中部の世界遺産の街、ホイアン。ここにはちょっと異色な麺料理があります、その名はカオラウ。コシがない麺が主流のベトナムにおいて、日本のそのへんの麺より強いコシ!大好物なんですが、カオラウにはなんと伊勢うどんがルーツという説があるのです。人気店と交えて紹介。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/01/10
中部の世界遺産の街、ホイアン。ここにはちょっと異色な麺料理があります、その名はカオラウ。コシがない麺が主流のベトナムにおいて、日本のそのへんの麺より強いコシ!大好物なんですが、カオラウにはなんと伊勢うどんがルーツという説があるのです。人気店と交えて紹介。
ライター:ネルソン水嶋 公開日:2020/01/10
伊勢っていいですよね!
伊勢海老の名前の由来は地名の伊勢ではなく、磯に多くいることから「イソエビ」がなまったものだと言われています半分嘘です。
その説もありますが、一方で主産地の伊勢説もあるとのこと。
目次
前にも書いた、ダナン名物の汁なし麺のミークアン。
ミークアン~~~!!
すみません、好きすぎて叫んでしまいました。
そう、私はミークアンが好きなのです。ホーチミン市でも食べられるけど、やっぱり本場ダナンで食べる味には敵いません。なにより安いし。ちなみに、ハノイはフォー、ホーチミン市はコムタム(炙り豚肉のせごはん)、そしてダナンはミークアン、のお店があちこちにあります。
で、そんなミークアンに並んで好きな麺料理が…
カオラウ~~~~!!!
すみません、やっぱり叫んでしまいました。だって好きなんだもの。
こちらはダナンから車で南に40分ほど走った先にある、旧市街が世界遺産にも登録されている街、ホイアン。の、名物麺料理です。しかし、さきほどのダナンと違って、カオラウだけはホイアン以外で食べられません。いや、ホイアン料理店もあるのでメニューにあるとは思うんですが、本物ではないのです。
なぜなら、カオラウはホイアンでしかつくることができないから!
というのも、麺をつくる行程でホイアンの井戸からくみ上げた水を使っているんですね。これはアルカリ性の水で、ラーメンの製造で使う”かん水”と同じようなものだそうです。麺を湯がくときに重曹を入れるといい感じに麺がちぢれるというテクニックがありますが、これはかん水と同じ効果だとのことなので、そういうものだと思ってください(説明を投げた)。ちなみに今では井戸水のほか、そのかん水も使うと言われています。このへんハッキリしなかったので、今度現地で調べてもおもしろいかもしれない。
そんなカオラウの有名店がこちら、”Cao Lầu Thanh”。
軒先のショーケースにあるフォントが好みです。
入って右手が調理場になっていて、具材切り部隊、麺盛り部隊、チャーシュー並べ部隊、で別れて作業中。部隊と言いつつひとりずつでしたけども。なお、見てお分かりのことだと思いますが、けっこうな高さのローカル指数です。お客さんがたくさんいたので自重しましたが、たしかコンクリづくりの床にアルミ製の円卓がポンポンと置かれているだけの簡素なつくりでした。
そ~し~て~!
ドドン!
カオラウでございまーす!じゅるり…。
うどんくらいの太さ、しかし角の丸まったほとんど正方形の麺に、レタスとドクダミ、チャーシュー、揚げ餅が並べられています。これ書いてんの24時よ、腹減った。
というワケでさっそく!
ズッ!
思わずニンマリと笑っちゃう…!!
くらい、おいしいです。
ベトナムの麺料理って、フォーをはじめとしてコシがないものが多いんですよね。丸亀製麺さんはベトナム進出にあたってうどんのコシを弱くしたくらいで(この話についてはデイリーポータルZで書いた取材記事をお読みください)、逆に日本向けのフォーはタピオカによってコシを強めてるものもあるくらい(この話についてはエキサイトで書いた取材記事をお読みください…ってしつこ!)。なので、ベトナムに来てフォーを食べた人がガッカリするケースもあるにはあります。まぁ、それはコシ以前に、本場ハノイで食べなかったからとも言えると俺は思うけど。
が、カオラウだけは例外で、か~なり!コシがあるんですよ。それに加えて、さきほど書いたように正方形に近い形状になっていて、また表面もざらついていて”食いで”がすごい。それをほおばると米本来の味がフワ~ッ!と口の中いっぱいに広がって、麺を食べながらも新米を食べている感覚。これは人に話したことがないから、同意してくれる人がいるかわからないけどね。
んで、使っているソースもまたおいしくてね。甘い味付けのたまり醤油という感じで、これがカオラウのざらついた表面によく絡む絡む。米本来の味がよく分かる麺に、食いでにある太さにコシにざらつきに、それにシッカリと絡んだたまり醤油…で!写真にもあった揚げ餅でパリッ!コシャッ!と食感も楽しい。うん、なんか書いていて思ったけど、やっぱりミークアンよりもカオラウが好きだわ。俺。
で、ここで冒頭で書いたお約束の嘘(あながち嘘でもなかったけど)につながってくるんだけど、伊勢エビの伊勢の話ね。カオラウはさきほど書いたように、ベトナムの麺料理としては異色なんですよ。コシがあるし、太いし、スープ麺ではなく底にスープが溜まっているし。突然変異みたいな。その点ではミークアンもまぁまぁ特殊な気はするけど。
で、前回の記事で四世紀前の日本人の墓が残っていると書いたように、当時のホイアンは国際貿易港で、商人をはじめとして日本人が1,000人くらいいたんですね。そんな日本人町の長が、伊勢出身の商人である、角屋七郎兵衛。江戸幕府による鎖国令を受けても、そのままホイアンに留まった。ちなみに同じように残った人は200人いたと言われます。時代背景を考えると男性が多かったと思うので、今のホイアン周辺の人たちには、少なからず日本人の血を引いてる人もいるでしょうね。
そうした背景もあって、カオラウとは、そんな角屋七郎兵衛が故郷を思い出してホイアンで生み出した麺料理だ。と言われているワケです。ただしふたつの料理には違いもあり(カオラウの方がコシが強いとか)、それならなんで伊勢うどんをつくらなかったの?という話でもあるので、仮説の範囲は出ませんが、世界ふしぎ発見で取り上げられる程度には知られている。というお話でした。
今回紹介したお店以外でも、ホイアンではカオラウをよく見かけるのでトライ!してください~。
Quán Cao Lầu Thanh
住所:26 Thái Phiên, Phường Minh An, Hội An, Quảng Nam