ベトナムの個人経営の飲食店をめぐります、第1回はハノイの隠れ家的名店「岡ちゃん食堂」。とくに今(2020年3月29日現在)は、ベトナムふくめ世界は「コロナ禍」の真っ只中。ベトナム国内の飲食店は原則営業禁止に追い込まれ、唯一デリバリーは許されているという状況です。そんな観点でも取材。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/03/30
ベトナムの個人経営の飲食店をめぐります、第1回はハノイの隠れ家的名店「岡ちゃん食堂」。とくに今(2020年3月29日現在)は、ベトナムふくめ世界は「コロナ禍」の真っ只中。ベトナム国内の飲食店は原則営業禁止に追い込まれ、唯一デリバリーは許されているという状況です。そんな観点でも取材。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/03/30
2011年に私がベトナムに来た頃は、まだ日系飲食チェーンは進出してきていませんでした。そこで多くの在住日本人の憩いの場となった場所が、個人経営の日本食店。今ほどベトナム国内で日本食ブームが起こってなかった頃、「みそ汁をすすれる場所がある」というだけで心のよりどころでもありました。
さて、実を言うと今回の企画、もともとふつうにベトナムの日本食店めぐりを考えていたのですが、みなさんご存じ「コロナ禍」にベトナムも巻き込まれています。感染抑止の観点から都市部の飲食店は原則営業停止に追い込まれ、デリバリーのみはOKという状況です。
これがいつまでつづくか分かりません。しかし、そんな逆境に立たされている個人経営の飲食店を中心にオンライン取材、紹介していこうと思います。一週間足らずで規制を終える可能性もありますが、それはそれでいい知らせ。ま、そうなっても続けられない話じゃないしね。どうぞよろしくお願いしまっす。
今後なるべく数を取材したいので、会話のやりとりがあっさりしている点はご容赦ください。
目次
隠れ家的だが、隠れられないほどに有名店(左の人物がオーナー兼料理長の岡ちゃん)。
岡ちゃん食堂
住所:Ngõ 140 Giảng Võ, Giảng Võ, Ba Đình, Hà Nội
ふだんの営業日時:18~23時半/日曜定休
オーナー:岡崎琢充 さん
「『岡ちゃん食堂』と銘打ってはいますが、小癪にもコース料理をメインにやってまして、バランスよく、飽きさせない工夫をほどこしたコース料理を35万ドンで提供しています。なので、これという一品よりも、コース全体で満足していただけたらなと献立を考えています。」
「岡ちゃん食堂では、前菜、サラダ、焼き物、揚げ物、煮物、お食事、このような6点で構成しています。たとえば、『夏場は揚げ物よりサッパリしたものを出した方がいいな』と、ときには冷菜や酒肴に変えて、逆に冬場は鍋などをつくっています。その鍋は酒粕鍋といって、豚骨と鶏ガラをあわせた出汁を、酒粕とカツオでのばしたスープになっていて、ご好評いただいております。」
「東京の料亭で10年修業をしていまして、これくらいやっているとひととおりできるようになります。25~26歳の頃にはカウンターに立って刺身を切る花板と呼ばれるところにもいました。そのとき教えてくれた田端さんという先輩がいて、今はアメリカの一つ星レストランで働いています。一生の目標です。」
「2016年12月…と言ってますが、実は10月からやってます。まだベトナムに来て一年目の頃だったので、宣伝したところで意味がないと思い込んで早めにひっそりとオープンさせました。」
「さきほど話した料亭で修行していて、10年経ったのでほかのお店に移ろうかと考えていた矢先に、ベトナムで日本食レストランのマネージャーをやらないかというお話をいただいたことがきっかけです。ただそこは三カ月で辞めてしまい、日本に帰るか、ベトナムで雇われるか、起業するか、三択の中から最後を選び、『岡ちゃん食堂』をオープンしました。」
「そのお店は蕎麦屋で、コンセプトは素晴らしく、健康志向が強まるベトナムの人たちに向けてという試みでした。料理長ではなくマネージャーとして派遣されたのですが、私が経費を立て替えていたり、給料が三カ月未払いで信用ができなくなり。ただ、結果的には、辞める前に支払ってもらっています。」
「できるだけ現地の食材を使うことです。調味料は日本のものですが、基本的に食材はすべてベトナム産を使っています。あとは単純に、おいしさですね。外食でお金を払っておいしくないものを食べるほど、悲しい気持ちになることはありませんから。」
「苦労しかしてない気がします(笑)。急に停電になってお客さんのスマホの照明だけで営業したこともあるし、トイレが使えなくなるというトラブルも。本当に、懲りずに来てくれる方に感謝です。」
「なかったです。どんな名前をつけても『岡ちゃんのところ行こう』となると思ったので。有名になるのも目的のひとつですので、一回で名前を憶えてもらえるとありがたいですからね。初対面の方でも『岡ちゃん』って呼んでくれるんですよ。それだけでも良い店名をつけたなって思います。」
「デリバリーという今までやってこなかったものをやるきっかけにはなってます。しかし、料理人としては複雑な心境です。本来なら、一番美味しい出来立ての瞬間に食べてもらいたいのですが、営業停止中ですので、冷めても美味しいを心がけて作ってます。」
炊き込みご飯と豚汁(15万ドン)
鰻丼(20万ドン)
チラシ寿司(20万ドン)
チキンカツカレー(15万ドン)
ベトナムでの個人店は、もともと料理人出身ではないというオーナーも少なくない。その中で「東京の料亭で10年修行した」という確かな実績は大きな強みだと思います。岡ちゃん食堂には私も何度か行っていますが、これだけの絶品コース料理を35万ドン(およそ1600円)で提供できるというのは驚きだし、それはベトナム産の食材の魅力を引き出す岡ちゃんの腕あってのものでしょう。
だけど、それに並ぶ大きな魅力はやっぱり岡ちゃんの人柄。初対面の方でもついつい「ちゃん」付けで呼んでしまう、それくらいの親しみがにじみ出ています。初見だと場所は見つけづらいかもしれませんが、身近にきっと知っている人がいるはずなので連れて行ってもらおう。
0904629385(岡崎)
0989644590(黒川)
※どちらもベトナム国内の電話番号です
コロナによる営業停止、この状況がいつまでつづくか分かりませんが、べとまるではしばらくデリバリー紹介も兼ねたインタビュー企画をつづけます。時間をつくりつつなので即対応ではありませんが、ご興味のある方は問い合わせよりご連絡ください。ハノイ、ホーチミン市、ダナンを優先します。デリバリー展開をされていることは必須です。営業停止措置終了後はとりやめる可能性があります。