ダナンをふくむベトナム中部沿岸部は、かつてチャンパ王国という国でした。インド(ヒンドゥー)文化を受容したことから、聖地であった「ミーソン聖域」はまるで小さなアンコールワットのように見えるかも。ダナン・チャム彫刻博物館は、そんなチャンパ王国の文化や栄華がうかがい知れる施設。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/01/19
ダナンをふくむベトナム中部沿岸部は、かつてチャンパ王国という国でした。インド(ヒンドゥー)文化を受容したことから、聖地であった「ミーソン聖域」はまるで小さなアンコールワットのように見えるかも。ダナン・チャム彫刻博物館は、そんなチャンパ王国の文化や栄華がうかがい知れる施設。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/01/19
美術館っていいですよね!
美術館、資料館、迎賓館、などと「館」が付いていますが、これはもともと富豪の館で行われたことが背景にあるそうです嘘です。
目次
中部最大の都市、ダナン。最近ではGoogleが統計をとった「2020年のトレンド旅行先の」の世界No.1としても選ばれました。これからますます観光地として発展していくことでしょうが、ここをふくむベトナム中部沿岸地域は、かつてチャンパ王国という国だったことをご存じでしょうか。
観光地のひとつ、ミーソン聖域も遺跡のひとつ。
ダナンから南にある海の街、ニャチャンにあるポー・ナガール寺院もね。
現在のベトナムの統一国家としての形は、グエン王朝時代に築かれたと言ってもいいのですが、チャンパ王国はその王朝に最後に吸収された国。しかしそのはるか以前にあたる192年から、1832年まで存在しており、もし滅亡していなければ日本に次いで長い国だったということになります。
ミーソン聖域に行くとよく分かるのですが、少なくとも当時の文化としてはカンボジアに近く、これはカンボジアの前身であるクメール王朝と同じくインド(ヒンドゥー)文化を受容したインド化国家であったから。このあたりについてはミーソン聖域の記事で書いたのでご覧ください。書いてるうちにネットだけじゃなくちゃんと本読みたくなってきたな。オススメあれば教えてください。
ちなみにダナンの名前の由来も、チャンパ王国時代に呼ばれていた「大河の河口」をあらわす言葉が語源といわれています。
先に紹介したミーソン聖域はダナン観光のひとつとして知られており、行って戻るまで4~5時間程度かかるのですが、歴史を学んだ上で行かないとおもしろさが感じづらいと私は思っております。私はというか、私が思っております。
というのも、同じくヒンドゥー文化をベースとした寺院遺跡としてはより大規模なアンコールワットや、さらにそのクメール文化を受け入れたアユタヤ王朝の遺跡群があり、素人(私のような)が外観だけ見た印象としてはどうしても「小さなアンコールワット」。それだけに、詳しい人にとっては細かい違いが分かってむしろおもしろいんだろうなと思いますが。
で、本題。そんなミーソン聖域に行かずともチャンパ王国の文化を知れる場所が~!
ダナン・チャム彫刻博物館!です。
ドラゴンブリッジのすぐそば、ダナン市のセンター・オブ・センターにあります。
さっそく入っていくと…
そのへんに、
無造作に、
文化財が、
ゴロゴロしてる!!
これはミーソン聖域発掘時に、状態がよかったものを集めているとのこと。なので歴史的にかなり貴重なもののはずですが、ベトナムの博物館美術館ってこういうとこあるよね。いや、まぁ、俺が気にしすぎているだけで、これが意外と適切な扱いなのか…むしろ触れられた方がいいという配慮なのか…。分からんけど。ただいつもながら日本ではしないだろうなーと思う。
Image
そういえば同じくダナンの五行山でもウン世紀前の彫刻がポンと置かれていたことがあった。
ダナン・チャム彫刻博物館は、これといって派手な空間デザインなどはなく、
ただただ、
ふつうの広めの建物に、
文化財(彫刻)が置かれているだけです。
あとは発掘時の写真がパネル展示されているくらい。
で、私も特別歴史に詳しいワケではないというか、むしろ成績の悪い方だったので、ベトナムの、かつてあった王国の、とまで来ると高度なワケですよ。もう高すぎて見上げちゃう。敷居が高い。だもんで友人が遊びに来て、さらに時間が余ったときに連れてくるくらいの施設だったんですが、今回はそんなダナン・チャム彫刻博物館の意外な楽しみ方を発見しました。
おっぱい!
おちんちん!
いや、そんな小学生みたいなアレじゃなくてですね。
と言いつつ答えは当たらずとも遠からずなんですが。
当時の技術で彫刻に残すって、けっこうな職人さんがけっこうな労力を払ってやるようなものだったと思うんですよね。銅像だってそのへんの通りすがりの人をつかまえてつくるワケないじゃないですか。逆におもしろいけど。俺に技術があるならやってみたかったけど。フリー素材の人を銅像にするとか。いや今そんなことはどうでもいいんだ。
ということは、それほどまでに残したいものや考えが残ってると思うんですよね。
たとえばこれとか、分かりやすい。実在の人がモデルか分からないけど、こんな感じが当時の男性(女性じゃないよね…?)の風貌のベースなんだろうなと。そして、さっき書いたようにそのへんの人を残さないと思うので、その時代における美男子なり精悍な顔だったのだろうって。
これも牛がいたってことだろうし、
これにいたっては、
バッハが王国にやってきたってことですよねって違う。
余談ですが、チャンパ王国は歴史が長いだけに、思いっきり同時代にバッハ(1685~1750)は生きています。本当に余談もいいとこだな。
ミーソン聖域では建造物が中心で、彫刻そのものはあまり見かけないのですが、こちらの博物館では完全に近い形で移されたものも多いです。ガネーシャなんかは、チャンパ王国がインド文化を受け入れていることがよーく伝わってきますね。今でもその影響を受ける国は多いけど、当時のインドは文化的中心だったんだろうなということが伺えます。
また館内にあるものとしてはこちらが最大。祭壇のようなもの?でしょうか。当時はこの石像に色でも塗ってたのかなぁ。日本の寺院や仏像も色味としては地味ですが、もともとは派手だったと言いますよね。タイやミャンマーの寺院は、今でも金や極彩色が使われていますが。
それにしても、よーく見れば見るほどに、
精巧なつくりだということが分かります。
と、ダナンにあるからと思って珍しく博物館について書き始めてみたものの、学がないものでどう締めたらいいのか今路頭に迷いはじめているのですが、最後に私が勝手にえらんだチャンパ王国のゆるキャラたちをランキング形式で紹介して終わりにしたいと思います。
4位、「たたずみサル」。読んで字のごとくたたずんでいるだけのサル。特徴がないのが悩み。
3位、かわいいガルーダの「ガルちゃん」。バンジージャンプで躊躇する人を突き落としがち。
2位、ライオンっぽいが正体不明の「獅子もどき」。見た目はふつうだがポーズが最高、ちんちんを隠さない威風堂々とした振る舞いも人気(俺に)。
1位、「ミスター・スローモーション」。一見すると腕がたくさんあるように見えるが、ゴルフのスイングの連写と同じ仕組み。ただしなにをしているところなのかは本人にもわからない。
なんか怒られそうな記事書いたな。
ダナン・チャム彫刻博物館(Bảo tàng Điêu khắc Chăm Đà Nẵng)
住所:2, 2 Tháng 9, Bình Hiên, Hải Châu, Đà Nẵng