきっかけでベトナム人の友人の地元(田舎)に行ったりすると、新鮮ですよ!あるとき悩みの話になり、そこの家長のお父さんから「病気」という答えが出てきて考え込みましたもん。日本と違って、ちょっとした病気が命に関わってくるってことだから。あ、なお、ダナン~フエにまたがるハイヴァン峠を抜けるときの景色は美しいと有名。
同室の乗客がいなくなった頃を見計らって撮影。
と、ひとしきり室内は撮ったので、そろそろ外に出てみましょうか!
いい!いいですねぇ。
雨に降られて窓に付いている水滴がたまりません。基本的にはほの暗く、かつ照明はオレンジ。6年前にはじめてハノイの夜に降り立ったときがまさしくこんな色合いでした。当時は夜9時頃になると中心地でも人がササーッとはけてまさしくゴーストタウンの街並み、煌々とオレンジ色に光るナトリウムランプに寄りつくのは羽虫またはネズミだけ。今はハノイも、サイゴンにつづいて夜が長くなり、そんな様子は見られなくなってしまいましたが、統一鉄道の廊下にその残り香を感じ取れるとは思いもせなんだ。
田園田園田園、ひとつ飛ばして(飛ばさないでも)田園…。
いつまでも観れちゃうなー。
しばらくぼんやりしていると車内販売がやってきた。
そうそう、実を言うと統一鉄道に乗るのは三度目で、一度目も二度目も寝台が取れず(サイゴン→ダナン、ダナン→ハノイを同時に買った)、かといってスケジュールも動かせなかったので、下から数えて二番目のソフトシートの車両だったんですよね。それが上の写真。
移動式のコムビンザン(平民食、いわゆる大衆食堂)の販売も。衛生観点からか、揚げ物が中心。
この写真だとあまりおいしそうには見えないが、おいしかったです。
ソフトシートは、夜になると半端なく消灯されます。ライトがなかったらトイレ行けない。
そんなシート席、インターネットで調べたところではキレイになったらしいです。せっかくなので今どうなってるか見に行こう。寝台の客がわざわざ二等を見に行くのも物見遊山みたいな感じで趣味が悪いといえば悪いのかもしれないが…そこは外国人の好奇心ということで笑って許していただきたい。
廊下を歩く(車内販売が気になる少年)。
駅員用の帽子がなぜかここに…いい味は出ているが、被らないでいいのか。
ここで洗面台を発見、思った以上にキレイだなー。
と思ったらトイレ!これは逆にアレすぎたのでモザイク…車両によってアタリ・ハズレありますね。
抜けま~す。
抜けました~。
救急グッズ的な。
補助席かな?そしてまたしれっと駅員用の帽子がある。
抜けた先には…また赤いプラスチック椅子だ、なんだこれエンドレスか。
こんな調子で3~4車両くらい移動したのですが、どこまで行っても寝台車両。あまり荷物を放ったらかして移動するのもよくはないので、「もういいや…」という感じで寝台室に撤退しました。
そうして10時間が経ちダナン駅に到着…外はムワッと湿度が高く、一気にカメラ(と眼鏡)のレンズが曇る。
目的地の駅舎はニャチャンと違ってやたら現代的でした、さすがはダナン。金ありそう(偏見)。
と、またまたふわっとした感じで終わります。
すでに書いた通り、統一鉄道のチケットはオンライン上(サイト上)で簡単に買えます。統一鉄道は通算三回乗っていますが、この旅情が本当にたまらなく好きですね。だれでも発着は日中の方がいいでしょうけど、行き先によっては問答無用でヘンな時間に到着するので、半強制的に夜明け前だったり深夜ならではの雰囲気が味わえます。不便っちゃ不便なんですが、その独特の雰囲気がいいんです…。
シート車両はもう乗らないと誓っているけど、寝台は思っていた以上に快適でした。そら揺れるけど、ぜんぜん寝れます。むしろ寝過ごすのが恐いくらいに。短い滞在で効率良く回りたかったり、単にコストパフォーマンスを求めると、取るべき選択肢ではないでしょう。だからこそときどき「統一鉄道に乗った」という人を見ると、「この人、ベトナム好きなんだろうな~」とうれしく感じてしまいます(そうではなく乗り物好きの線もあるけど)。まぁ、ベトナムへの知識も、寝台鉄道への愛も、私などより数倍数十倍強い人は世の中にたくさんいますけどね。
Vietnam Train Tickets, Timetable, Schedules | Vietnam Railways
統一鉄道のサイトは上記です。仲介的な予約サイトなのかもしれませんが、「Vietnam Railway」「Vietnam Train」などで検索するとなにかとわらわら出てくるので惑わされがちです。こちらは私が以前から使っている公式サイトなので(万が一公式でないとしても損はしてないし三回中三回このサイトから予約してる)、こちらからご予約どうぞ。すでに書きましたが、UIはちょっと分かりづらいです。それが逆に「あ、国鉄だな」という謎の安心感にもつながったりしてますけどね。